イタリア車の世界へ

(2007/12/08)

 

 

ルパンも乗っていた!!フィアット・チンクエチェント

 

チンクエチェント博物館へ

 

12月2週目のある日、自動二輪車デビューを飾って間もないCOUGAR氏と話す機会に恵まれた。そこで、氏から「岬にあるフィアット・チンクエチェント博物館を知っているか」との問いを受けた。フィアット・チンクエチェントとは、アニメ映画ルパン三世に登場するあの小さくも印象深い4輪車である。「そんなものがこの近くにあるのか」と驚いた。この辺りのみならず、日本でもほとんど見かけない車だ。丁度氏と管理人の休みの予定が一致し、興味が沸いたため、ご一緒させていただくこととした。

 

いざ出発

 

COUGAR氏と管理人は、ほぼ近所といっても差し支えないくらいの所に居を構えている。よって、集合場所は近くのコンビニとし、冬ということで、集合時間は午前10時と遅めにした。管理人が集合場所に到着して間もなく、パスパスと単気筒エンジンの音が聞こえたので振り返ると、COUGAR氏もSRX4で登場。なんだか納車時よりもかなり綺麗に光っているではないか。どうやら氏が自分で磨き上げたようだ。氏の2輪に対する愛情を垣間見ることができると同時に、バイク屋がきちんと磨いていなかったという事実に直面する。いくら口でうまいこと言っても、こういう事に出くわすと、そのバイク屋の仕事が解ってしまうような気がするのは、管理人だけであろうか。それにしても、毎度ながら氏の選択は渋い。流行に流されず、自分の2輪車に対する思いを車種選択に反映していると感じるし、SRX自体も初心者が初めて乗るにも良いものを選んだと言っても問題ないと思われる。軽量な車体にトルクフルなエンジン、しっかりとした足回り、ベテランのライダーもあえて乗る価値があると思われる。最近の同車種の価格高騰は、根強い人気が背景にある由、理解に難くない。

 

 出発前のCOUGAR氏と愛車SRX4

 

早速ルートの確認をして、今回も不肖管理人が先導させてもらう。季節柄、山ではなく海沿いの道を走るわけだが、大きい道路を直線的に走ったのでは面白くない。また、方向的には管理人の実家と一致するため、知識を総動員し、少々ひねったルートを選択した。主には田畑の中を通る軽い屈曲路である。ここは管理人がNS50時代から練習コースとして、幾度も走行した道だ。あれから15年以上経過したわけだが、風景や道そのものは変化していない。きっと土地利用計画の都合上、畑や田んぼとしてしか利用できないためであろう。なんとか街らしくない道を選んで、海沿いまでバイクを進めた。

海沿いの道は風景も流れも良い。やれやれというところだ。冬は山に行けないので、こういうツーリングが毎年恒例となっている。風はやや強いが、段々気温も上昇してきた。15℃近くはありそうだ。TDMもSRXも低音の、歯切れの良い排気音を響かせつつ走行を続ける。ところで、海は夏ではないのか、と突っ込みが入りそうだが、やはり海は冬だ。管理人は人ごみが苦手で、なるべく混まないところを選んでツーリングをすることとしている。夏の海は混みそうでどうも近寄り難いのだ。

 

第一の目的地

 

出発してから2時間程経過したので、昼飯にする。今回は、魚太郎という市場と食堂が合体した施設を選んだ。もっと大きな、名も知れた同様の施設は数件あるが、ここは比較的新しく、混んでいない。しかし、活気はある。穴場的な存在と言えよう。バイクを止めて、先に市場を一回り

する。体長50cmくらいのヒラメ、1m近いまだか、ぶり、殻つきのカキ、さらにはミル貝と種類豊富な魚介類が格安で売られている。いやはや、持ち帰って食べたいが、バイクなので今回は現地で食すこととなる。海はやはり冬に限ると改めて思う管理人であった。

食堂に入り、メニューを見る。タコ飯と刺身定食、はたまたいくら丼で悩むが、今回は刺身を選択。実物を見て、これで800円なら大満足だ。値段は大体3割は安いと思われる。しかし、その新鮮さと味、量から言えば、半額近い価値があるものと感じた。COUGAR氏も旨そうに食している。ツーリングの醍醐味と言えよう。

 

 イカ、甘エビ、まだか、ぶりと4種類の刺身が楽しめる

 

さて、食事をしながら、氏のバイクライフについて語らった。購入して2ヵ月近くになり、順調にオドメーターを回しているそうだ。200kmぐらいのツーリングに出かけたり、仕事帰りのショートツーリングを楽しんでいるらしい。通勤も専らバイクだそうだ。ここからも氏のバイク好きが見てとれる。今後も積算計が良いペースで回ることは確実であろう。管理人はというと、今年はTDM8000km、KDX2000kmで1万km走行となりそうな見込みだ。これは大体平年通りである。まあ、九州ツーリングでテントも広げているし、来週は川湯温泉の千人風呂へ泊りで出かけ、ラストスパートをかける予定だ。毎度ながら無事に5桁に乗せることができて嬉しい限りだ。これからもずーっとこのペースでいけるように様々な努力を惜しまずに、謙虚にバイクライフを楽しみたいとここに宣言しておく。

 

いよいよ本日のメインエベント

 

食事が済み、さらに数km離れたチンクエチェント博物館へ移動する。同博物館は、岬にあるリゾートマンションの敷地内にある。このリゾートマンションはバブル時代の遺産と、一目見て理解できてしまう。まさにバブルの塔と言えよう。そして、その塔の周りには幾つもの建物が並び、食事処も数件ある。部屋は半分位は売れ残っているらしいが、名古屋からはそれほど遠くはないので、ぼちぼちと運営されているようだ。

果たして、ある建物の一階部分のテナントスペースに博物館はあった。その前にはフィアットの現行モデルの乗用車が止まっている。どうやらオーナーの車らしく、本当にフィアット車が好きなようだ。某「エヌピー」(仮名)というバイク屋の社長は「これからはイタリアンだ」と豪語しておきながら、乗っている車はメルセデスだし、いつの間にやら「トライアンフ」に取り扱いメーカーを変えている。ここではそんなことはないようだ。早速入館してみると、ステッカー類、模型類、ピンバッジなどが所狭しと並んでいる。オーナーは我々を見ると「こんにちは」と快く迎えてくれた。え、博物館じゃあないのか、と思ったが、それはカーテンの向うの部屋のようだ。そちらは入館料1000円となっている。少々高いが、本格的なエスプレッソ等の飲み物が付くし、何より、普段ほとんど目にすることのない車たちが間近に見られるので、入館した。

 

 博物館全景。手前は元祖チンクエチェント。隣はチンクエチェント・ヌォーバ(NEWの意味)

 

納得。チンクエチェントの派生車種がほぼ全車展示してある。メーカー生産車のみならず、ショップのオリジナル車まで展示してあるではないか。暫くすると、オーナーがチンクエチェントの歴史や派生車種などを細かく解説してくれた。この中で驚いたことは、展示車全てがフルオリジナルコンディションで、しかもフルレストアされていることだ。しかも、生産ラインからロールアウトした、その状態に拘ったというではないか。つまり、純正部品のみで復元しているのだ。中には、ボロボロ、サビサビの廃棄車両を、再生産部品ではなく、当時の部品のデッドストックを探し回って再現した車もあった。なぜそこまで拘るのか。オーナー曰く、チンクエチェントは生産終了から既に30年以上が過ぎて、段々と現役車の台数が減ってきており、誰かがこの車を保存していく必要がある、そういう価値のある車だそうだ。もっとも、フィアット社がそれをしているわけでもないので、チンクエチェントの団体を設立し、保存活動が世界的に展開されているらしい。その日本支部がここにあるそうだ。そしてその活動そのものが「博物館」という概念で活動していると聞いた。普通博物館というと、何か珍しい物を展示したりする建物を指すが、活動が博物館とは驚いた。展示はその一つの部門というわけだ。つまり、ホンダコレクションホールとファン感謝デーを、外部の団体が有志で運営していると考えられるわけだ。

 

博物館の入場券。お洒落なデザインですね

 

さらにこの車の価値とは、オーナーが話しを続ける。この車は自動車の運転の全てを学ぶことができるそうだ。エンジンのかけ方、

シフトチェンジ、コーナリング、停車、そういう一連の操作ひとつひとつを確かに感じることができる、それがフィアット・チンクエチェントなのだ。ほう、最近の車は至極お気楽で、運転を楽しむ要素は段々と減ってきている。その中で、そういう車が貴重なものであることは、言うまでもなかろう。これには目からウロコであった。車趣味の中にもこういう世界があるんだ。まだまだ管理人も勉強不足である。因みに、チンクエチェントとは英語でいうfive hundredのことで、日本語でいうとフィアット・ゴヒャクということになる。この数字はエンジンの排気量に由来することは想像に難くない。さらに、我々の知るチンクエチェントは正確にはヌォーバ(ニュー)というモデルで、戦前にその元祖となるモデルが存在していたんだって。知らなかった。

 

         

                             ヌォーバの後ろから               熱心に見入るCOUGAR氏。       チンクエチェントレーシングモデル

                                                    後ろはワゴンモデルジャルディ二エーラ  

 

エスプレッソを飲みつつ、COUGAR氏と語らう。いやいや、最近トキメク車はあるかという議題だが、なかなかありませんなぁ。二人が一致した見解を持ったのは、「走る、曲がる、止まる」の三大要素を楽しめる車が好みだ、ということだ。これには軽量化が欠かせない。車重の軽量化は前出の三大要素全てに効いてくる。現状の日本では、衝突基準や排ガス規制などでどんどん車の面白さが奪われているようだ。また、消費者の嗜好から、三大要素には関係の無い装備がたくさんと載せられている。おまけに利さやも乗せられていることだろう。もっとも、安全基準や、環境性能はすごく大切なことなので、ないがしろにすることはできないとしても、日本の技術力をもって、是非とも楽しい車を生み出して欲しいと感じている。そう、1トン以下の車重で、200馬力、1500cc位の排気量で十分と思う。余計な装備はいらない。オーディオとエアコンがあればよいではないか。当然マニュアルトランスミッションである。懸架装置はもちろん、ダブルウイッシュボーンタイプだ。駆動方式は拘らない。こんな3ドアハッチバック、若しくは2ドアクーペ車で山のワインディングを意のままに流す。考えるだけでもワクワクするではないか。

 

帰路とまとめ

 

こうして、博物館を後にし、帰路に就く。帰りは少し海沿いを走り、工場群のある直線道路、街を抜けていく。年末故に取り締まりには十分気をつける必要がある。特に直線道路は、年末のみならず、いつでも白バイが登場する。しかし、要点を抑えていれば問題は無い。速度制限の変わる点、走りやすい道路、要注意だ。管理人の場合は、少し速い車についていく「コバンザメ」走法を用いている。あと、インターチェンジのある道路では、高架橋の上で白バイが目を光らせている。そしてランプをすごい勢いで降りてきて、500メートル程離れた地点で御用とする。インターチェンジではこちらも目を光らせている必要があるのだ。

今日もCOUGAR氏に感謝である。前述の博物館はとても有意義で、知的な時間を過ごせた為だ。管理人はどちらかと言わなくても機械狂なの

で、動きの原理を追求することに意義を感じている。そのような中で、氏の美的センス、車を文化的側面から観察するという営みはとても新鮮

だ。これからもよろしくとお願いをしつつ、リポートを終わりにしようと思う。

 

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