安全運転について

 

 

管理人と故ノリック氏

 

(ご冥福をお祈り申し上げます)

序 章

 

ノリックこと阿部典史氏がおそらくT-MAXと思われる大型スクーターで交通事故により亡くなった。享年32歳。これから円熟の境地へ入り、活躍が期待されただけに残念だ。これがレースではなく、公道だったことが管理人に筆をとらせた。管理人には思うところがあるのだが、ともするとお節介、余計なお世話、バイクの楽しみ方は自由だ、お前に言われる筋合いはない、といった批判を受けることが目に見えているので、敢えて封印していた。さて、前出の事故だが、日本の報道によると、(英国の報道とは異なる)Uターン禁止の場所でUターンしていたトラックに衝突したというものだが、そんなことでも一流レーサーが死亡してしまうものなのだと思うと正直バイクに乗ることが怖くなってしまう。もっとも人間なら油断してしまうことがあるし、スクーターに乗っていたので、クラッチ操作のつもりでリアブレーキレバーを握ってしまったか、エンジンブレーキを併用できなかったことが致命傷になった可能性もあるので、神経質になる必要もなかろうが。

 

1 章 「公道における交通事故の実態」

 

ところで、交通事故はどこで起こるものだろうか。どこでも起こりうることは間違いないが、7割は交差点で起こるものらしい。なるほど、飛び出し、右直、左折時、危険要因はほとんど交差点だ。ノリックの事故もおそらく交差点であることが想像されうる。ところがどうだ、交差点7割という数字は意外にも知られていないように思われる。事故=スピードの出しすぎと言う人が多いことは言うまでもないし、またこういう人程このような科学的事項には疎い場合が多い。じゃあ制限速度を守れば事故は減らせるのか。答えはノーと言い切っても問題ないだろう。というのも、事故の大半は交差点で起きている。そこには危険因子が詰まっている。そう考えれば、制限速度を守っていてもすごいスピードで右折、左折をすれば非常に危険だからだ。実際、トロトロと走っていてもぜんぜん周りを見ないで右左折、車線変更などをする人も結構いる。私の母方の家の叔父が典型だ。そういう人ほど制限速度云々という人が多い。こういう事実をまず把握し、感覚だけでどうのこうの言うことは絶対に止めなくてはいけない。

まだあるぞ。2輪車の事故と4輪車の事故とどちらが多いか?断然4輪車に決まっている。まず新車の出荷台数を考えればわかることだ。2輪車は70万台程度だが、4輪車は600万台くらいはある。実際事故件数は4輪車の10分の1程度であり、新車の出荷台数とほぼ比例する。もっとも事故が起きた際の死亡率は2輪車の方が高いことは否めないだろう。詳しい資料がないのでなんとも言えないが、このあたりを混同してしまうと議論にならない。

 

2章「二輪車は公道上でどうあるべきか」

 

前述のような理由で2輪車だけが危険物扱いされるのはたまったものではない。しかし、実際に危ないことをする輩がいることも事実である。複数車線にわたって4輪車の間を縫って走行する者、突然割り込みをしてくる者、反対車線に飛び出してくる者(これは2輪車に限らない)など数え上げたらキリがない。では、逆に我々2輪車乗りはどうすれば安全に、かつ楽しく走れるのであろうか。故ノリック氏の事故が街中であったので、今回は街中に限って考えてみよう。

街中での走行では、原則流れに乗っていれば問題ないと思われる。ただし、ある程度目立つようにしておかなくてはならないだろう。というのも、交差点などでは4輪車の陰に入ってしまい、見落される可能性が高いからだ。2輪車用上着が比較的派手な色使いをしていることにはこの意味が含まれているのであろう。また、排気音は少々大きい方が良いとも思う。ホンダのバイクでは静か過ぎると思うことがしばしばだ。マフラーを交換することを薦めているわけではない。すり抜けの際などに、ちょっとアクセルをあおったりすることもまた、認識されるための技術ではなかろうか。

前照灯を点灯していることは当たり前だ。現在のバイクにはそれ用のスイッチが無い。ブレーキも23回点滅させてやることが必要だ。教習所でも言われた経験があると思う。ところで、ライトの役目というと、暗い時に前を照らすということが主であると思っている方が多いと思われるが、他者に存在を知らせるという役目もかなり重要だ。管理人はその役目は半々であると考えている。皆さんはいかがだろうか。

単独で走る場合は常識的な速度で、複数車線がある道路では真ん中の車線をこれまた常識的な速度で走ればよいと思う。常識的な速度って何km/hだという質問は、管理人には答えられない。自分のマシンとその時の状況で変わってくるからだ。

共通して言えることとして、前走車があれば右側に走行ラインをずらす、また単独時でも車線の右側が良い場合が多いのではないだろうか。左からの飛び出しに有効と思うからだ。自分の姿が、前走車のドアミラーなどに映るようにすればよい。余談だが、白バイはこの逆のことしている。わざわざ死角に入って速度を計測し、回転灯とサイレン。いやらしい。管理人は速度を上げる場合は左右後方を確認している。またこちらが積極的に他の車両の動きを予測することも重要であろう。最近はメーカー純正の窓ガラスでも色付きの場合が多いので確認が難しいが、運転者の顔の動きは大きな手がかりとなる。もっとも何の前触れもなく動き出す御年配の方、女性の方もみえるので、他車両の横には並ばないことが大前提である。それとタイヤの動きもその車の次の動きを示唆してくれる。

 

3章 「まとめ」

 

簡単な安全確認のツボと自衛策を示してみた。これを実践していると一つ大事なことに気がつく。視線だ。前方を見ていることには変わりはないが、細かく移動しているはずだ。しかも、遠くを中心に、近くも見ている。そう、ワインディングのみならず、街中でも視線は重要なのだ。ただ、その特性というか、様式が違うということだ。全く話は違うが、語学と聞くとイコール「話す」と考えている方が多いと思われる。語学には4技能といって「話す」、「聞く」、「読む」、「書く」がある。これらをバランス良く習得し、必要に応じて選択して勉強することが必要なのだ。日本にいる限りは「読む」と「聞く」ことが中心となると思う。他はどこかへ出かけるなど、必要な時に行えばよい。つまり、「今の学校教育の方針は絶対におかしい」とここに断言できる。たとえば、日本にいて英語ができないから困ったという経験をされた方はどのくらいいらっしゃるだろうか。ほとんどいないと思う。「道を聞かれて困った」という方、それは相手の努力不足も考える必要がある。日本に来るのだから日本語は勉強して来いと。我々日本人だって、外国に行けばその国の言葉で話そうと努力する。郷に入れば、郷に従えだ。

話が大きく逸れたが、つまり、運転でも様々な分野があるということだ。2輪の運転、その中に街中の運転、ワインディングの運転、ダートの運転。そしてそれぞれに特徴的な技術が含まれるわけだ。それを日々考え、安全運転をしていこうと考えれば「速度の出しすぎに注意」という句は安全の単なる、小さな一要素にすぎないことに気がつくことだと思う。安全運転は複合的技術の結晶だと言えよう。

かく言う管理人も自損事故でバイクを破壊してしまったことがある。以上に書いたことは管理人自身に対する戒めであると考えていただきたい。また、これらを実践したからといって事故に遭わないわけでもない。ただ、科学的に事故を見つめ、経験的に技量を高め、少しでも事故を減らすことができればと考えているだけだ。

 

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