KDX125SRのエンジンオーバーホール

 

 

なんとなく似ていませんか??ヒョットコに

 

0.背景

 

管理人は2007年12月現在、スポーツジムに通っている。エアロビクスが特にお気に入りである。若い女性のインストラクターが担当しているということはもちろん、心肺機能を向上させるには効果的であるからだ。筋トレはそこそこにしている。

そんなわけで、以前は歩いて通勤していたが、最近は林道探検車であるKDXを使用している。エンジンが暖まる前に会社に到着することが、ちょっと気に入らない。しかし、ジムにまで歩いていくとかなりの時間がかかるので、止むを得ない。

ある日、暫く全開で走った後、ガス欠のような症状でエンストするようになった。???どうもおかしいと思って、いろいろ思惑をめぐらせているのだが、どうやら可変排気装置のKPISの固着が考えられそうだ。調べてみると、KDX125のそれは市販モトクロッサーのKX125直系の装置であり、頻繁なメンテナンスを求められる。ということは、、、。12月21日現在、累積で約9000kmを走行している。2年間で9000-2700=6300km。まあまあ走っている方だろう。KDX時間数も200時間を超えた。この内林道時間としてはおよそ30時間程度と思われるので、まだまだ修行が足りない。限定免許取得にはあと20〜30時間の林道時間を加算しないといけないだろう。

 

まだそんなに走っていないんですけどね

 

話が逸れた。ともかく、レーサーは走行毎に整備することが基本であるから、6000km以上の走行ならば、一度整備する必要がありそうだ。他のページを調べていると、排気装置にカーボンが付着して、固着することが大いにある、という情報が掲載されていた。やはりそうか。

 

12月23日にガスケット類の注文をした。うまくいけば2007年中にも部品が揃う予定だ。

 

1.作業開始

 

ナンダカンダで2008年1月6日午前に部品を入手した。当日は良い天気で、気温も高かったので、早速作業開始。サービスマニュアルは「そこそこ」に目を通していたので、サクサクと外装部品を外す。KDX125は市販モトクロッサーのKXレプリカであることはご承知の通りだが、外装の取り外しもまさに直系だ。というのも、ボルト3本外せば部品は外れる。燃料タンクは1本プラスピン止めだ。シートもリアのサイドカバーと共締めになっている。このあたりはカワサキらしからぬと思われるのは、管理人だけだろうか。もっとも当人はGPXしかカワサキ車を知らない。

 

   

                                 結構服を着ていますが・・・                      あっという間に裸です。イヤァ〜ン

 

外装が外れたので、次に冷却水を抜く。やけに緑色が鮮やかだなぁ。かき氷のメロンよろしく、ジャンジャンと廃油吸引剤に染み込んでいく。そして、今回バラすヘッド回りのゴミ、汚れを拭き取って、事故防止に努める。管理人は幸いなことに、2ストエンジンの腰上分解は数回行っている。このあたりの基本的な手順はほぼ、身についていると言ってもさし支えなかろう。(この傲慢な態度が後に大事故に発展する)

だいたい綺麗になったので、いよいよヘッドナットを緩める。その前に、スパークプラグを外しておこう。うん、良い色じゃ。もっと黒いかと思っていた。因みに管理人は、あまりエンジンを回さない(回す腕が無い)ので、ややくすぶり気味の場合を見ることが多い。

 

 まあまあ良く焼けているようだ。

 

ヘッドナットは結構固く締まっているので、メガネレンチを用いて均等に、対角線状に緩めていく。そしてヘッドを外すと、、あれ、すごく綺麗な状態ではないか。ピストンヘッドもなかなか良いぞ。気を良くしてシリンダの取り外しにかかる。シリンダを外す前に、KPISのアームを外す訳だが、ここで大事故発生!!クランクケースから伸びているシャフトと、その動力を伝えるアームとを締結しているナットを外そうとしたその時、「あれ、結構固いな」と思って力を入れたら、パッキーーーンとシャフトが折れちゃった。なんで??と思い、サービスマニュアルを確認すると、「ナットは左ねじです」だって。なんでここだけ、と嘆いても仕方が無い。後で気が付いたが、動力伝達アームを見るとナットを緩める方向が矢印で刻印してあったわけで、、よく見ろよ!!

 

                             

                                  案外綺麗な燃焼室                               ピストンヘッドはこんなもんね。

                                                                       上方の配線は後つけYSPスペシャルアース線

 

                          ヤッテシモウタ・・。

 

とりあえずシリンダを留めているナット4個を緩めてシリンダを外す。やや固着していたので、軽くプラハンでドッツいてから引き抜く。あ、この時にウエスをシリンダ下に入れることを忘れてはならない。ゴミが落ちたり、冷却水の残りが必ずと言っていいほどに落ちてくるからだ。やれやれ、ピストンご対面。なんかやけに茶色いなぁ。そう思いながら、ピストンピンを外す。ピストンピンクリップもそうだが、ピン本体も固くピストンに入っているじゃあありませんか。ドライバーでドッツいて外す。ああ、ピストンが傷ついてしまった。情けなしニューギニア6級整備士。さらにもうひと仕事。KIPSのラック、ピニオンギアを外す。マニュアルに従って、シャフトを引き抜くが、外れないよーぉ。いろいろと試して、やっと外れた。うわぁーカーボンがビッシリついていて、更にそのカーボンに粘りがあるよ。どうりでフケが均一でないわけだ。ここの動きが渋いから、エンジン全開後のアイドリングも安定しなかったのか。うん、納得。

 

                

                   レシプロエンジンと言えばピストンでしょう                            ピストンピンとニードルローラーベアリング

 

                

                         シリンダーは良い状態である                       排気バルブの構成部品(ポマードベットリ、カーボンベットリ)

 

これで一通りに部品を外した。「キャブは?」という質問をしたそこのあなた、リードバルブの取り付け位置についてもう一度考えてみよう。KDX125はクランクケースリードバルブであるから、外す必要は無い。あーーっはっはっはぁー。因みに管理人のレーサー監督時代に使用していたNSR50はピストンリードバルブであるから、キャブを外す必要があるのよ。前者の方が混合気の吸入経路を直線的にできるので、エンジンのツキが良いらしい。もっとも、アクセルワイヤーのブーツを交換したので、結局キャブの頭だけは外しているよ。そんな薀蓄を自らに披露しながら、先程の大事故を振り返る。

 

2.クラッチカバーへ

 

ヘッドが外れたので、次はクラッチカバーの取り外しへ。あれ、腰上のみではなかったの??先ほど、逆ねじのシャフトを壊しているので、クラッチカバーを開けるのです。ハイ。この作業はシリンダーを外した翌週の、3連休初日に開始したわけだが、当日の午前は生憎の雨。ガレージの無い管理人は部屋の中で各部品の洗浄を行った。とりあえず、先週から各部品は灯油にドブ漬けしておいたので、多少手間が省けた(と思う)。

 ところで、事故からの復帰方法を、サービスマニュアルの構成図=パーツカタログの挿絵であるから、よーく見つめて考えてみる。クラッチカバーを外さないとこのシャフト外せないジャーンってエライコッチャ。さらにオイルシールが何個か入っているし。とほほ、と部品番号を調べてバイク屋へ出かける。なんか店長、最近仕事が事務的すぎませんか。いや、この場合は余計なことを聞かれたくないので、丁度よいわけでして、、。

というわけで、とりあえずは部品の洗浄に精を出すこととしよう。KDXは大事な足という任務も負っているから早いところ復帰させたいしね。

 

KDX125SRサービスマニュアル(Part No. 99925-1087-05)より

 

 

     

                   こんな風に灯油にドブ漬けしておいて、真鍮ブラシでこする            ピストンの重量は130gで、重いか軽いかは不明

                                                              スカートのコーティングがハゲているので、本当は要交換だね

 

     

               左側の3つの丸穴に排気バルブのピニオンギア・バルブASSYが入る    エンジンの王様、ピストン(洗浄後)スカートはコーティングされている

                                                            ピンボス内まで肉抜きされていることに注目!!

 

午前中を使ってシリンダ関連の部品を洗浄。さらにピン穴に傷が入ったピストンの修正等を行う。午後から雨が上がったので、クラッチカバーの取り外しにかかる。ところが、この日は猛烈に寒くて写真撮っている余裕がありませんでした。モウシワケない。上のパーツイラストで勘弁願いたい。管理人の頭の中にはしっかりと映像が焼きついていることは言うまでもありません。

ところで、問題のシャフトの件について、今一度イラストでおさらいしよう。問題のシャフトはクラッチカバーの中で、ウオーターポンプの回転を利用した、排気バルブ駆動装置ASSYにねじ止めされている。つまり、クラッチカバーを外さないと交換ができないわけである。話が逸れるが、この排気バルブの駆動が、ウオーターポンプの回転を動力源としているとは驚いた。エンジン回転が上がり、ウオーターポンプの回転も上がる。そして、その動力が減速ギアを介して排気バルブ駆動装置に伝わる。この装置は回転の遠心力で、金属ボールの動きを利用し、それが埋め込まれている特殊プレートを移動させ、抑えられているバネを伸ばし、その動きでアームを動かして、排気バルブを動かしているようだ。つまり完全機械式の可変排気バルブというわけだ。電子制御全盛のこの世の中でこの装置はアイディア賞モノだ。完全機械式といえば、80年代に完全機械式の4WSシステムを搭載した、3代目ホンダプレリュードがあったなぁ。何か技術的な賞をもらった覚えがある。

 

 3代目ホンダプレリュード(ホンダ技研工業のページから引用)

 

話を戻して、カバーにはキックアームも取り付けられているので、それを先に取り外す必要もある。また、アームの根元にオイルシールもあるので、ついでに交換することとする。さて、キックアームの取り付けねじを緩めて、外れない。めちゃくちゃ堅いぞ。叩いたり、暖めたりしたがビクともしない。小一時間悩んだ挙句に、寒さと疲れで嫌気がさしてきた。しかし、この週末でなんとかエンジン始動まで漕ぎ着けたい。結局近所に住むCOUGAR氏に助けを求めた。氏は快く管理人のアパートにやってきて、「特殊工具でないと無理ですよ。中央に穴が開いているので、工具使えということですよ」と冷静かつ的確なアドバイスを頂いた。特工のベアリングプラーは、これまた近所の金物店で売っているという情報も頂いたので、早速購入に走った。因みにこの金物店、燃料もやっていて、氏のアパートのプロパンガスを担当しているそうだ。

 

これがベアリングプラー(上方にエロ本が写っているのはご愛嬌)

 

この工具は、真ん中の先が尖った棒を、取り外したい部品の中央の穴に入れ、アームについているツメを引っ掛け、前出の棒の頭についているネジの頭をスパナ等で回して、目当ての部品を引っ張って外すことができるというわけだ。悩みは一発で解決。COUGAR氏には悪いことをした。このくらいは自分でなんとかしなければ。

 

3.シャフト交換からカバー取り付けへ

 

これでようやくクラッチカバー離脱に成功。問題のシャフトを2本のネジを外して交換した。こんだけのためにえらい大仕事になってしまった。しばしギア類を観察する。よく見ると、プラスチック製のものと金属製のものと2種類存在する。これは負荷の小さいものはプラ製として、軽量化とコスト削減に貢献しているものと思われる。コスト削減は地道に、見えないところで行われているようだ。技術者の皆様に脱帽。

さて、カバーとエンジンのあわせ面を例によって傷つけてしまった。ガスケットが固着していたので、仕方なくマイナスドライバーでこじったわけだが、本来はスクレイパーなどの先の細いもので慎重に作業するか、もしくはドライバーでも、ビニールテープを巻いて傷を防ぐべきだった。やはりニューギニア6級整備士からは脱却できていない。とりあえず、耐水ペーパーの1000番を軽く当てて、なるべく滑らかなあわせ面を実現しておく。オイル漏れが出てしまっては話にならんからなぁ。その後、パーツクリーナーでしっかりとゴミを拭き取り、ガスケットを合わせ、カバーを組み付ける。おっと、キックシャフトを入れ忘れた。またカバーを外して、キックシャフトを、、。リターンスプリングがあるんだけど、これがクセモノ。なかなか入らないぞ、ああ、寒いし、疲れたし、休憩!!ヒーターで暖まりながらお茶をすすり、マニュアルの組み立て図とにらめっこする。とにかくこれを信用して、組み付けよう。

よし、気合を入れなおして作業再開。もっともこの日は何回もこんなことを繰り返していた。前出のリターンスプリングを捻って取り付け、カバーを合わせて、プラハンで軽く叩き入れていく。そして、ボルトをある程度締めながら入れ、トルクレンチで規定トルクまで、締め付ける。カバーボルトは0.4kg・mだけど、2割増しとして、オイル漏れ等が無いように配慮しておいた。やれやれ、キックの作動状況を確認しておこう。あれ?うまく作動しないジャン。せっかく取り付けたカバーを外して組みなおし。リターンスプリングが逆になってました。管理人のミスです。

もう一度やり直し、今度はうまくいったぞ。ちょっと勢いに乗ってきたが、北風も強くなってきた。最後のアガキでピストン、シリンダーまで取り付けた。残りは明日に持ち越し。撃沈。

 

4.シリンダヘッド・その他

 

今日こそは完成させたい。まずシリンダヘッドボルトをトルクレンチで締める。うーん、だいぶバイクの形を成してきたなぁ、と気を良くして、冷却水のホースを取り付け、クーラントを注入する。もちろん、休息中に片手間でつくっておいたものだ。

 

           

                      管理人のトルクレンチは弓形である                            ラジエターの下部が歪んでいることに注目

 

おい、よく見るとラジエターが歪んでるよ。まあ漏れていないからいいか。よくよく思い出してみると、ハイサイドで吹っ飛ばされた時に車体左側を強打していたなぁ。いままで気がつかなかった。さて、ヤマハ純正のミッションオイルを注入し、ガソリンタンク、新品のプラグを取り付けて、いよいよエンジン始動。あれ?エンジンがかからないよ。アクセルワイヤーのカバーを交換した時、キャブレターのバルブピストンを外したなぁ。取り付けがまずかったか。もう一度フタを外して確認、何か向きが悪いようだ。マニュアルを確認してみると、左右が逆でした。しっかりとキャブの底部まで入りました。20〜30回程度キックを蹴ったが、ダメ。10分ほど休憩してみたら、あっけなく始動した。

慣らしがてらにYSP天白に行ってみる。慣らしといっても、今回はピストンリングのみ交換しただけだから、神経質になる必要は無い。アイドリングからの開け始めがモタつくなぁ。アクセルワイヤーの取り回しを確認する必要がある。それ以外はほぼ文句のつけようが無い。というのも、いままで4000回転付近の吹け上がりのバラつきが無くなって、非常に滑らかな加速をするようになった。この結果スピードの乗りが格段に向上したわけだ。あっという間に60km/hに達している。今まで、かなり性能を損なっていたとここで感じる。あ、この瞬間が整備の成果だね。一通り走行して、水漏れ、オイル漏れをチェックするが、今のところは問題なし。後日アクセルワイヤーをどうにかしたい。

 

5.まとめ

 

だらだらと整備記だか、失敗談だか解らない文章を箋ってきたが、今回のまとめをしてみよう。やはり、整備はできる限り自分でやるほうが面白いということだ。この整備記を読んで、俺にもできそうだなと思われたか、はたまた難しそうだなと思われたかはわからないが、時間をかけてゆっくりやれば何とかなるということをここで主張したい。というのも、各作業はボルトやナットを緩めて部品を外し、必要なガスケットは交換、パーツは洗浄して、再び規定通りに組み付けるという単純なものだからだ。エンジンと言っても、腰上ならこの作業だけで修理可能なわけだ。この作業を工賃換算すると、大体3万円くらいになろうか。部品代が大体一万円だから4諭吉殿の出費になる。こうなるとおいそれと発注できないが、1万円なら年に1回くらいは実行可能ではないだろうか。こうして体感できる程の整備効果を手に入れることができるなら、決して高くは無いと思うのだが、如何に。もっとも、管理人は途中で失敗して、余計な出費と時間の浪費をしているから、実質はもっと楽な作業のはずだ。

以前、どこかで書いたような気もするが、要は「やってやろうか」という気持ちと少々の工具だと思う。前例をあまり知らない、はじめから自動車の類はブラックボックスだから、素人がさわれないと思い込んで敬遠している例の方が圧倒的に多いだけだと思われる。プロでも「お前それで飯食ってるのか?」というような人「ピップ(仮名)」の店員もいるわけだから、基礎的な知識、必要な情報を手に入れて、大いにやってみると趣味も大幅に広がるというものだろう。管理人はNSR50のレースを通して様々な自己整備を覚えて、それを応用してTDMなどの作業に役立てている。このように自分で手を入れていると、普段からバイクの調子に気を配れるようになる。よってこまめな整備を行う。効果があるから面白くなる。面白いからきっちりやれる。車検がきても、特別に何かするわけでもないので、自分で通す。というように、整備を自分でするということは、金銭的な節約に加え、バイクへの愛情が増し、バイクそのものを楽しむという趣味に没頭できる、というような副次作用もあるのでやめられない。KDXへの愛情が一段と深まったということで、今回のオーバーホール記を終了しよう。

 

6.付録

 

 

 

 

 

部品代=5733+3413=9146円

ベアリングプラー=2898円

工賃=0円(自己整備)

 

結構部品代かかるのね。

二枚目は失敗分だから実際は6000円程度で済んだはず。

 

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