北海道紀行4

(7月16日〜7月25日)

 

旭山動物園の正門にて

(最近顔が父親に似てきたなあ)

 

第4日目

 

1.停滞決定

 

昨日の天気予報でわかっていたことではあるが、今日は北海道の南を低気圧が進むので一日雨らしい。そうなると移動するか停滞するか迷うところであるが、昨日の頭痛もあったし、また雨ならば景色や走りは楽しむことができないので思い切って停滞することとした。そう考えているとどこからか、「旭山動物園にいかないか」という話が出てきた。それも悪くないな、こんな機会でもないと動物園に行くことも無いだろうし、話のタネにはなるかな。幸いにも動物園の入場料は800円と手ごろであるし、交通機関も目の前に鉄道が通っている。一日遊んできても5000円で十分お釣りがくるのであるから悪くも無い。そう思うとたまには雨も悪くないかと思えてくるから不思議だ。

 

2.いざ旭山へ

 

今日は帰還日でフェリーに乗らないといけないという方々がみえて、件の女性2名を含む数名がライダーハウスを後にした。もちろん昨日薬をもらった方には、十分にお礼を述べたことは言うまでも無いよ。それにしても管理人は女運が良いのか、悪いのか。

 

そんなこんなで、我々動物園組は、一旦荷物をバイクに搭載してから出発する。というのも、このライダーハウスでは、連泊する場合でも一度荷物を出さなければならない規則になっている。これは「ヌシ」の発生を防ぐ為の処置と思われる。面倒くさいが、規則なので仕方が無い。しかし、後々考えてみると、あの管理人のおじさんならば、交渉すれば荷物を出す必要もなかったかもしれないと思われた。

 

さて、比布の駅は無人駅なのであるが、駅舎内には喫茶店がある。また、切符販売の窓口もある。つまりはこの喫茶店が切符販売を委託されているというわけだ。一日の乗降客数も知れているのだから、これでよいのであろう。切符を購入して、列車を待つ。ところで、管理人を含む動物園行きの集団には、現在日本一周中のライダーがいた。奈良県出身でおよそ3ヶ月の予定で走行中に、ここ比布で出会ったわけだ。歳は20過ぎくらいと思われるが、会話していても内容のあることを話されている。管理人の方がアホなことばかり言っていると思えてくるくらいだ。少なくとも団塊威張りオヤジよりはよほど楽しい方だ。もっとも、この時点では管理人はオヤジのことなど眼中にはなく、この状況を楽しもうと完全に無視していた。

 

 

ピップ駅にて、日本一週君

 

列車に乗って、威張っていないおじさんとも会話した。この方は定年退職されて、特に予定も無く北海道を旅しているそうだ。また、学生時代にもツーリングされたことがあるそうで、相当なバイク好きのようだ。ところが、そいういうことをひけらかすわけでもなく、周囲には常に穏やかな雰囲気を出されていた。九州出身の元エンジニアで、管理人の父親が勤務していた製鉄所にも度々仕事で訪れていたということだ。そのような忙しい日々から開放されたので、再びバイクに火を入れてゆっくり旅を楽しんでいる、なんとも羨ましいというか、頑張ったおじさんであった。

 

この方はなかなか鋭い目を持たれていて、バイクを見るとそのオーナーの人柄を垣間見ることができるという旨の事をおっしゃっていた。確かにそうだ。派手な色で塗りなおしている人は大抵見栄っ張りだろうし、がっちりとしたキャリアを取り付けている人は質実剛健、実用性を重視しているように思われる。そしてしみじみと「皆バイクがすきなんだよね」と発言された。そうだ、わざわざ自分のバイクをフェリーに積むなり、自走してくるなりして北海道に持ち込んでいるわけだからね。うんうん、なんか納得。

 

旭川駅に到着すると、改札口では早速動物達のハリボテが出迎えてくれる。実は私管理人、ペンギン等の鳥が大好きなのだ。特にキングペンギンが好みで、そのヒナは最高傑作と思っている。果たして今日は遭うことができるかな?

 

ここからはさらにバスに乗って動物園を目指す。雨降りではあるが、今日は日曜日なのでバスも混んでいる。結局座る席がないので握り棒につかまるが、この運転手はアクセルやブレーキの操作が乱雑だ。そう感じているのは俺だけだろうかと思っていたら、目の前の女性なんか酔って頭を棒にもたげている。いやいや、戻すのだけはご勘弁を。一方外を見ると激しく雨が降っており、山なんかも全く見えない。バスの中では日本一周君の話しの続きを聞いていた。雑誌かなんかに旅行記を投稿するのですかと尋ねたら、既に大間岬で雑誌の取材を受けたそうだ。どこぞに掲載されると思いますよとのこと。

 

3.久々の(初めての)動物園

 

30分くらいのバス乗車も終了に近くなってきた。いよいよ動物園の入り口であるが、よくよく見てみるとバイク用の駐輪スペースが10台分ほど用意されている。さらにそこには3、4台のマシンが駐車してあった。雨の中動物園に来たようだ。それにしても動物園に来るのは何年ぶりだろうか。だいたいものごごろついてから、動物園に来た覚えが無い。おそらく東山動物園で乳母車に乗った写真が残っている時、つまりは30年以上前以来であろう。ほぼ初めてといっても嘘にはなるまい。

 

ちょっとドキドキして入園料を払い、門をくぐる。意外とこじんまりしているなぁという印象を受ける。また偏見であろうが、動物園はそれなりのにおいがするものだとばかり思っていたが、そんなことはほとんどなかった。周囲には人も住んでいるので、公害にならないように施設側でも努力をしているのであろう。

 

最初に鳥が放し飼いにされている大きな鳥かご、「ととりの森」へ入る。話は逸れるが、飛行機のコックピットは鳥かごの意味があるそうだ。また、各機の識別記号をスコークというが、これは鳥の鳴き声のことらしい。20数年前に起きた日本航空の大事故で「スコーク77」という最高度の救難信号発信が取り上げられていた。航空業界では、この他にもいろいろと鳥に関する用語が用いられていると思うが、すぐには出てこない。

 

鳥舎にはおきまりのフラミンゴやペリカンがいる。雨が強いせいか元気が無い。そう思いながら歩いていくとコブハクチョウの親子がいるではないか。親子といってもヒナは灰色をしており、顔も違う。ヒナが親の背中に乗っかることもあると聞いていたのでそうならないかと期待していたが、そんな簡単にはいかない。結局鳥かごを一周してからペンギン館へ向かう。

 

ペンギン館は管理人が密かに楽しみにしているところだ。100mほどの列ができているが、どんどんと流れているので問題なさそうだ。5分程で入館できたが、中は薄暗くなっている。なんだ?と思って進んでいくとアーチ状になったアクリル板の上をペンギンが泳いでいるではないか。そうか、ここは池の底に透明な板を張って下からペンギンを観察できるようになっているんだ。そのために館内が暗くなっているのかぁ。考えたなぁ。

 

ペンギンの姿を下から観察

 

さらにすすんでいくと、今度はペンギンの集団が住むところへやってくる。ここも透明で大きなアクリル板が張ってあり、直ぐ近くにペンギンをみることができる。キングペンギンがいるのだが、えらいでかいなぁ。写真で見るとそれほどでもないが、近くだと迫力あるよ。また、ヒナはいないかと探したが、現在はいないらしい。残念。

 

つくりものみたいですが、本物です

 

階下から地上に上がると雨の中をペンギンが歩いたり、泳いだりしているオープンスペースがある。なるほど、これを下から見ていたというわけか。面白いね。さて、次はあざらしを。あざらしというと白いゴマフアザラシくらいしか知らないが、アザラシ館の外に板でつくられた原寸大アザラシの展示によれば、世界中にはざっと50種類くらいは生息しているようだ。しかも大きさや模様、色も様々である。館内に入ると当然アザラシがいるのであるが、もともとそんな動き回るような動物ではないので派手さは無い。しかしヒゲを生やし、尖った口を持つあの独特の表情がなんとも愛嬌がある。

 

アザラシ館にて

 

次は熊田曜子ではなく白熊を見にいこう。ここも水槽の下から見上げるように動向を観察できる。見せ場はもちろん熊の飛び込みであるが、熊もそのあたりを心得ているのだろうか、飛び込むフリはするが絶対に飛び込まない。そう思っていると右手の扉が開いてそこに入っていってしまった。あれあれ?と思っていると、解説員が「今のは雄の熊で、まもなく雌の熊がでてきます」と話していた。すると雌の熊が出てきたが雨が降っているせいか、部屋に戻りたがっている。これではダイブはなさそうだ。仕方ないので水槽を離れて裏手に回る。こちらには透明半球状の覗き口から顔を出して熊を観察できるようになっている。かなりの人が並んでいるのでこちらもパス。諦めて次行ってみよう!

 

威厳がありますな

 

4.小休止から動物園その2

 

この後は一旦休息する。ここまでアフリカ氏、日本一周氏、そして当方で周ってきたが、皆一同に「人ごみにつかれた」と感じていた。もともとオートバイを移動手段として、単独で旅行するなんて人に混雑が苦にならないという人はいないはずだから、当たり前と言えば当たり前だ。皆それがわかっているだけに後の言葉が続かない。ひとまずジュースを飲んで休息し、再び動物を見に出る。

 

猛獣館にはトラがいたのだが、トラはマーキングをするので排尿時には注意が必要と看板が立っている。しかし、そのそぶりはないので、しばらく見物する。肉食獣だけあって目つきは鋭いし、牙も長い。あんなもんで噛みつかれたら即死だろう。あなおそろし。そのままフラフラとあるいていくと、タンチョウやらクジャクがいる。クジャクは時々見かけるが、タンチョウは日本に1000羽弱しか生息していないそうで、間近に見たのは初めてだ。かなりでかい鳥で、丁度家の近所にいるアオサギを3回りくらい大きくしたくらいだ。アオサギでも羽を広げると大きく見えるので、こいつはすごいことになるのだろうなぁ。

 

次は鹿と狼の檻であるが、なぜこの2種類の動物が隣あう檻にいるのだろうか。この疑問を解決する説明が動物達を見る前に掲示してあった。それによると、もともとは狼は鹿を襲って食料としていたので、生息数は安定していた。しかし、北海道にどんどんと移民が渡ってきてから狼を駆逐してしまった。それゆえに鹿の生息数が増えすぎて、今や人間からは邪魔者扱いされているというものであった。なるほど、鹿の視点からすれば一方的な人間の押し付けに見えるだろうなぁ。立場変われば見え方も違うというわけか。ところで、鹿は道端にたくさんいるが、狼を目の前でみることは初めてだ。犬をちょっと細長くして、歯を鋭く尖らせたという様相だ。それにしても全く動く気配はない。まあ、夜行性の動物であるし、この雨ではやる気も無くなるというものであろう。

 

次はオランウータン館へ入ってみた。こちらは高さが5mはあろうかという台があり、そこから横に縄が渡してある。どうやらオランウータンがそこを行き来する姿をみることができるということらしい。そしてその台には親子のオランウータンがおり、親が子供を訓練中であるようだ。親がやや急かし気味に子供をつついて、縄を渡らせようとしているのだ。しかし、子供は勇気が出ないようでなかなか踏み出すことができない。少し縄を渡ろうとしてはぶら下がるだけで、また戻ってきてしまう。それでも親は子供に行きなさいと言い聞かせているようだ。ところで、トムとジェリーの2話目のアニメで口笛を吹いているオオカミが登場し、教育現場を放棄した先生を見て、「教育に大事なことは根気だ」とつぶやく場面があるのだが、この状況はそれを意味しているのであろう。

 

さらに進んでいくと、カピパラがいるじゃん。さらに珍しいクモザルという聞いたことの無いサルがいた。テナガザルの一種だろうか。色が白と黒で、目が大きいサルであった。その向こうにはサイとキリンがいるぞ。サイといえば、森の消防士と呼ばれていると映画「ブッシュマン」で紹介されていたことを思い出す。アフリカで動物の糞を研究しているさえない男が、都市部から先生としてやってきた若い女性を送迎するという場面がある。ところがその車のドアやブレーキが壊れており、その女性が文句タレていて、挙句の果てには川を渡る場面で車がエンコしまう。そして研究者がその車を車載ウインチで引き上げていることを忘れてしまい、背の高い木に宙ぶらりんとなってしまう。結局2人は野宿するはめになり、その時にサイが現れて焚き火を消していくというところで、上記の紹介があったのだ。管理人の場合、サイといえばブッシュマンなのである。

 

            

                                             カピバラはネズミの仲間と聞いたことがあるが、本当か?                      サイの角は特徴的だ

 

キリンはすごい高血圧らしいよという日本一周氏の豆知識を聞きながら、レッサーパンダを見にいくことにした。こちらも大ががりな仕掛けがつくってあり、本来ならばそこをレッサーパンダが走り回ってみせてくれるはずであったが、この雨でふて寝しているではないか。ありゃぬいぐるみかと思われるくらいに動きが無い。残念である。

 

            

                                                       ちょっと馬に似てますな                                  全くやる気無し

 

5.ちょっと旭川市街へ

 

一通り見物したので、最後にもう一度ペンギンを見に行く。それにしてもキングペンギンはでかい。また微動だにしないで佇んでいる。その姿をほんの2mくらい離れた場所から見ることができるので、とても楽しい。ところで、ここには髪の毛が逆立っているイワトビペンギンもいるのだが、雨に濡れて頭がペタペタになってしまっている。フンボルトペンギンはそれなりに泳いだりしている。

 

イカスくちばしすまし顔

 

いい具合に時間が過ぎて、さらに疲れたので最後にプリンソフトクリームを舐めつつ旭山動物園を後にする。確かに話題になるだけのことはあるなぁ。透明なアクリル板を多用し、上からも下からも動物を見ることができる。また、その動物の生息状況に近いものをつくりだし、本来の動きを楽しむことができる、いわゆる行動展示という概念を用いている。今回は雨で動物のやる気がなかったので、あまり動きは見ることができなかったが、また来てもいいかなという気にさせるところがニクイ。

 

さて、腹が減ったので旭川ラーメンを食べようということで、元北海道在住であったアフリカ氏に梅光亭という店に案内してもらう。しかし、激混みであったので、青葉という店に変更した。青葉というとアニメ「The かぼちゃワイン」の主人公である。特に関係がないことは言うまでもない。ついでに申し上げると、エルというでかい女が登場するが、ちょっとああいう女はいただけないと思う。

 

この店はカウンターとテーブル合わせても15席程の小さな店であったが、今回はすんなりと入店することができた。もちろんここも超有名店らしく、ナチソネ(仮名)元総理大臣や、現総理の色紙まで飾ってある。ところで、肝心のラーメンであるが、極普通のしょうゆラーメンだ。ただ、冷めにくくするためであろう、スープ表面に油膜をひいてある。麺はやや固めの細麺で、スープは鶏がらであった。これに昆布などの出汁も入っているらしい。こちらの店のスープは味の素をあまり使っていないようなので、管理人としては好ましい味であった。また、他にもとんこつスープのものもあるようだ。

 

             

                                                    青葉の店内に飾られた色紙                                青葉のラーメン

                                                        (元首相?)                               (海苔への印刷は企業秘密とのこと)

 

6.比布へ

 

いつものツーリングとは全く異なる時間を過ごし、腹も満たして満足になった3人は列車で比布にもどる。この時エンジニアのおじさんと、上から目線オヤジと偶然同じ列車になった。そういえば、エンジニア氏はいつの間にかに動物園で別れていたが、上から目線野郎は動物園に来ていたのだろうか。どうやらその辺りで昼真っから飲んでいたと思われた。そうなると、我々が盛り上がっていた動物園の話にはついてこれず、何かバツが悪そうにしていた。

 

ライダーハウスに到着して本日の宿泊者を確認してみると、昨日よりもさらに増えているではないか。明日は早くに発ちたいし、オヤジ共に付き合いたくもないので軽い夕食を済ませてから、フライトプラン作成に精を出す。どうやら明日は天気も回復して、青空を拝むことができそうだ。そうなると景色が良い場所を選びたいので、三国峠、ナイタイ高原などをポイントにしてルートを組み立てていく。すると日本一周氏が、「随分と熱心ですね」と話しかけてきた。「これもまた楽しみの内さ」と答えておいた。

 

今日は寒いので、外で飲んでいたオヤジも早々に引き上げてきたようだ。しかしかなり酩酊しており、なにやらロレツが回っていない。すると禁煙なのにも関わらずタバコを吸おうとしているではないか。当然周りの人達が制止するのだが、自分勝手な解釈を披露しはじめた。ここまでくれば追放しても良いと思うのだが、周りの人たちは必死になってなだめている。だいたい大人のすることではないし、自分で自分の首を絞めるとはこのことだ。当方は関わりたくないので、シュラフにもぐって寝ることとした。誠に不愉快だ。

 

本日の走行 0km

 

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