フェリーすずらんのロビーにて
午前8時30分に起床するが、それ以前にも何回か目が覚めた。その度にぼんやりした頭で、いくつか忘れ物があるなぁと考えていた。米とかまぼこ板が主だったものである。前者はセイコマで購入するとして、後者はちょっとむずかしい。まあ最近は観光地の駐輪場にはたいてい板がおいてあるので、なくともなんとかなるでしょう。すると船内放送で機長ならぬ船長の挨拶があり、新潟沖を25ノット(47km/h)で航行中とのことである。あれ、最高30ノット(57km/h)以上で走ることができるの高速船と聞いているが、出力を抑えて燃料を節約しているのかな。余談であるが、2006年に乗船した、同社の舞鶴-小樽航路に就航しているハマナスなどは、本船よりもさらに建造年式が新しく、電力とディーゼルエンジンによるハイブリッド推進装置を備えているそうだ。
ところで、飛行機が洋上飛行をする場合は最低でも2基のエンジンを搭載しており、片発になっても代替飛行場に着陸できる能力を有しているが、船の場合も同様に2基のエンジンを搭載して緊急事態に備えている。そしてそのエンジン1基の出力は23,820kw=32300psである。だいたい長さが200mもある船体が自動車くらいの速度を保って巡航できるとは、頭の良い人がいるんだなぁと毎度ながら関心してしまう。またそれを操縦している船長もきっと相当の訓練を積んできているはずだ。
そんなことを考えながら風呂に行き、船体から巻き上げられる波しぶきを眺めながら湯船でゆったりとする。何も焦ることはない。そう思うだけで肩の力が抜けていく。髪の毛は抜けないでほしい。天気はどんよりと曇っているが、昼からは梅雨前線を越えていくことになるので晴れてくると思われた。そう思うとフツフツと喜びが湧き出てくる。
フェリー後方のデッキから青空を望む
のぼせる前に風呂から上がり、脱衣所にてちょっと涼んでいく。やや胃が重いが、何か落ち着かないので朝飯を食べるとしよう。管理人は1000円支払ってフェリー内のレストランで食事することとしている。飯は体力の源であり、酒も飲まないのでこのくらいの贅沢は大して問題にならならいからだ。さっぱりしてレストランに向かい、皿に料理を取り分けていく。お気に入りのアスパラベーコン炒めもあるので嬉しい。ついでにスクランブルエッグやソーセージなんかも。サラダと果物も忘れてはならないよ。しかし、よくよく見てみると、昨年よりも料理の種類が少ないように思うのは気のせいだろうか。ともかく、まずは和食を一式食べて、2回目は洋食を、やっぱり料理が少なくなってる。牛乳とオレンジジュースもないぞ。
ここでまたまた余談。日本語で言うとジュースは果汁系の飲み物一般であるが、英語のjuiceは日本語で言うところの100%ものを指す。それ以外はsoft drinkということになるのであるが、今回はソフトドリンクしか用意されていない。やはり燃料費、機材維持費、人件費などが高くなっているので、こういう細かいところで経費を削減しているのであろう。でもサービス低下は残念だ。
腹が一杯になればいつもは寝るだけであるが、今回は昼頃に再び起きる。というのも、出発直前の機材変更により全てのフライトプランを破棄してしまっているからだ。ついでにテレビで天気予報もチェック。その後空いているラウンジのテーブルにてマップルや0円マップを並べて道程を検討する。因みに0円マップは昨年のものを、マップルも2006年版とやや古いものを再使用している。今のところそれほどの問題がないのだが、数年のうちには買い替える必要もあろう。そうこうしていると、風呂で考えていた通り、天候も回復してきて窓の外には涼しげな青空がみえているぞ。だんだんと気分が高揚してきていることは言うまでもない。
さて、今年の飛行計画は走行距離を抑え気味にしてゆっくりと周るものとしたい。昨年は欲張ってしまい、結構疲れてしまったからな。また今年は15年前に訪れたきりである、北海道の最東端である納沙布(ノサップ)岬へも行きたい。因みに最北端の隣は野寒布(ノシャップ)岬である。管理人の場合は、北にある方が寒いので野寒布と覚えている。同様に四国の最西端は佐田(サダ)岬で、九州最南端が佐多(サタ)岬である。紛らわしい。
そう考えて、ああでもない、こうでもないと計画を考えていると、昨日のセロー氏が計画立案は進んでますかと尋ねてこられた。氏は既に計画を固めており、速攻で道東に渡り、テントを張り拠点をつくるそうだ。そして天気の悪い日曜あたりは釧路湿原を列車で周ろうかと話されていた。また、知床五湖がお気に入りのスポットで、今回も訪れたいということだ。やはりなかなか渋いところをついていくなぁ。それに比べて当方のプランは最東端とか、さんま丼とか、美幌峠とか何か俗っぽいと感ずる。まあ根がミーハーのなので仕方ないか。
おおよその計画は立案したものの、こんな机上の飛行計画はあっけなく崩れるものだ。どうしても欲張っていろいろと詰め込み過ぎる傾向にあるし、天気や実際の道路状況により大きく所要時間が変わることが多々あるからだ。まあ、訪れたことが無い場所や、気に入ってもう一回行きたい場所だけ押さえることができるならそれでヨシノチャンであろう。逃した場所は次回以降の宿題でよいではないか。いずれにしても、今年は少しスローな旅をしてみたい。
夕日が海に沈む頃にはすっかりと晴れ渡り、秋のような澄み切った青空が広がっていた。このまま晴れが続いてくれるとありがたいが、友人の梅さんがお気に入りのナカライさんの天気予報では、無常にも土日と雨を予報している。話は違うが、アラシマさんという気象情報担当の方もみえるが、どうも天気予報向けの名前とは思えない。
ところで、その天気予報の前にヌプントムラウシ温泉で有名なトムラウシ山で遭難事故があり、ハイキングに来ていた方々が一度に10人も亡くなったと伝えていた。我々ライダーにおいても北海道に渡る際は、地元での晩秋から初冬相当の服装を準備していくわけだから、道央の山々に登るとなると、夏と言えども真冬の装備は必要であろうと容易に想像できる。ニュース内でも山岳家と思しき人がそのようなことを指摘していた。
時刻は20時20分となり、車両甲板への入場許可が放送された。いよいよフェリーが苫小牧東港に接岸し、上陸である。乗船の際にマシンから降ろしていた荷物を搭載しなおして、下船許可が出るのを待ってエンジンをかける。そうして出口に向かうと、フェリー会社の係員は一台ずつタラップを降りる許可を出している。そしていよいよ管理人の番だ。ひんやりとした空気がバイザーの隙間から入ってきて、北の大地に到着したことを感じさせる。果たして一年振りに降り立った苫小牧東港は・・・、相変わらず何も無い。大体名前が苫小牧だけども、市街地から10km程離れているからだ。
そんなわけで、昨年の経験を活かして港の道を左折し、道なりに走行すると国道235号線に出てくる。この線は市街地の沼の端からバイパスが並行して通っており、現在はとみかわまで開通している。位置付けとしては暫定無料供用中ということなので国道のバイパスということになろうか。そして、、全線開通すると有料化されるのであろう。余談であるが北海道にはこのような道路がいくつもあり、大変便利になってきている。しかし、速けりゃいいってもんでもなく、ゆっくりと景色を眺めて走行することもまたオツなもんである、と思うのは私だけではあるまい。そういうわけで、バイパスをバイパスして通常の国道を東へ向かう。
ところで、今日はもう夜なのであまり長距離は走行はしたくない。というのも、北海道には鹿などが数多く生息しており、道路に飛び出してきては事故になるという場合がしばしばあるらしいからだ。事実管理人も過去に、カーブを曲がったら鹿が、という場面にでくわしている。その時はあまり飛ばしていなかったし、注意を促す看板も数多く出ていたのでどうってこともなかったが、運悪く衝突すると4輪でも廃車になるほどらしい。
そこで今夜は手近な場所で宿泊することにしていた。先に登場したセロー氏は道の駅でも十分テントを張ることができるということで、近隣の場所でキャンプされるそうだ。それも悪くないのだが、明日の天気と管理人のキャンプ技量を考慮して、とみかわのライダーハウス西陣に泊まるということで決定した。そのために、前もって電話を入れておいたのであるが、場所は先の国道(バイパスでない方)を左折して5軒目の建物だと解りやすい説明をしていただいていた。
真っ暗な国道を100方向に機首を向けて、鹿の飛び出しに注意しながら法定速度プラスアルファで巡航していく。だいたい鹿は目が合うとそこに固まって動かなくなってしまうので困る。鹿としては通り道にこんな道路をつくってもらっては困るということなんだろうが。そう思っているととみかわの街の中心へ到着。ええっと5軒目と、ありました。西陣てお寿司屋なのね。すごい看板で目立つからすごく解りやすいね。
ライダーハウス西陣
店舗隣の駐車場にバイクを停めて、店内に入ると割烹着姿の板さんが2名仕事中であった。その下っ端と思われる方が管理人のいでたちからライダーと判断したようだ。「ライダーハウス宿泊の電話をした者だが」ときりだすと、「ああ、はいはい」という様子で宿帳を差し出してきた。その後、駐車場は裏側で、ここの階段を上がった部屋ですと説明してもらう。この階段ってえらい急角度につけてあるなぁ。荷物を上げる際に苦労しそうだ。
エッチラオッチラと2回ほどマシンと部屋を往復して、荷物を運び込む。その部屋は8畳ほどの広さで、本日は地元愛知の方と二人であった。隣の部屋もライダーハウスになっており、こちらは4人ほど入っているようだ。
この同宿の方はハレーに乗られており、管理人よりも10歳は年上と思われる気さくな人であった。また北海道ツーリングは初めてということで、アドバイスを求められたが、こちらもたかだか4回目だ。知っていること、経験したことを羅列するくらいしかできないので、あまりお役に立つことはできなかった。まあ、ツーリングは自分の足で稼いだものが一番の情報であるという種の性格を持っているので、仕方がないと言えば仕方がない(と言い訳しておこう)。
そんなわけで、明日からの走行に備えて早めに就寝した。
本日の走行 25㎞