北海道紀行2(2006年7月29日〜8月4日)

 

                                                     

    R1-Z氏                                                                                                                    管理人

 

序文

 

いよいよやってきました。12年ぶりの北海道ツーリング。思い起こせばこの12年間、二台のマシンを乗り継ぎましたが、一度も北海道へは渡っておりません。四国へ一時移住したり、就職等で距離、時間の都合がつかなかったのだ。しかし、友人R1-Z氏の20年越しの想いと私の再訪問を実現すべく計画は実行に移されたのだ。

計画の発端は2006年第一四半期に遡る。もっとも私が同氏とツーリングするようになった2001年頃からおぼろげな考えはあったが、実行可能な具体的計画が持ち上がったのは今回が初めてだ。いつものように氏と温泉に浸かりながら仕事のあるべき姿(おおげさだ)を語り合っていると「今年は取引先が閑散期になるから懸案の北海道ツーリングを実行したいなぁ」と管理人は持ちかけられた。私は12年前に3週間の日程で北海道をおおよそ二周しているので、えらそうにうん蓄や能書きを氏にたれた(R1-Z氏は当方よりも6年先輩だ。いつも偉そうにしている私の話を聞いてくれる実に人間のできた人だ)。残る問題は二人の仕事の都合のみだ。ここさえ解決すれば実行可能という結論に達した。

いろいろと問題があり、計画実行に暗雲が垂れ込めたこともあったが、出発1週間前にGO!!サインが出された。フェリーの手配、キャンプ道具の点検、荷造りと仕事なんてほとんど上の空であった。氏も会社側にうまく寝まわしをしているようだった。

 

第1日目

 

出発だ。仕事を定時までこなし、帰宅して早速愛機TDM900に荷物を積み込む。我が愛機は本当に優れものだ。シートフレームの他にタンデムステッププレートにも荷がけ用フックがある。リアキャリアも装備しており、積載性は高い。しかし、スポーツ性に貢献する車体のスリムさが積載性にややマイナスになるのは残念だ。もちろん問題が出ることはない。

本日の走行はフェリー乗り場の京都府の舞鶴まで、およそ200km。普段の我々の距離感覚から言えば「軽い」部類に入る。しかも高速メインの走行だ。楽勝だと思いっきり油断していた。

準備万端でTDMの点検整備をしているとR1-Z氏登場。氏は多泊のスーパーロングツーリングは初めてで気合が入っている。数年前に初のキャンプツーリングを手ほどきした際のツーリングバッグに満タンの荷物をリアシートに携えている。落ち着かない様子で足が浮いて見えたのは管理人だけだろうか。一通り荷物、マシン、道程の確認をしていざ出陣。東名高速に乗り、北陸道を経て敦賀インターを目指す。磁方位は関ヶ原まで270、そこから350といったところだろう。TDMもすこぶる快調だ。R1-Zもいい音出てます。

サービスエリアで軽い夕食とルート確認。ここで氏がやや焦っている。どうやら私の時間計算が間違っているらしい、と私はまだこの段階では事の重要性にあまり気が付いていなかった。ちょっと遅れかな?という程度の認識だったのだ。この甘い認識が後にちょっとした事件に発展してしまう。天気もなんとかなりそうだし、いい具合だと呑気に構える管理人であった。さて、計画通りに関ヶ原から北陸道で敦賀へ。途中遠くで稲光が見えたのでドキッとし、敦賀のサービスエリア付近では期待外れの雨。やられたよ。駐輪場でカッパを着て、R1-Z氏は燃料補給。スタンドの人の話によると「舞鶴までは2時間はかかるよ」とのことだった。ん?そんな馬鹿な。走行時間5000時間以上を誇る私の読み間違えか。だんだんと事の重要性を認識しつつ、国道27号線へ。すると「舞鶴80km」の表示。すでに時間は午後10時を回っている。フェリー出航は午前0時45分。一時間半前に乗船手続きを終えなくてはならない。あと1時間しかないジャン!!「えらいこっちゃえらいこっちゃよいよいよいよい」と全員集合の前半エンディングが耳元で鳴り響く。途中若狭舞鶴自動車道を挟んで大激走。雨は強くなるし、気は焦るし、かつを風味のほんだし。相当に危ない走りをして舞鶴西インターで降りる。本当は舞鶴東インターで降りるはずだったのに。また間違えた。R1-Z氏は必死にアピールしていたようであるが、まったく意に介していませんでした。何が5000時間を誇るだ。アホ。とにかくこの時点で時間切れ。11時15分。フェリー埠頭に電話すると、0時までには到着して下さいとのこと。それなら十分間に合う。途中のコンビニで買い出しと休息。

 

 乗船前のR1-Z氏

 

R1-Z氏は最初から私の時間計算がおかしいことに気が付いていたのだが、何せ5000時間だから言い出せなかったらしい。申し訳ありません。一生の不覚。

ともかく、11時45分には埠頭に到着、乗船した二人であった。ドッと疲れて、風呂に入って爆睡。

 

本日の走行 250km

 

第2日目

 

二等船室はご存知のとおり雑魚寝である。                                    

 

  新日本海フェリー「はまなす」二等船室にてくつろぐ管理人の図

 

よって、起床時間は自ずと回りの乗客と同じになる。ところで、今回利用したフェリーはライダー御用達の新日本海フェリーだ。安くて快適と好評だ。日本海は揺れるのでは、と思われているがどっこい、夏は台風の影響で太平洋の方が揺れるのだ。しかも太平洋を航行するフェリーは地元から出航しているが、値段的に4割ほどは高いときている。ライダーが日本海のルートをとるのはこのような理由があるからだろう。さらに朗報。2004年からはフェリーが新造船となり、巡航速度は時速約30ノット(1ノットはおよそ1.852km/hで、地球上の経度1分に相当する)と猛烈な高速船となった。なんでもIHI製エンジンを搭載しおり、最新鋭の技術を用いているらしい。約20時間で小樽に到着する。12年前は30時間はかかったと思う。甲板に出てみるとぱらぱらと雨が降っているが、進行方向は晴れている。新潟沖で雲が無くなり、晴れてきた。おそらく梅雨前線を越えたのであろう。湿った空気も一気にさわやかな風に変わった。いつも山へ走りに行くと、途中で空気の温度や湿度が変わる瞬間に遭遇する。何度も経験していることであるが、とてもうれしい。因みに匂いも変わることを付け加えておこう。嗅覚、触覚で気候を感じるのはツーリングライダーの特権であろう。これだからロングツーリングは止められない。

 

 甲板から見える奥尻島の図

 

朝風呂に入ったら、次は飯だ。ケチなことは言わないで朝食は船のレストランで摂る。ライダーはたいていコンビニで弁当を持ち込むのだが、管理人はどうもあの薬臭い食べ物が苦手だ。パンばっかりも飽きるしなぁ。レストランの朝食はバイキング形式で食べ放題。普段貧しい食事しかしていない管理人にとっては何でもご馳走。いささか食べすぎか。飯の後は甲板で氏と計画について語り合う。こういう時間もまた旅の醍醐味だ。普段から締め切りに追われている我々だけに船旅はまさに至高の時といえよう。延々とうん蓄をたれる管理人であった。

さて、フェリーは午後8時に小樽に到着する。12年前にこの港から帰路についた。また来ようという思いをやっと実現できた。心の底から湧き上がる感動というか、嬉しさというか、なんとも表現しがたいこの気持ち。ツーリングではこういう気持ちをしばしば覚えるものだ。さて、この時間からは走るのは危ないので、あらかじめライダーハウス「おしょろ」さんを予約しておいた。およそ15分程積丹半島方面へ走るとおしょろさんはあった。我々が当日は最後の到着者であった。バイクを建物の裏の小高い場所へ止める。すると宿の車でそこへの入り口を封鎖した。なんでも以前、バイクを盗まれそうになったことがあってから警戒を厳重にしているらしい。北海道の治安も確実に悪化の一途を辿っているようだ。さて、晩飯におしょろ特製塩ラーメンをいただく。カニ、わかめ、他10種類ほどの具が入っており、スープもあっさりしていて旨い。しかも化学調味料独特の舌にピリピリと感ずるあの感触もない。きっと手間ひまかけてとったダシを用いているのだろう。あっという間にごちそうさまでした。さて、その後山口から来ていてたXELVIS氏と語り合う。毎年この時期には必ず北海道に来て、おしょろさんに泊まるらしい。談話室というか、宿の管理者夫婦の居間というか、そこに場を移して話をし、結局消灯時間まで話し込んだ。彼は翌日に帰るらしい。今年は北海道警察の偉い人が交代したらしく、取締りが厳しいぞと情報を得る。もともと北海道は我々愛知県と交通事故の死傷者数を争っており、長野などとともに取締りが厳しいことで知られている。そこへ輪をかけて厳しいとは、相当な注意が必要であろう。明日からの本格的走行は十二分に気をつけねば。

 

本日の走行 10km

 

第3日目

 

おしょろでは起床時間も決まっている。朝飯が付くからだ。メニューはやや塩辛いものが多く、ご飯がすすんだ。ツーリングには思った以上に体力、集中力が必要なのでしっかり食べることが大切だ。飯の後は出発準備と記念撮影。宿の奥さんとご主人を囲んでパチリ。それにしてもこのお二人、かみ合っている。長年連れ添っているとはまさにこういうことであろう。円熟の境地だ。管理人にはとてもまねできそうにない。すでに破局もしていることだし。

 

 「おしょろ」前にて出発準備するR1-Z氏の図

 

天気は快晴、R1-Z氏と行き先を検討する。氏は一周したいらしいが、それは1週間では無理な要求だ。道東へ向かうか、道北、道央の半分を回るか、どちらかを選択せざるをない。北海道といえば最北端ということで、後者を選択することとなる。おしょろを後にして、燃料補給。北海道でガソリンスタンドといえばホクレンだ。旗と地図兼スタンプ用紙をもらい準備完了!。Fly heading 360。まずは札幌の市街地を迂回して日本海側を走る。天気が良すぎて暑いくらいだ。そういえば12年前も暑かったなぁ。感慨深く思い出しているともう昼だ。コンビニで済まそうということで、北海道のコンビニといえばセイコーマートに決まっている。例に漏れず同コンビニで調達し、海を見ながら作戦会議。このペースだと稚内までは無理そうだ。手前の手塩あたりか。それにしてもペースが上がらない。黄色線はもちろん、白破線でも追い越しは慎重に。おしょろのXELVIS氏や、各所で出会う仲間ライダー達に散々取締りの話を聞かされているからだ。余談だが、北海道では回転翼機を使用した違反者追跡をしているとまことしやかにささやかれている。12年前も同様だった。しかし、先のXELVIS氏の意見では「そこまで金をかけるか?」というものであった。確かに、同感である。たかがライダー一匹にそんなもの使うのか。真相はなぞのままである。

おお、そう思っているとものすごい勢いで追い越しをかける二台のカタナ。250には女性、400には男性が乗っている。我々も我慢の限界だ。彼らの先導で後を追う。カタナペアはまさに切れ味バツグン。思い切りが良いのか、命知らずか、特に250カタナ女史は名刀遣いだ。我々ペアも遅れてはならずと右手に力が入る。TDMはこういう中間加速は最も得意としている。3500回転以降の吹け上がりはロングなギア比と相まって最高だ。おっと、前に遅い車が詰まっている。ブレーキも非常にコントロール性が高い。絶対制動力はスーパースポーツの比ではないが、とにかく扱いやすい。素人ではこっちの方が結果短い距離で止まれそうだ。ヒョー、R1-Z氏が飛んでったぁー。と思ったら煙幕だぁ〜。彼はいつも「狼煙」をあげてかっとんで行く。2ストロークエンジンのパワーと250ccバイクの軽さとを最高に引き出している。直線もさることながら、コーナーの彼は光っている。

旗を吹き飛ばしそうな勢いで手塩の道の駅に到着。ふるさとの森 森林公園でテントを張ることに決める。場所は住宅街の外れの公園といった趣で、裏手には中学校がある。雰囲気が今ひとつであるが、誰もいないし、無料なのは良い。早速テントの設営だ。管理人は年に1回はテントを開いているので、それなりに張る。しかしR1-Z氏は数年前に開いて以来だ。悪戦苦闘しているところを手伝う。近くのスーパーに買出しに出る。管理人はキャンプではあまり凝ったことはしない。レトルトか、ちょっと焼いて食べられるものを買い、ご飯を炊く。あとは果物の缶詰で締める。それにしても北海道の魚売り場はすっごいよぉ〜。全長40cmくらいはあろうかと思われるホッケが3枚で300円ちょっととか、カニなんかでも地元ではまず売ってないような品物、値段で並んでいる。購入して食べようと思ったが、小さなコッヘルセットとコンロしかないので無理。後ろ髪を引かれてキャンプ場で支度にかかる。米を炊くのは私の担当。(ちょっと威張っている)それにしても外で食べるレトルトカレーの旨いこと。なんででしょうか。疲れていたが、興奮していて、結局またも夜更かししてしまう。

 

北緯45度看板にて

 

本日の走行 350km

 

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