TDM900フロントフォークオイル交換

 

08/05/17

 

0.定例交換です

 

紀伊半島ツーリングの際に、深い溝に乗り上げるとやや挙動が不安定になることに気が付いた。記録を見直してみると、前回は29,000km時にフォークオイルを交換している。今回40,900km走っているわけだから、12,000kmも放置していた。だいたい10,000kmを目安にオイル交換しているので、天気の良い週末を利用してメンテナンスをしてみた。

尚、今回はエンジンオイルも同時交換となった。そちらにも軽く触れておこう。

 

1.まずエンジンオイルから

 

前回のオイル交換は1月末であったから、約3月半ほど前だ。その間に3,000km弱を走行しているということで、1,000km/月には及ばない。まあこの間は冬の一番寒い時期を挟んでいる訳なので、この位なら問題無い。さらに風邪が長引いていたことも、距離が伸びていない要因となっている。

さて、オイルの銘柄は今回もホンダ純正G2であるが、いつものホームセンターに行くと、なんとラベルが変更になっていた。おまけに値段も300円/L程上げられているではないか。しかし、よくよく見てみると、APIのグレードがSJからSLに上がっているし、半合成油と記載されている。ははあ、原油価格の高騰で値上げしましただけでは格好がつかないということで、チョコッと金をかけてグレードアップしたのか。はたまた、もともとそれくらいの性能はあったが、隠し玉として残していたのか。理由は分からない。

 

  新パッケージのホンダ純正オイル(左)とヤマハ純正フォークオイル

 

エンジン暖機後、オイルを抜き取る。そんなに汚れていないし、粘度も落ちていない。もう少し使えたが、暑くなる前に換えておいた方が良い。今回はオイルのグレードが上がったので、なるべくしっかりと入れ替えをしたい。そこでオイルフィルターも外して古いオイルを抜き取った。フィルターは次回交換予定だ。

新しいオイルを入れるが、まず2L注入し、エンジンを10秒位回した後、残りの1.9Lを入れる。これが結構難しい。入れ過ぎる場合が多いので、やや少なめにしておいて、後で継ぎ足して丁度良い塩梅にする。

尚、例の3本締めのオイルフィルターケースのOリングを調達していなかったので、今回は古いものを再使用した。トルクレンチで1.2kgf・mで均一にしめたが、オイル漏れがある。しばらくすると治まることがあるので、放置する。次回はボルトも交換してみよう。

 

2.いよいよ本題

 

さて、本日のメインエベント、フォークオイル交換であるが、まずサイドカウルを外す。TDMはボルト3本、タッピングスクリュー2本、グロメット1本を外す必要がある。KDXに比較してやや煩雑である。しかもセンターカウルと分離する際にコツを必要としている。傷をつけないで、またツメを割らないように分離する。

 

 サイドカウルを外すとこんな感じ。エンジンECU等も納まっている。

 

次にフォークを外すわけだが、その前に前後フォークキャップに印をつけておく。これ、結構重要なんです。というのも、厳密に言うとフロントフォークはブレーキ時には、車両後方にしなっている。大抵は弾性変形であるが、何回も力が加わっているので微妙に曲がるらしい。そこで、フォークを外す機会には前後の方向を入れ替えてやると都合良いらしい。つまり、組み付け時にはこのマークが下になるようにするわけだ。

 

 修正液で印をつける(赤丸印の部分)

 

ブレーキキャリパー、フロントフェンダー、ブレーキ配管、それぞれを外す。ブレーキ配管保護のために、ブレーキキャリパーは紐でフレームにぶら下げておこう。また、トップブリッジに固定用1本、アンダーブラケットに固定用2本、記念に一本、フォーク固定用ボルトをそれぞれ緩めておく。

フォークキャップも忘れずに。

エキパイの下に板切れをかませ、パンタジャッキで車両前方を持ち上げる。そしてフロントタイヤを分離する。

 

 見た目に不安定だが、案外大丈夫だ

 

いよいよフォークキャップを外して、オイルを抜き取ろう。内部の部品は、ゴミが付着しないように新聞紙で包み、踏みつけたりしないように安全な場所へ保管する。

 

抜き取ったオイルと内部の部品。真っ黒にオイルが劣化している。

 

とりあえず、フォーク本体は逆さまにして放置しておこう。するとまだまだ古いオイルが出てくる。

 

 オイルを抜いたつもりでも、まだまだ出てくる。  

 

この間に内部部品を清掃しておく。古いオイルを拭き取ると部品は金属色になる。2つ前の写真と比較すると、その差は一目瞭然。

 

 上からキャップ、スペーサー、ワッシャ(上)、ワッシャ(下)、スプリング

 

インナーチューブ内部も綺麗に拭いた後新しいオイルを注入し、ストロークさせてエア抜きを行う。この際、インナーチューブを一番引き上げた状態の時に、エアを噛まないくらいの量のオイルを入れておく。また、ゆっくりと上下動させないとエアを噛みやすい。

 

 それにつけてもオイルの透明さ。これが本来の姿。

 

次は油面を合わせる。TDMの場合、インナーチューブを全屈させた状態で、最上部から133mmの位置に油面がくるように調整する。これが結構難作業であるが、管理人は自作の特殊工具を作成した。と言ってもボトル式のシャンプーのポンプだ。フタの下が133mmになるように管を切っておくだけ。あとは金属製のモノサシ。これだけあれば、実用上問題ないくらいの精度は十分に出すことができる。

 

 特殊工具(左)と金属製モノサシ(右)

 

おおよそにオイルを入れ、特殊工具でオイルを吸い出し、油面を確認する。当然ながら、特殊工具のフタ(ピンク色)の下部をインナーチューブの最上部に当てて、なるべく管が油面に対して垂直になるようにする。また、フォークそのものも地面に垂直にする。

何回か油面を測定しては調整し、目一杯精度を高くするように心がけることがコツだ。

油面を合わせたならば、フォークを組み立てていく。ところで、ご存知のようにスプリングは不等間隔に巻いてある。これは作動初期は柔らかさ、フルストローク付近は底ツキを防ぐために硬さを出すためである。入れる際はピッチの狭い方を上方にする。

 

 不等間隔巻きのバネを入れる

 

後はワッシャ(下)、スペーサー、ワッシャ上、さらに長い棒と一体になったキャップを取り付ける。この長い棒はフォークの伸び側減衰を調整するネジと連動して回転するものだ。そして、その断面は山型食パンの形をしており、決まった方向にしか取り付けられない。アウターチューブ内のダンパーにそれを納める穴が開いているのだが、オイルに隠れてさっぱり見えない。勘でうまく入れるという能力を要求される。もっともこれが入らないで困ったことは一度も無い。つまり、大して難しくないというわけだ。

 

 全てうまく納まりました。

 

後はフォークを車体に取り付けるが、この際左右の位置がズレると、作動性がおかしくなる。そこで、各々ををおおよその位置に取り付け、フロントアクスルがスムースに貫通する位置を探し、片方のフォークを位置合わせした後、マウントボルトを固定するという骨の折れる作業を行う必要がある。

さらに、位置が決まったらタイヤ、ブレーキ配管、キャリパー、フェンダーを取り付けてジャッキを降ろす。タイヤは結構重いんですよ。

ここまできたら後は確実にボルトを締め、もう一度緩みが無いかを確認し、サイドカウルを取り付けて完成ではない。ブレーキキャリパーを外しているので、レバーを握って確実にブレーキが効くようにしておかないとえらい目に遭うことは必至だ。

 

3.効果の程は?

 

早速試運転してみよう。まずは低速で駐輪場から出る。この段階で、もはやギャップの吸収が違うことを体感する。さらに道路のデコボコをしっかり吸収し、ハンドルには伝えてこない。サスが仕事をしている証拠だ。ちょっと速度を出して、ブレーキをかける。フォークの沈み込みが明らかに少ないし、ゆっくりと収束する。お決まりの「あ、これが整備の効果だね」というわけだ。

因みに詳しく説明すると、フォークオイルが古くなると減衰力が落ちてくる。当然ストロークする速度が速くなってしまうので、動きに落ち着きがなくなる。更に路面が悪いと、微量だがハンドルが左右にとられてしまう。つまり、フォークのストローク(縦の動き)プラスハンドルの振られ(横の動き)が伝わってきてしまうというわけだ。そうなると、恐怖感を覚えるようになるので、特にコーナーで怖さが増してくる。

ところが、フォークオイルを新しくしてみるとフォークがコツ、コツと減衰を効かせるので、ハンドルが左右に振られることはない。つまり、縦の動きのみで収束するのだ。

 

4.まとめ

 

ナンダカンダで、14時頃から作業を開始、終わったら18時を回っていた。腰も疲れている。しかし、出費はオイルが1800円のみ。まさに自己整備で工賃を稼ぐ典型的な作業と言えよう。体感効果も非常に高い。これはやらない手はないだろう。もっとも、工程によっては精度を求められるので、疲れることも事実だ。しかし、そのお陰でコーナリングが楽しくて仕方ない程に復活した。効果対労働は補って余りあると断言できる。

そういうところで、本日はおしまい。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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