2013年 夏の北海道ツーリング

 

8月16日〜8月25日

 

ミッキーハウス前にて、女将さんと管理人

 

8月19日(3日目)

 

1.出発

 

夜中に犬の遠吠えや、始発列車の音で目が覚める。そういえば、建物裏には根室本線が通っているな。疲れていたせいか、そこからまた2時間程度寝てしまい、7時30分頃起床した。昨日購入したカロリーメイトとお茶を朝食とするツーリングスタイルで、出発の準備を進める。その間、テレビで天気予報を確認してみると、釧路、根室方面は天気が回復するらしい。これは嬉しい情報である。今日は一気に最東端を目指し、天候を見てキャンプをするか、適当な場所に宿をとるとしよう。因みにその次の日は・・・、雨かぁ。ただ、天気予報もコロコロ変わっているので、アテにできない。自分で見て、感じて進むしかなかろう。

 

服を着て、昨日ずぶ濡れとなった靴の具合を確認する。幸いにも詰めておいた新聞紙が良い仕事をしており、完全とはいかないが、7割程度は乾いている。後は走りながら風に当たり、陽に当たり、乾かすとしよう。

 

表に出てみると、昨日までの雨は完全に上がり、道路は乾いている。また、雲は多いが時々陽も差してきているから、今日の天気予報はアテになりそうだ。そうと決まれば善は急げ、荷物を運び出しマシンに積載する。すると女将さんが出てこられた。退院したばかりなのに、大丈夫ですかと思ったが、足どりも会話もしっかりしておられるので、大丈夫そうだ。そして、懐かしむように、「昔は玄関前にはズラ〜っとバイクが並ぶぐらいに、ライダーが多かったのだよ」と四半世紀前の思い出を話してくださった。その後、雨が多いので草が伸びてきたなぁと、草をむしり始めた。いよいよ体調は大丈夫そうだと確信し、マシンチェックを終える。

 

こうして記念撮影をお願いし、セルフタイマーで撮影したものが冒頭の写真だ。昨年は足寄の大阪屋さんが閉店されたと聞いたが、この先はライハの閉鎖も増えることだろう。無理無く、なるべく長く営業して欲しいものだ。そう願いながら、お礼を申し上げて出発する。時刻は8時40分、ちょっとゆっくりし過ぎたな。

 

2.東へ支障無し

 

まずは国道38号線で引き続き090の針路を採る。天気も目に見えて回復してくるし、乾いたジーパン、ジャケット、靴下が気持ちが良い。陽が出てくれば靴も一発で乾くことだろう。昨日までの重たい空気が嘘のように、今日は清々しい。

 

尺別、音別と、白糠と、馴染みのある地名を確認しつつ、淡々と進んでいく。さて、きょうはまず、釧路空港のFFM(ファーフィールド・モニターアンテナ)を見に行こう。これはとてもマニアな施設だし、ただのアンテナなので別に面白くもなんともないのだが、1996年に起きた小型機の事故の真相を知った時から一度見てみようと思っていた。

 

庶路から国道を離脱して、並行して通る市道?を行く。この道沿いにはメガソーラーが建設中であり、3〜4kmに渡ってずらりとパネルが並んでいた。

 

さらに針路を350に変えて、たんちょう釧路空港の滑走路横を行く。すると突然、左手の丘からプロペラ機が離陸してきた。そう、空港は高台にあるのだ。おお、あれはDHC‐8だ。70人乗りの機体だが、離陸直後の5000馬力x2のフルパワーは迫力がある。プロペラ機ではあるが、エンジンはジェットエンジンだから「キーン」という金属音を発している。関係無いが、我々の世代なら「アラレちゃん」だろう。

 

空港の入口を通過して、今度は滑走路17(北側の進入コース)側へ向かう。件のアンテナはこちらにある。国道240号線の開けた所に出ると、誘導灯の陸橋が見えた。そしてその先に2本の柱とアンテナを発見。本当は3本あるのだけど、山の影になって1本は見えないようだ。

 

釧路空港R/W17進入路上の施設

(アンテナは陸橋よりも随分高い)

 

そもそも航空法では、滑走路の延長線上には、誘導灯よりも背の高いものは存在してはならないのだが、ここでは例外的に、誘導電波の精度を非常に高いレベルで維持する必要性から、上記FFMの支柱が3本も立っている。このことは上記の事故が起こるまでは、航空関係者に知らされることがなかったそうだ。こうして、霧の中をできるだけ低い高度で飛び、滑走路をできるだけ早段階で視認し、着陸しようと試みたパイロットが操縦する、小型機が衝突、炎上、墜落した。このパイロットは総飛行時間10,000時間という経歴で、某スポーツ用品店の社員を乗客として乗せていた。そして、偶然にも、管理人のジム友の父上がそのスポーツ用品店に勤めていて、亡くなった方々の同僚であったそうだ。もちろんジム友氏はこの事故を知っていて、お互いに驚いたことがある。

 

マニアなスポットを見終えたので、19年ぶりに釧路湿原を見に行く。この頃になるとすっかりと天気が回復して、やや蒸し暑い。天気が良いって素晴らしい。しみじみと感じながら、国道240号線を10km程東へ走り、釧路湿原道路へ乗り換える。この道も7回の渡道でおそらく初めて走る道だ。地図上ではその名の通り、湿原を貫く道だ。ただ、湿原といっても道路が通っている部分なので、周囲はただの草むらという感じだ。また、産業廃棄物処理場も点々と存在している。

 

釧路湿原道路にて

 

こうして、遠矢の街からは国道391号線に出て、すぐに線路沿いの細い道に乗り換える。今日は天気が良いので、細岡展望台までのダート路、8.5kmに挑戦してみようと思う。地図で確認した通り、2km程行くと踏切を渡ったところからダート路が始まっていた。これだこれだ、喜んで進入していく。おー、さすがはオフ車、このくらい締まった未舗装路ならば楽勝である。ただ、渡道後初めての本格的なダートなので、慎重に進もう。

 

だんだんと標高を上げていくと、周りは鬱蒼とした森になってくるが、きょうは天気が良いので陽が差しているので、陰鬱ではない。道も深砂利部分はほとんど無かったので、何事も無く細岡展望台に到着した。

 

ここには駐車場は無いので、邪魔にならない場所を選んでマシンを止めておく。すると、反対側からはフェザー1000に乗るライダーがやってきた。ああ、向こう側は舗装路なんだ、ちょっと残念だなぁと思っていると、彼は手を挙げて挨拶してくれた。こちらも手を挙げて応える。常に孤独なライダーは、この瞬間がとても嬉しいものだ。

 

マシンから少し歩いて展望台まで行くと・・・、久々に息を取られてしまうほどの絶景だった。目の前に見えているこの風景は何だ、本当にこの世のものなのだろうか。はるか向こうまで広がる草原、そこを流れる蛇行した川、その流れが変わったことを示す三日月状の水たまり?のような湖。点々と生える木々、固まってしまい、動くことも忘れてしまっていた。

 

釧路湿原 細岡展望台にて

 

どうして絶景に出会うと息を取られるのだろうか。思うに目の前の状況が、人生において得た知識や経験では理解できないということで、動揺しているからではないだろうか。恐怖に見舞われたりすると、このような現象が起きることがある。それと同じことなのかもしれない。

 

いや、それだけではない。30分程展望台から動くことができず、景色を夢中で眺めてつつ考えていたところ、「自分の存在の小ささ」という気持ちも影響を及ぼしているようだ。

 

ところで、当方は、今回を合わせ7回目の渡道歴があるのだが、しっかりと展望台から釧路湿原を眺めるのは2回目であり、19年ぶりでもある。その19年前はどこの展望台から見たのだろうか、これほどまでに気持ちが動いたのだろうか。この疑問に答えるべく、久々に当時の写真で調べてみたところ、「北斗展望台」、と書かれた銘板の前で撮影された写真が出てきた。しかし、マップル2013年版に掲載されていないし、当時のツーリングマップにさえも、この場所を見つけることができなかった。

 

是非、また違うポイントから見てみたいものだ。そう心に誓い、SL230号に戻り、エンジンを始動する。ここで管制センター、タイ寺コントロールにプランを入れておこう。今日はできるだけ東へ進み、最東端辺りを終点とする旨、通報しておく。

 

3.もう一丁お願いします

 

展望台からは舗装道路を下りつつ、再び国道391号線へ合流し、一旦針路を360と真北へ変更する。そして塘路から、塘路湖の北側を通る「塘路広域林道」を走ることにした。距離は19kmと長いので、慎重かつ楽しくいこう。よく相撲や柔道の稽古で「もう一丁お願いします」と言って胸を借りることがあるが、まさに北海道に「もう一丁お願いします」だ。

 

さて、林道の入口は少々わかりにくかったが、地図で道路の曲がり具合、湖の張り出し具合から判断してまず間違いないと、自信を持って飛び込んだ。しばらく未舗装路を走りつつ道の伸びる方角をコンパスで確認すると、その自信は確信に変わった。しかし、どんどんと山深くなってきて、何だかドキドキしてきた。というのも、マップルによるこの林道のコメント、「景色が多彩なブラインドコーナー多し」と全くその通りであったからだ。仮にコーナーを立ち上がった時、鹿と遭遇するなら問題無いが、クマがいたらどうしよう、そんな雰囲気になってきた。

 

ただ、こういう道にも走り方があるようだ。それが、当方と相互リンク下さっている「放浪のページ」で書かれている。彼の北海道ツーリングレポートを参考にして、「カーブでは手前でホーンを鳴らしながら」走行を続けていく。おっと、なんかでっかい糞が落ちているではないか。しかもあまり乾いていない。ということは、もしクマだった場合、それほど遠くない場所にいる、いやこちらを見ている可能性だってあるぞ。ひー、助けてくれぇ〜と叫びながら、ちょっと飛ばし気味にコーナーをクリアしていく。こんなところでコケたりしたらシャレにならないので、あくまでも安全第一で行こうではないか。

 

しばらく行くと、深砂利の部分が現れた。通過しながら観察してみると、2輪の轍が2台分残っている。しかも、トレッドパターンの形がしっかりと残っているので、割合と新しいものだと判断された、ということは、昨日か今日はここを走ったライダーがいるということで、それならばクマも多少警戒しているかもしれない。ちょっと気が楽になったが、やはりホーンを鳴らしながら走行を続ける。

 

少し林道走行に慣れてきたので、速度を上げていく。なんだか楽しくなってきたぞ、と調子こいていたら目の前にでっかい水たまりだ。「!」と思ったが、ブレーキをかけてコケるのも嫌なので、そのまま足を上げてスプラッシュ!!。あーあー、膝から下がびしょ濡れだ。やっぱり本格的なオフ走行をするならば、オフブーツを装着しなければならないな。今回はおとなしく走行しよう。

 

冷や汗をかきながら走行していくと、直線に出た。そして途中には小さな橋がかかっていたので、記録を取る意味合いで停車する。もちろんエンジンはかけたままである。地図で調べてみると、ここは終点から3kmぐらいの地点になるようで、「塘路橋」と銘板に書かれている。

 

塘路広域林道にて

 

 走行を再開して、さらに進んでいくと視界が開けた。どうやら牧場の端を道が回り込んでいるようで、地平線の向こうまで牧草地だ。

 

塘路広域林道、厚岸側出口付近にて

 

牧草地はマップルに掲載されている「早川牧場」の一部だと思われる。というころは、そろそろ林道も終わりか。そう思っていたら道は舗装路になり、やがて国道272号線、通称ミルクロードに出た。さてどうするか、一旦マシンを止めて、水分補給とプランの再提出を行う。いや、再提出というか、ほとんどプランなどなく、その日の気分次第で走行しているだけだ。

 

結局そのまま東へ進むことにし、道道1128号線で厚岸の街を目指す。周りは牧草地ととうもろこし畑が幾重にも続ている、いかにも北海道らしい風景だ。しかも、今日は快晴で綺麗な青空によく映えている。ただ、これをカメラには収めることはできないので、網膜によく焼き付けておこう。今でも目を閉じると、この風景と共に、あの時の風が吹いてくるようだ。

 

4.ちょっと休息

 

県道14号線に突き当たり、右折すると厚岸の市街地である。厚岸といえば氏家のカキ飯が有名だ。以前テレビで観たことがあるが、まだ食したことがない。腹も減ったし、時間的にも丁度よいので早速行ってみよう。漁師の街を抜けていくとその先に駅があり、ロータリーの端に小さな店舗を発見した。

 

氏家さんが入っているあっけし食堂

 

店の入口横にマシンを止めて、店内に入る。おっと、昼時なので満員だ。ただ幸いにも、もうすぐ食べ終わると思われる方々ばかりだったので、しばらく待つことにした。すると10分程で大半の客が出ていき、店は一気に静かになった。

 

待ってましたと席に着き、もちろんカキ飯を注文する。記憶が定かではないが、こちらはもともと駅弁を販売していて、こちらに店舗を出されたようだ。 当時テレビで見た映像では、朝早くから店主が弁当をつくり、始発から駅のホームで忙しくお客に呼ばれていた。結構な数が出ていたようだが、儲けはなかなか厳しいとも解説があった。しかし、楽しみにしている方も多く見えるので、頑張っているとも。なるほど、当方の趣味である、エアロビクス・インストラクター業も同様だ。何名かは必ずレッスンにご参加くださる方が見えるので、こちらも励みになるものだ。

 

さらに10分程待って、カキ飯が運ばれてきた。おお、たくさんの具材がのせられているではないか。カキ飯というからカキだけだと思っていたが、これは驚きだ。丼にのせてある、カキ、しいたけ、あさり、ホタテなどを次々と食べていく。やや濃い目に、甘辛く煮た味付けは特別なものではないが、素材を引き立てていて実にさりげない旨さを出していてる。加えて、ご飯もカキの出汁で炊いているようで、最後までカキを楽しむことができる、まさに「カキ飯」という名にふさわしいものだ。また、味噌汁も赤ちゃんのホタテがたくさん入っているので、ホタテの味も存分に楽しむことができる。

 

名前こそはカキ飯だが、貝の飯と呼ぶ方が正確かもしれない。独り納得しながら厨房を見てみると、中では3名の女性が忙しくしておられた。そしてこの地方の方言で、何やら言い合い?をしていた。いや、厨房なので声を大きくしないと聞こえないだけだろう。また、この間に、「お弁当2つ」を注文したお客がやってきた。ああ、持ち帰りで弁当もできるのかって、もともと駅弁じゃあないですか。

 

氏家のカキ飯

 

ちょっと器の丼が小さいような気がしたが、なかなかの量があり腹も充足して代金980円を支払う。さて、この先どうするかと考えながら店を出ると、マシンが傾いている。よく見ると、アスファルトにサイドスタンドがめり込んでいるではないか。「板切れ」を忘れただけに「板井」、いや痛い。どうでもよいが、「板井」については、八百長告発で有名な元力士である。

 

くだらないことを考えていないで、バイクにガソリンを入れよう。本日の累積走行距離は既に200km以上、トリップメーターは280kmを表示している。もうそんなに走ったかと驚いたが、昨日はミッキーハウスに行く前に給油後、ちょっと昆布刈石の未舗装路を走行したり、夕飯の調達で浦幌の街まで往復したり、結構な距離を走っていた。そして、今朝の出発時にはトリップメーターは70kmを示していた。まだ今のところ予備燃料に切り替わってはいないが、ここまでやや長目の林道走行もあったので、燃費は若干落ちているだろうことは容易に推測できる。切り替わりは時間の問題だ。さらに、まだ昼過ぎなので、もっと走りたいじゃあないか。気まぐれで入った林道でガス欠、なんてことはあってはいけない。考えただけでもゾッとするからなぁ。いろいろと考えつつ、少し街中をウロウロして、エネオスで給油する。13ポンド程度(7.4L)で満タンになり、燃費は38km/Lを記録した。やっぱりやるじゃん、SL230。ホンダのマシンはこういうところが好きだ。

 

5.今日の後半戦

 

これで、人間もバイクも動力源を確保できたので、さらに東を目指す。もちろん、国道を行くだけではつまらないので、途中で湿原の中を通る林道群を散策しようと計画する。そのため、まずはつまらない国道44号線を引き続きheading 090で走行していく。道はつまらないが、右手に見える湿原を通り抜けてくる風が涼やである。やっぱり自然って大切なんだよなぁ。

 

そんなことを思いながら走行を続けていき、糸魚沢駅南側から伸びる糸魚沢林道の入口を探す。マップルではここにはゲートマークは入っていないが、湿原そのものが金網で覆われていているし、厳かな雰囲気に加えて、かなり鬱蒼とした様子なので恐怖感すら覚えてしまった。何となく嫌な予感がするので、今回はこの計画は破棄しよう。

 

こうなるとさっさと国道を離脱し、「太平洋シーサイドライン」に乗り換えたい。接続路を探すと、茶内の駅南側から道道599号線が分かれている。さっそく右折して乗り換えてみる。この道は片側1車線、中央線は破線、交通量のほとんどない、超快走路だ。特に海に近い所では霧多布湿原を貫いており、とても空気が良い。マイナスイオン出まくりである。爽快に走っていると、途中に町界林道入口を見つけた。こちらには柵がないし、路面的にも悪くない。一瞬入ろうかと迷ったが、今回はやめておく。

 

そして散布地区でいよいよ道道142号線にぶつかる。これが太平洋側シーサイドラインだ。今日は快晴、来たぜ来たぜ!!と小躍りしてしまった。さらにここからも磁方位は090で走行していく。今回はこの先の琵琶瀬展望台に寄っていこう。爽やかな海風を感じていたら10分もしないうちに到着した。

 

ここも7回目の北海道ながら、一度も立ち寄っていない。こんな綺麗なところを見逃していたとは、まだまだ修行が足りませんな。

 

琵琶瀬展望台からの一葉

 

写真ではよくわからないが、湿原独特の緑に映えるとても澄んだ水、青い空、ここでも息をのんでしまった。さらに、湿原から吹いてくる風、水のよい香り?がするではないか。綺麗、美しいというのはこういうことだろうか。まったく言葉にならない。しばらく見とれてしまい、立ち止まってしまった。何と言うか、胸の辺りが苦しくなるようだ。

 

また、この展望台から太平洋側を見ると、「窓岩」がある。写真の通り穴があいた岩であるが、平成6年10月の地震で少々崩れてしまったようだ。因みにこの年の8月には、管理人が初めて渡道している。

 

窓岩

 

6.行けるところまで

 

この時点で14時30分過ぎである。霧多布岬が近いが走行終了にはまだ早いので、もうちょっと先へ行きたい。左に霧多布湿原を見ながら、すっかり秋の香りがする風に吹かれて進んでいく。ここで海岸沿いを走行できる「なぎさのドライブウエイ」を選択しようと思ったが、後で洗車せねばならないだろうかパスした。このドライブウエイといい、霧多布キャンプ場といい、なかなか縁が無い。今度はこの辺に絞ったツーリングを計画してみたいものだ。

 

道道142号線を行き、初田牛の駅のところで右に曲がる。しかし、何で駅前なのに何も無いのか。駄菓子屋の一軒でもありそうなものだ。余計なお世話だが、利用客はいるのだろうかと心配するが、自転車がわりと多く止めてあるので、高校生が通学に使っているかもしれないね。

 

それにしても、国道44号線と違い、こちらの道は取締りも無いし、交通量もほとんど無い。のんびりと景色を見ながら47ノット維持で走行を続ける。別当賀、落石の集落を淡々と抜けていく。ところで、落石といえば落石岬なんだけど、寄っていこうかどうか、ちょっと迷うところだ。今日は天気も良いから景色は間違いなく良いだろう。しかし、進入禁止のゲートから歩いていくと、岬の灯台までは往復で1時間近く歩く必要がある。

 

別に急ぐ必要もないが、この時点で「最東端」の文字が頭をかすめていた。明日の天気はあまり良くないと予報が出ているし、さんま丼も食べておきたい。結局落石も見送って、目標は最東端ということでプラン承認となった。だが、このいい加減なプランが後々、ちょっとしたトラブルになってしまう。

 

道道142号線、310号線で花咲、根室を通過していく。そしてそのまま道道35号線に乗り換えて、一気に最東端、納沙布岬へ直行だ。おっと、その前に給油をしておこう。確か根室のホクレンはオリジナルフラッグがあったはずだ。

 

駅近くのホクレンで給油を済ます。110km走行して2.8Lの給油だから、おおよそ39km/Lとなった。北海道燃費はこの辺が相場らしい。ひよっとしたら一度は40km/L越えもあるかもねと期待してしまう。そんなことを考えつつ、事務所へ行き「旗ありますか」とたずねてみたら、「すいません、今年は無いんですよ」ということだった。そこで、通常のグリーンフラッグを100円で購入し、スタンドを後にする。

 

この時点で時刻は16時10分過ぎ、ちょっと雲が出てきて、陽も傾いてきているから薄ら寒く感じる。晩秋か、というような雰囲気を感じて37ノットで納沙布岬を目指す。さて、その岬がある根室半島だが、基本的に海沿いにしか道が無い。半島の内部は原野や牧場になっていて、馬などが悠々と草を食べている姿も見ることができる。また、本来ならば国後島がみえるのだが、残念ながらガスが出ていて視界が良くない。これでは歯舞諸島も見えないかもなぁ、と嫌な予感がしていたが、某何とか振興会が建てた「オーロラタワー」が遠くに見えてきた。最東端はもうすぐだ、と気分は一気に高まる。

 

7.最東端とその後

 

こうして16時40分には最東端に到着し、お決まりの写真を撮る。当ページでは何回も記載しているが、日本の最東端は「南鳥島」で、ここは本土最東端である。また、当方の地元は東経137度ぐらいだが、ここはおおよそ146度、日の出、日の入りの時刻はだいたい40分程度早い。日没までには時間があるが、前述のようにガスっぽい上に陽も傾いているので、うす暗く感じる。

 

 本土最東端にて

 

せっかく来たので少しウロウロしよう。まずは灯台へ行こう。駐車場から歩くと少し距離があるんだよね、ちょっと面倒ながら鈴木食堂の前を通り、かもめの群れを見ながら歩いていく。海は穏やかであるが、風が冷たい。昼間は暑いぐらいだったから、この気温差には驚きだ。

 

灯台からは北方領土の島影が見え、日本の果に来たなと実感する。今回は初めて250cc級のマシンに乗ってきたのだ。その気になればやれるな、いや、軽量で足つきも抜群に良いSL、どうせ速度取締りに注意して37ノット維持で走行するのだから、このくらいの馬力で丁度良いのかもしれない。

 

元来た道を歩いて、今度は北方館に行く。ここではさまざまな展示がなされており、望遠鏡で国後島を見ることもできる。中に入りニ階に上がればエゾシカなどの剥製が出迎えてくれる。初めて行く方はちょっと驚くかもしれない。他にも海の生物や千島列島全ての島の模型、ロシアとの条約を記した巻物のレプリカなどマニアックなものもある。

 

前述の通りやや海霧が出ているが、望遠鏡ならば国後島の様子がよくわかる。工場らしきものがたくさんと建設されており、国を挙げて極東の開発をしているようだ。結局は「実効支配をした者勝ち」という論理には勝てない。事実、千島列島の択捉島以北は日本の領土だったにものかかわらず、実効支配していないとの理由で放棄した(させられた?)ようだしな。

 

おおっと、今日の宿を決めていなかった、まあ寒いからライハにしておくか。やはり根室と言えば、「インディアンサマーカンパニー」であろう。電話をしてみると、「うちは17時以降は受付をしていない」とあっさり断られてしまった。時刻は17時15分である。あ〜、しまったぁ。そして挙句の果てには「納沙布岬ならいくらでも他にあるでしょ!」とダメ押しされてしまう。確かにそうだ。すぐに電話を切ってさんま丼の鈴木食堂へ行ってみると、「この後に団体さんが来るので、すいません」とこちらもダメ。仕方ないので武内商店へ行ってみると、余りもののカニを出して「2,000円でどう?」と商売魂丸出しだったので興ざめしてしまった。

 

まあキャンプすればいいか、とキャンプ場を探してみたが、根室周辺にはキャンプ場が無いことが判明した。「えーーー、俺は日本の東の果てで宿無しかよ〜」と少々焦ってしまった。いや、そんなことはない、ひとまず根室の街へ戻ってみよう。

 

沈みゆく夕日を追いかけるように、根室半島を県道35号線南ルートを走行する。途中で「お母婆」というライハがあったなと思い出して行ってみたが、既に廃業済みの抜け殻だった。

 

根室駅で何か無いかと探してみるが、観光案内所も閉まっているようだ。まあ駅で寝てもいいかなと思うが、ゆっくり休めないだろう。仕方がないので、最後の手段であるビジホに泊まることにした。洗濯や荷物の整理も必要だったので、まるっきりの無駄という訳でもない。こうして気を取り直して、駅前のビジホである「三洋館」にチェックインした。時刻は18時30分だった。

 

この後はシャワーを浴びて、セイコマで買い物、洗濯、荷物整理と慌ただしく過ごす。やっと落ち着いて、夕飯を食べながら天気予報を確認する。明日は曇りで午後は雨らしい。ただ、実際はその日、その場所に行ってみないと天気はわからない。北海道は広いので、全道的に雨という以外は目安にしかならないのだ。

 

それにしても今日は欲張ったせいで、最後に帳尻が合わなくなってしまった。しかし、荷物を積載していても林道走行に支障は無いことがわかったし、最東端で景色を楽しめた。何より天気が良かったことが嬉しい。明日も良い方向に天気予報が外れることを期待しよう。

 

本日の走行 330km

(内林道30km)

 

4日目へ続く