TDM900エンジンオイル交換

(2008/01/26)

 

TDM900エンジンの図

 

0.はじめに

 

4ストローク車のエンジンオイル交換作業は最も基本的かつ素人でも手が出しやすい作業だ。ソケットレンチ2、3個の工具で作業ができるし、廃油も天ぷら油の処理と対して変わらない。ところが、これは最も重要なメンテナンスであることも忘れてはなならい。というのも、エンジンオイルは走ることに重要な要素である、動力源の発揮する性能と大きく関係があるからだ。具体的に言えば、オイルはエンジン内部の金属部品を潤滑、清掃、冷却するというエンジンの設計時の性能に直接関係する役割を担っている。もっとも、2輪車の場合はエンジンのみならず、ミッションやクラッチも潤滑している。つまり、ギアチェンジの感覚やクラッチの滑り等にも影響してくるわけだ。これをないがしろにする理由は無かろう。

 

1.オイルの選択

 

エンジンオイルは様々な銘柄が存在する。どれを選ぶべきか、迷っておられる方もおられよう。管理人の場合は、メーカー純正品を使用している。これは先ほど記したように、オイルはエンジンのみならず、ミッション、クラッチにまで影響していることが理由として挙げられる。つまり、社外品として多く流通しているオイル専業メーカーの品は、2輪車に特化していないことが考えられるからだ。メーカー純正品ならば、それを用いて実験、開発をしているので、2輪車専用品であると言ってもよかろう。もっとも、メーカー純正品でも製造は貝殻マーク社などの石油元売りの会社が行っている。

こういった理由に加え、値段、さらには手に入りやすさも考慮に入れておく必要がある。そこで管理人は、概ねホンダの純正品G2を使用している。え、TDMなのにホンダなの?その通りだよ、ヤマトの諸君。ホンダG2は大抵のホームセンターで、安く扱っている。もちろん2輪メーカーのものだから、エンジン、ミッション、クラッチの潤滑も考慮して造られている。

 

管理人御用達のホンダ純正オイル ULTRA G2  (10W-40)

 

これに勝るオイルは今のところ無い。大体1Lで900円だ。グレードもAPIのSL、JASOのMAである。ヤマハ純正の同等品を入れたいのもやまやまだが、如何せん売っている場所が限られるし、値段も1Lで1600円くらいする。あと、管理人のお薦めはカワサキの純正だ。これはSF、SG、SJの三種類がある。さらに4L缶があることだ。ホンダにもヤマハにも4Lがあるらしいが、ほとんど見かけたことが無い。値段も4Lで4500円〜6500円位と、某社外品(赤色のもの)の1L分の値段で購入可能だ。スズキも以前は4L缶を見かけたが、最近はあまり無いようだ。

 

カワサキ純正のS4の4L缶。空き缶のゴミが少なくなりそうだ。

 

ところで、2輪専用品でないものを使うとどのような弊害がでるだろうか。管理人も以前は安売りのカストロなんかを使用していた。どうもカムチェーン、タペットといったヘッド周りの音がうるさかったことも思い出す。ミッションの入りもイマイチだった。ある日、純正品はどうだろうと思い、使用してみると、あら不思議、音は小さくなるし、ミッションのキレも非常に良い。クラッチも切れがよくなったようだ。おかげでギアチェンジが素早く行えるようになった。但し、エンジンの吹け上がりはやや鈍くなったと感じた。しかし、低回転でのトルクフィーリングが良く、公道ではこちらの方に分があるなぁということで、それ以来純正品(メーカー違いはありますが)のみしか使用しておりません。どうもヘッド周りの音がうるさいとお思いの方、騙されたと思って2輪メーカー純正品をお使いになられていはいかがだろうか。

 

2.交換作業

 

長々と前置きをしたが、実際の交換作業に入ろう。管理人の機体はアンダーカウルを装着しているので、これを外すところから始まる。ボルトを5本外すのみなので、大したことはない。ついでに清掃すると思えば時々は外すのも悪くない。次に、その辺りを10km位走行してくる。別に5kmでよかろうが、管理人は1走行サイクル10kmを基本としている。さて、戻ってきて暫くエンジンを冷やしてから作業にかかる。火傷しては、話にならんからなぁ。TDMは乾燥オイル溜め(ドライサンプ)方式を採用している。つまり、エンジンの最下部にあるオイルパンにはあまりオイルが入っておらず、代わりにエンジン背面にオイルタンクを背負っているわけだ。そういうことで、ドレンボルトが2箇所にあり、各々を外して古いオイルを排出する。出てくる廃油は結構汚れているぞ。因みに2500km弱の走行後。

 

                 

                                  左側ドレンからの廃油                                           右側ドレンからの廃油

 

今回はオイルフィルタも交換するので、フィルタも外す。TDMはエンジンの基本設計が今から20年近く前になるので、別体のカートリッジ式なんて便利なものを採用してはいない。ボルトを5本外して、フィルタの入っている部分のフタを外す。ドバドバとオイルが出てくるので、さっさと作業をする。

 

 フィルターのフタとフィルターを外した図

 

ここまできたら一服して、オイルが全部出てくるまでゆっくり待つ。それと外したボルト類の清掃も忘れてはならない。その後は新品のオイル、フィルター、Oリングなどの必要な部品を用意しておく。

 

 新品のオイルフィルタ。上の古いものと比べれば、汚れは一目瞭然。

 

ところで、TDMのオイルフィルタが内蔵式であることは先に述べたが、このフタがやや曲者だ。というのも、ボルトの本数が少なすぎると思われるからだ。下の写真を見ればお解りいただけるものと思うが、左側が3本しかない。もちろん均等にボルトを締め付ければ、オイル漏れなんかはしてこないが、いい加減にやってしまうと後でえらい目に遭う。管理人も最初は苦労したものだ。

 

 これがフィルタのフタ。左側3本とは殺生な。

 

さて、オイルの排出に伴ってエンジンに付着したオイルをふき取り、ドレンボルト、フタなどを組みつけていく。特にフタは慎重に。この際、あわせ面にあるOリングなどにオイルを薄く塗っておくことを忘れるようでは、ニューギニア6級からの脱却は永遠の夢だ。

取り付けるものを全て取り付けたら、いよいよ新品のオイルを注入していく。TDMはエンジン右の上方に注入口がある。因みにフィラーキャップがレベルゲージを兼ねている。オイル量はフィルター交換時は3.9Lと多い。しかも入れ方が面倒で、一度2L注入して、エンジンを10秒くらい回す。そして残りを入れ、レベルを合わせるというものだ。加えて、レベル合わせも、最低ライン付近に合わせておくという配慮が必要だ。そうしないと入れすぎになってしまうからようわからん。

 

                 

                      新しいオイルを注入しております。やはり透き通っておりますな。             これがレベルゲージ。下の穴が最低位置。写真はベスト量

 

3.試運転

 

いよいよ試運転。うん、ギアの入りがすごく良いね。発車してエンジンをゆっくりと回していく。吹け上がりも滑らかだし、変な引っかかり感も格段に少なくなった。しばらく走って、オイル漏れ等がないか点検し、いよいよ本格的にエンジン回転を上げていく。吹け上がりそのものはあまり変わらないが、先に述べたように非常に滑らかかつ静粛だ。これこそがお決まりの、「あ、この瞬間が整備の効果だね」というものだ。スロットル操作に対する反応もかなり良い。まさに純正オイルならではの体感性ではなかろうか。

 

4.まとめ

 

今回はオイルが1Lで780円と非常に安く手に入ったので、4Lで3200円。廃油処理箱が280円、フィルタが1000円、Oリングが数十円。非常に対価に対する効果が高いと言える。別に1Lで何千円もする赤いのを入れなくても、いや、純正を入れたからこそこの効果があるのかもしれない。

ところで、なぜ2輪専用品が良いのだろうか。おそらく極圧性が違うものと思われる。2輪専用品と汎用のオイルを手で触ってみると、前者の方が弾力があるように思われる。実際に2輪メーカーでエンジン設計をされている知り合いや、純正を推奨するバイク屋で話を聞くと、極圧性の話が出てくる。極圧性が高いということは、ミッションの歯車に挟まれた時の緩衝性が高いということだ。故にミッションの潤滑性も高くなる。エンジン本体については吹け上がりがやや粘るような傾向にあるから、そのものはやや鈍くなるが、それこそ粘るような回転フィーリングが生まれてくる。よって街中では扱いやすいエンジン特性になるわけだろう。また、モトクロスをやっているバイク屋に聞いたことがある話だが、純正オイルを使っていないと、レースの最後でクラッチが膨張して切れなくなってくることがあるらしい。うーん、恐るべし純正オイル、ということで今回は終了。

 

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