管理人 海外へ行く
~ボスニア・ヘルツェゴビナ編~
2018年10月23日 ~ 2018年10月31日

出発前に自宅アパートにて
(部屋の掃除をしろ!!)

0 序

4月から某配達の仕事を始め、6か月が過ぎた。最初は続けられるのか自分でもわからなかったのだが、周囲の助けもあり何とか形になりつつある。それにしても、今年の夏は暑かった。40℃を越えた日もあったのだが、赤いホンダカブでの配達はお盆も通常通りに行われる。もちろん、今年の夏も夏休みは無く、週休日以外は仕事に追われていた。

しかし、仕事だけしていたのでは何のための仕事か、訳が分からなくなる。当方の場合、「旅に出る金を稼ぐための仕事」であることに疑いの余地はないのは、しばしば記載している通りだ。

今回、何とか6か月を超えて勤務することができたので「有給休暇」が付与された。これを使わない手はないだろうということで、かねてから構想を描いていたボスニア・ヘルツェゴビナの首都「サラエボ」への旅を実行することにしたのだ。

9月の初旬に休みを申請したのだが、上司からはその返事がなかなか伝わってこない。やきもきして待つこと1か月、10月の初旬に希望通り、1024日から31日まで休暇を取得することに成功した。正直「無理なのかな」と思っていたので、その喜びは非常に大きかった。そして、それがわかった日の帰宅後、早速航空券を手配する。もっとも、前もってネット上の格安券の販売店「エアトリ」でアタリをつけていた「オーストリア航空」のウィーン経由サラエボ行きを選択して、購入ボタンをクリックしただけのことだが。

ルートは以下の通りであーる(吉岡風に)。

往路:中部国際空港~成田空港~ウイーン国際空港~サラエボ国際空港

復路:サラエボ国際空港~ウイーン国際空港~フランクフルト国際空港~中部国際空港

これは、雰囲気のある成田出国、帰りは中部への直行便と理想のルートであ-る(くどい)。と言うのも、成田空港はやはり日本と世界をつなげる空港であり、就航する航空会社の種類も便数も多い。そのため、様々な国の人々が普通に行き交っているのだ。こういう環境に身を置いていると、いかにも「今から海外にいくのだ」という気分が否応なしに高まってくる。そう、成田空港からの出国は当方は大好きだ。

しかし、帰国時には問題がある。それは、中部空港への乗継の悪さだ。中部~成田線は午前と午後に2便(JALANA1便づつ)あるのみだ。そして、大抵の場合、夜に到着して、1晩は近郊のホテルに泊まって、翌日に中部向かうということになる。つまり、余計に1日かかってしまうのだ。

以上の理由により、今回のルートはまさに理想のルートと言えるわけだ。

航空券が確保できれば、次は宿泊場所の手配だ。これは意外に簡単で、いつものように「Booking . com」というサイトから適当な場所を選んで予約するだけだ。今回はシーズンオフなのか、「Hotel Hayat」という宿を一泊1,500円程でおさえることができた。もちろん、破格なので嬉しい限りだ。尚、値段の詳細は以下の通りである。

航空券:161,570円(燃油追加料金、空港使用料等込)+座席指定料金として約11,000円
宿泊費:6泊で120ユーロ(約15,000円)


この、座席指定料金が厄介で、ちょっとケチ臭い。今まで色々な会社を利用してきたが、こんなものを徴収されるのは初めてだ。今回はルフトハンザグループのオーストリア航空だが、ヨーロッパの会社はこんなものなのだろうか。尚、支払いはクレジットカードで行うので、予約の確定=支払いの完了である。世の中便利になったものだ(いつもそう思う)。あと、その他旅行で必要な品であるが、今までの旅で購入済であるため、特に用意するものはなさそうだ。

こうして、出発日の1024日を待つ

10月24日(水)
第1日目

1.出発

当日はいつものように実家に前泊しており、朝は515分に起床する。ここ数年は歳のせいだろう、だんだんと早起きになってきているのだ。

新聞に目を通していると「香港とマカオを結ぶ橋が完成」という記事に目が留まる。2017年の3月にダカールに行った際、エチオピア航空の香港経由便を利用したのだが、完成はまだまだという様子だった。昨年、同様にキャセイパシフィック航空で香港経由、オーストラリアに行った際、もうちょっとかなと思っていたのだが、ついに開通したようだ。

今日は735分発のANA338便、中部空港発成田行きに搭乗するので、630分頃には空港に到着したい。ということで、6時前の電車に乗るために530分過ぎにはオヤジの車で家を出発する。いつも当方のわがままに応えてくれる、オヤジには感謝である。

予定通り、556分の電車に乗ることができる。こんなに朝早いのだが、旅行の荷物を持った人々で意外にも混雑している。そうだ、俺もこの人達と同じく、休暇を利用して旅に出るのだ。そう考えると急激に旅立ちの実感が湧いてくる。 空港への橋を渡る頃に、日の出の時刻を迎える。これは幸先が良い、きっと楽しい旅になることだろう。 電車は中部国際空港、通称セントレアに到着する。今日は時間がないので、その足で全日本空輸(以下ANA)の国内線カウンターへ急ぐ。


早朝のセントレアにて

さて、前述のように、今回利用の航空会社は往路が「オーストリア航空」で、復路は「ルフトハンザ・ドイツ航空」である。ただし、成田までの国内線は、同じ「スター・アライアンス」メンバーのANAの便に乗るのだ。

地上係員のおねえさんに挨拶をして、搭乗手続きを行う。E-TICKETの他に、パスポートの提示もお願いされる。。え、成田までは国内線だから必要ないと思っていたので、パスポートをすぐ出せるようにしていなかった。それゆえに、少々モタついてしまう。

理由は何だと思っていたが、それはすぐにわかる。今回は「ボスニア・ヘルツェゴビナ」が最終目的地であるからだ。ここで、さらにビザの取得の有無を聞かれる。もちろん、短期間の旅行だし、観光には必要の無い国なので取得していない。すると「念のため調べてみます」ということで、必要性を調べてくれる。

「珍しい目的地なので、一応調べました」ということだった。なるほどね、事前に関所を設けてくれて、現地で困らないようにしてくれているのか。ありがたいことだが、こんなことで地上職員の負荷を増やすのはどうだろうか。ビザなんて自分で責任を持つことだから、困るようなことがあっても本人の責任だろう。日本の会社はサービスが良いが、それを支える従業員の負荷が高すぎる。もうちょっと切り分けが必要というか、クレーマーみたいな人が増えたことがいけないのだろうか。まあ、それはそれとして、ここで座席の指定もしてもらう。もちろん、指定席である、翼の後方窓側の席24Kを希望し、その通りになった。最後に、スーツケースを預けて、成田までの搭乗券も発行してもらい、これで安心だ。今回は預託荷物はサラエボで受け取ることができるので、楽である。

これでまずは成田まで行けるという安心が生まれ、こころにも余裕ができるう。そうだ、まだ少し時間があるので、スカイデッキへ出て飛行機を見よう。しかし、残念なことに、閉鎖中であった。

そういうわけで、少し早いけど保安検査場へ向かう。ご存知の通り、ここでは金属探知機を通り、規定量以上の液体を持っていないかを調べるのだ。これもだいぶ慣れたもので、時計、ベルト、財布の鎖等を外して規定のカゴに入れる。もちろん、問題無しだ。


いよいよ飛行機に乗るよ

2.まずは成田へ

検査場を通り抜けて、制限エリア内に入る。この辺りまで来ると「いよいよ旅立ちだ」という気分になってくる。売店や案内所を横目に、この旅最初の搭乗口となる9番のゲートを目指して左側へ行く。成田まで乗せてくれる飛行機は、事前の調査で「AIRBUS A320 NEO」だと判明している。果たして9番ゲートには、背の高い翼端板を備えた、真新しい機体が出発準備中である。


JA215A機 成田までよろしく

さて、この機体だが、ヨーロッパのエアバス社が製造・販売するA320シリーズの最新型機で、カタログ上は165人を乗せて6,300kmを飛行することができる(ANAの場合、146席)。また、エンジンは米PW社と仏CFM社から選択可能で、ANAPW社のPW-1100Gを選択している。尚、この件について改めて調べてみると、同エンジンはちょっとトラブルがあり、そのため機体の出荷が遅れているそうだ。そのため、ANAが発注した33機の内、まだ6機しか納入されていないようだ。因みに、今回搭乗するJA215Aは、320型として8253番目に製造された機体で、今年の7月に登録されたばかりの「ピカピカの新車」である。さらに余談だが、ダカールに行った際、帰国後に成田~名古屋間ではこの型の機に乗る予定だったのだが、ダカール出発は6時間以上遅れたので、乗り逃している。

そんなことを思いながら、ジロジロと機体を眺める。このNEOは従来型のCEOと比べて、エンジンの径が圧倒的にでかい。これにより騒音の低減と推力の向上、さらには燃費の改善までできるわけだ(詳細は割愛)。

さらに、沖の方へ目をやると、セントレア名物のDHC-8の揃い踏みだ。今日は5機も並んでいる。その向こうにIBEXCRJ700ANAB737-700、スカイマークの-800、そしてエア香港の747-400BCFが並んでおり、機体の大きさを容易に比較・理解できる。また、ゲート、沖の駐機場を含めて、20機程度が羽を休めている。朝のセントレアは意外にも賑やかだ。


セントレアの朝の風景

写真を撮りつつゲート付近をウロウロした後、備え付けのパソコンで、この旅で乗る予定の飛行機の機首を調べておく。おや、帰りにはエンブラエル195に乗れるかもしれないのか。既に頭の中は空を飛ぶことでイッパイになっている。

そうこうしていると、715分頃に搭乗開始の呼び出しがかかる。これもいつものことだが、最初は小さい子供がいるなどの人、そして高いかねを払った人、あとは機体後方の席から順番で呼び出されていく。今回当方はグループC(前の方)なので、最後の搭乗となる。

機内は新車のにおいがしており、ピカピカだ。ええと、俺の席、24Kはと。ありました。席に着き、窓から外を見る。翼越しにスカイデッキがよく見えるじゃあないか。スカイデッキから飛行機を見ることはよくあるが、今回は逆だ。そうだ、俺は今飛行機に乗っているんだ。もう、旅の気分は最高潮である。ふと、俺は夢をみているんじゃあないか、と疑ってみるが、これま間違いなく現実だ。


いよいよ出発!

ドキドキしていると、735分の定刻にドアが閉まり、牽引車による移動が開始される。さようなら、セントレア。また来週。

3.成田へ

 プッシュバックが始まると、ふと我に返る。そうだ、俺は今からボスニアに行くんだ。あの、サラエボに。普段ならば仕事に行く時刻だが、今はセントレアから成田へ行く飛行機の中にいるんだ。夢ではなかろうか。そう思い顔をつねると・・・「痛い」ということは、夢ではないんだ。 昨日は仕事の取扱量が7万通を超える、大変忙しい日であった。それなのに、今日はこうして優雅に新品の飛行機の座席に座っている。こういう状態を「夢心地」って言うのかな。

窓から北側に見える、若い番号のゲートには日本航空(以下JAL)の「ジンベイジェット」が見える。また、左の第1エンジンが先に始動、次に右の第2エンジンも動き始める。エンジン音がかなり静かなことに驚かされつつ、機は自力で進み始める。駐機されているB787が見え、さらに機は誘導路に入る。滑走路側を見つつ、R/W36の端の誘導路へやってくると、同時刻で出発であるIBEX大分行きが離陸滑走をしているのが見える。このパターンはダカールに行った時と同じだな。


国内線側駐機場の様子

IBEXCRJが行った後、当機も滑走路に進入して中心線と正対する。本来はここで一旦停止(Line up and wait R/W36)するのだが、今回は離陸許可が既に出ていたようで、そのまま滑走を開始する。いわゆる、ローリング・テイクオフってやつさ。

ここで加速Gに備え、顔を前に向けて首に負担がかからないようにする。新型のエンジンが回転を上げて数秒後、ブレーキが解除されたようだ。強烈な加速Gを感じつつ、機はどんどんと加速していく。それにしても、このPW1100G、ギアド・ターボファンエンジンは静かである。それもそのはずで、推力を発揮するエンジン最前列にある「扇風機(ファン)」は遊星ギアで減速されていて、適度な回転数に抑えられているからだ。さらに、エンジンのコアセクションを通過しない空気、いわゆるバイパスエアとそうでない空気の比率(バイパス比)は12:1にもなるそうだ。また、機体表面も風切音を小さくするよう、なめらかになるような工夫もされていることだろう。

頭の中で能書きをたれていたら、機は離陸決心速度V1を超えて、機首上げVRから離陸速度のV2もアッと言う間に超えて、ギューンと離陸していく。窓からは先ほど見えたDHC-8達、香港エアの747がチラリと見える。今日は意外にも滑走路の3/4近くを使ったようだ。


貨物地区の手前で離陸

離陸後は左旋回して、機首を東(090)ぐらいに向けていく。おっと、そうだ。せっかく備え付けてある、モニターで自機の位置を確認しておこう。このJA215Aは近距離の国際線用なので、大き目の個人モニターが各座席についているのだ。ちょうど内海の上空を飛んでいて、知多半島を横切っていくようだ。この段階で高度は制限値の10,000ft3,000mぐらい)で、速度は300ノット(550/h)ぐらい出ているらしい。成田までの距離は350㎞ぐらいだから、あっという間に到着しそうだ。


さすが、最新型機のモニターは見やすい

この後高度制限は解除されて、雲を切り裂いてぐんぐんと上昇していく。切れ間から渥美半島の先、恋路ヶ浜、浜松が見える。そして、焼津付近では23,000ft8,000m)程度まで達し、巡航に入る。ベルトサインも消灯となったこの頃からドリンクサービスが始まり、いつものようにリンゴジュースを頼む。エベレスト程の高さで、雲を下に見て飲むジュースは格別だ。いや、この非日常の景色がジュースの味も変えてしまうのだ。

今日は雲が多く、時々切れ間から景色が見える程度である。そうか、俺はついにボスニア・ヘルツェゴビナへの第一歩をふみだしたのか。そう思うと、またしも夢ではないだろうかという気になり、再び顔をつねる。だから、夢じゃあないんだって。どうして何回もそんなことをしているのか。それは、きっと以下のような紆余曲折があったからだろう。

昨年、やっと再就職できたと思っていた矢先に、経営者がとんでもない人格者?であることが発覚し、結局半年で辞めることになった。その後、なかなか職が見つからず、結局4月から、今の配達のバイトを始め、現在に至っている。バイトの身分で、旅の資金が集まるか心配だったし、うまく休みをもらえるかも不確かだった。しかし、その両方を克服して、職を失うことなくこうして旅に出ている。昨年の状況からは想像もできないくらいに、うまくいったわけだ。

そういうこともあり「今、成田空港行きの機上にいる」ことが、当人でさえも信じられないというわけなのだ。

伊豆半島を過ぎる頃には、既に当機は降下を始めていて、19,000ft5,800)とモニターが表示している。また、相変わらず雲が多いのだが、それが太陽に照らされていて、きれいな雲海となっている。これはこれでオツですなぁ。


伊豆半島沖の上空付近は雲でびっしり

房総半島上空を過ぎて、左旋回すると「着陸態勢に入ります」と機内アナウンスが入り、再びシートベルト着用のサインが点灯する。今日の成田のR/W34L34Rのようだ。この場合、着陸は右側の34Rとなる場合が多い。こちらは手前に未買収の土地があるので、2,500mとなっている。因みに34L4,000mとフルスペックである。九十九里浜の上空を通過する際、晴れていればその綺麗な海岸線が見えるのだが、今日は雲が多く全く視界がきかない。モニター上で通過を確認するのみだ。そう思っていると雲の中に突入し、ガタガタと揺れ始める。

フラップが出されてどんどんと高度を下げていき、操縦舵面が細かく上下する。揺れに対してパイロットがサイドスティクを操作しているのか、オートパイロットが補正しているのかわからないが、間もなく着陸で緊張感が漂ってくる。

厚い雲を出ると、既に空港のオーバーラン用地の上にいる。「空港も余り天気がよくないなあ」と思っていると、軽い衝撃が伝わってくる。車輪が接地したようだが、この直後にスポイラーが立って強烈な減速Gを感じる。320NEOは加速もブレーキも超強力だ。 予想通りにR/W34Rに着陸したようだ。誘導路で向きを変えて、ターミナルの方へ進んでいく。最初に見えてくるのはLCC各社が利用する第3ターミナル、通称3タミで、ジェットスター、ヴァニラの機が多く留め置かれている。

さて、今日は3回目の成田だが、この風景を見ると「成田にやってきた」と実感でき、いよいよ日本を出るんだと気持ちが高まってくる。もちろん、中部国際空港からも日本を出ることはできるのだが、成田には独特の雰囲気があり、いかにも海外旅行に行くと言う気持ちを盛り上げてくれるのだ。


久々の成田 3タミ

次に2タミが見えてくる。こちらは「ワンワールド」と「スカイチーム」が利用しているターミナルで、JALがその代表だ。昨年、オーストラリアに行く際に利用したキャセイパシフィック航空もこちらの仲間なので、同社B777なんかも見ることができる。



2タミ

一方、全日本空輸は「スターアライアンス」のメンバーなので、この向こう側にある1タミにスポット・インするのだが、アナウンスで「55」だと知らされる。尚、セネガルに行った際のANA338便(この便と同じ便)も同じスポットに入ったので、この時刻の名古屋~成田便はここに入るようになっているのだろう。時計を見ると845分であり、まったく時刻表通りである。定時運行率の高い航空会社である、ANAは恐るべしである。参考までに「FLIGHTSTARS」というサイトによれば、2017年の定時運行率は

1位:デルタ航空 85.9
2位:日本航空 85.6
3位:全日本空輸 83.8

となっている。つまり、ほぼ世界で一番正確な運行をしている会社のうちの1つというわけだ。今日はその実力を存分に発揮したと言えるだろう。


1タミ55番スポットが見えてくる

スポットに入った後、他の乗客はいそいそと機を降りようとしているが、当方は急いでいないので、窓から「建設反対の塔」などを見てくつろぐ。成田空港なんて、そうそう頻繁に来ることができないので、隅から隅まで楽しんでいこうではないか。

いい加減他の客が少なくなってきた頃に、頭上の荷物入れからリュックを出して出口に向かう。ちょうどCAさんが忘れ物の点検に来たので「どうもありがとう」と会話をする。こんなことも、そうそうあることではないからね。

搭乗橋を渡れば成田空港の第1ターミナルだ。次に乗るオーストリア航空52便、ウイーン行は1335分発なので、それまで空港を楽しもうではないか。

第1日目 その2へ続く 

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