北海道紀行5 

(2010年8月12日〜8月21日)

 

フェリー「はまなす」のカフェ前にてくつろぐ管理人

 

第1日目(8月13日)

 

1.船旅

 

翌朝は8時頃に目が覚めた。久々によく眠れ、気持ちの良い目覚めだ。今は既に海の上、新潟沖を速力30ノット(=55/h)で航行中とアナウンスがあった。ところで、今回乗船しているフェリー「はまなす」は全長が200m以上もあり、動力は12,600kW(=17,000ps)の船舶用ディーゼルエンジンを2基、そして17,600kW(=24,000ps)の電力駆動のモーター?を1基備えている。つまりは今流行の内燃機関と電力装置のハイブリッド型というわけだ。因みに舵は舵取り板を使用しておらず、スクリューを備えている、円筒形のポッドと呼ばれるものが水平に360度回転する仕組みになっている。これにより、大型船舶でもさらに小回りが利くようになったそうだ(Wikipediaの記載を参考に記載)。

 

昨日はあまり飯を食べていないので、食事をすることにする。やはり腹が空いては的確な運転はできないし、体力も維持できないからね。ところで、毎回申し上げているが、当方はコンビニ弁当があまり好きではないので、フェリーのレストランを利用する。朝は1,000円でバイキングである。特に野菜や果物を多く食べることができるので嬉しい。普段の食事が貧しいので、こういう時くらいはたっぷりと食べておきたい。

 

おや、こちらの航路の方が料理の種類が多いように感じるが、気のせいだろうか。もっとも、昨年の敦賀航路の食事と比べているので何とも言えないのだが。いずれにしても、近年の原油高騰でフェリー会社の経営も厳しくなっており、いろいろと経費を節約していることだろう。しかし、サービスの質を明らかに落とすのは残念と感じていたが、今年はそのあたりを考慮してくれたものと思われる。

 

結局、洋食と和食とを合わせて2人前ほど食ったので大満足だ。この後はサロンに移動、ここにあるコンセントを用いて、カメラの電池などを充電しつつ、地図や0円マップを眺めて走行計画を練り始める。この船は寝台にコンセントが無いのだ。当方はカメラさえ動いてくれれば問題はないので、それほど痛手ではない。

 

さて、本題の計画だが、まあ天気の都合なんかもあるので予定は未定だ。ともかく、今まで訪れたことのない場所をチェックする程度にしておく。そうこう考えていると、なんだか眠くなってきた。寝台に戻ろうかと思っていると、なにやら大きなスーツケースを転がしたニイチャンがヒョコヒョコとやってきた。そういえば、何か催しがあると張り出されていたなぁ。ついでに観ていくとしよう。ところでこの人、ジャグラー「ここあ」という大道芸人らしい。帰宅後調べてみると、日本でも有数のジャクラーであるようだ。

 

準備をしながらすでに芸人らしい言動をして、周りの人にさりげなくアピールしている。そしてショーが始まり、リアデッキに面しているカフェ前のスペースは、いつの間にか人でいっぱいだ。

 

こういう芸人は本業の技はもちろんだが、司会進行のトークにもおもしろさが求められる。なんとも大変な職業だと思うが、本人は至って楽しそうに、また時折危なかしい動きで観衆を退屈させないようにして、どんどんと難しい技を披露している。圧巻はこん棒とボールの混合ジャグリングで、見ている方は何がどういう風に回っているが全くわからない。おいおい、スーツケースの上に円筒と板を乗せて、さらにその上に乗ってバランスをとりながら芸をしているぞ。さらにわざと危なかしく見せて、場を盛り上げている。なかなか観ごたえのあるショーだ。

 

芸を披露する「ここあ」氏

 

さて、ショーを見終わって寝台に戻り、バイクの乗り方なんかを復習しておく。ともかくニーグリップが甘いとふらつくし、ふらつくと足をつく時に倒れやすい。また、リアブレーキも車体の安定性には欠かせない装置である。大きな荷物を搭載しているので、特にこの辺りに注意が必要だ、などと当たり前のことを考えているうちに眠ってしまった。

 

目が覚めたら既に15時30分頃になっている。今夜の宿を決めておかなくてはいけない。小樽の天候は晴れとアナウンスがあり、翌日も天気が良いようなのでテントを張っても良さそうだが、不慣れな土地で、これまた不慣れなテントを張るのは面倒だ。そこでいつものようにライダーハウスを探してみると、2006年に利用した「おしょろ」の近くに、「渡り鳥哲也」という注意を引く名前のライハを発見した。料金は1,500円で、ちょっと高いと思うが、今年は小樽の鱗友市場で朝飯を食べたいので、こちらに決定した。電話を入れると詳しく行き方を教えてくれたので、これでよかろうと思った。因みに「おしょろ」も悪くはないのだが、朝飯が料金に含まれている。今回はこういった理由で遠慮したが、こちらも食事の量や味という観点で見てみると悪くない選択だ。

 

朝飯を食べ過ぎて昼飯を食べられなかったが、晩飯は食べた方がよさそうだ。そこで夜も営業しているフェリーの食堂で、軽く夕食を摂っておく。海鮮ホイル焼きがなかなかよかった。

 

食事を終えて、最後尾にあるオープンデッキに出てみると、風が涼しく、北にやってきたと実感できる。いよいよ明日から本格的ツーリングが始まるんだとニヤニヤしていると、昼にショーを行っていたジャグラー「ここあ」氏が芸の練習をしている。なるほど、昔あるピアニストが「一日練習しないと自分でわかり、3日練習しないと観客にわかってしまう」と言っていたことを思い出した。ここあ氏に話しかけて、この話をしてみると「それはプロ中のプロで、当方のような者はその領域に達していない」とのことであった。また、大道芸は「微妙な感覚やタイミングが重要で、そいういう重要な点を押さえつつ、練習を常に怠らないようにしないといけない」とも言っていた。楽な仕事は無いというわけだ。

 

また、デッキには例の「太鼓野郎達」が、大きな音でポンポコやりながら首をヘコヘコさせて踊っている。ジャグラー氏の方には皆が目線を向けているが、太鼓の方には無関心だ。いや、気にはなるけども、ジャグラーの方が面白いので、結果無関心であるのだろう。

 

2.上陸

 

こうして楽しい時間を過ごした後、いよいよ小樽港へ入港の時間が近くなってきた。寝台へ戻って荷物をまとめ、忘れ物がないかをよく点検する。そして、車両甲板への入場規制解除の案内を待つ。いや、実際には待ちきれないので、出口と寝台を数回行ったり来たりしてしまった。落ち着け、と「停電の時のいかりや」のように、自分に言い聞かせる。

 

そうこうしていると、いよいよ車両甲板への入場規制が解除となり、下船の半券を係員に渡して狭い階段を降りていく。周りのライダー達も上陸の興奮を抑えられないようで、足早に自分のマシンへ向かっていく。そして荷物を搭載し下船許可を待つのだが、この間がいつも苦痛だ。というのも、先に四輪車が下船するので排ガスを浴びることになるし、さらに熱気がこもって非常に暑い。これだったら、昔のように全部出払ってから2輪が下船する方がマシのような気がする。

 

 TDM900 車両甲板にて

いよいよ上陸だ!

 

ちょっとそんなことを思いつつ、タラップを慎重に下りると、いよいよ小樽に上陸だ。去年、一昨年は何も無く、真っ暗な苫小牧東港での上陸だったので、賑やかな小樽港はホッとする。これだったら行きは小樽港で上陸、帰りは苫小牧東港から、自宅により近い敦賀港で本州に戻る方法が、より一層良いと思われる。

 

こうして、無事に北海道に降り立ったわけで、今日は予約しておいた「渡り鳥哲也」へ向かう。ところで、今年の夏は猛暑が続いており、当方の住む地方は特に暑い。それにひきかえ、この北海道の涼しさ。んー、さっそく北国の香りを味わうこととなった。

 

運河沿いの出店が並ぶ地区を抜けて、国道5号線へ乗り、渡り鳥を目指す。予約の電話を入れた際に「トンネルを2つ抜けたら左手に回転灯とノボリがある」と教えられていたのだが、トンネルなのか高架橋のアンダーパスなのか、わからないものがいくつかあり、結局「おしょろ」の手前まで来てしまった。これは行き過ぎだと思い、県道、いや道道956号線で戻って「勘」で探そうと思ったが、土地勘が無いところで勘は働かない。仕方ないので一度小樽の市街地に戻り、トンネルを数えようかと地図を見ていたら、「何か探してますか」と、地元のおばさんが車の窓を開けて声を掛けてくれた。これは運が良かったと「渡り鳥哲也さんを探している」と答えると、「案内してあげるからついておいで」と有りがたいお言葉。

 

狭い地道をスイスイと走る車についていく。世知辛い世の中に生きているのだが、こんなこともあるものだな。なんだか嬉しくて、ちょっと泣いていたかもしれない。

 

こうしてライダーハウスのすぐ下まで案内していただき、車上からではあるが、入念にお礼を申し上げる。すると「ちょっとドライブだわ」と、何も気にするなという感じであった。上陸早々、今回も楽しく旅ができそうだという予感がした。

 

3.渡り鳥哲也

 

案内してもらった所から急な上り坂を上がっていくと、回転灯とノボリがあり、その先に家が建っている。ここが今日の宿というわけだ。丁度女将さんが外にいて、宿泊の予約をした者だと述べる。すると、愛想よく、「荷物は外の軒下に置いてもいいよ」、とか、「長旅お疲れでしたねぇ」と歓迎された。

 

ところで、ライハは雑魚寝が基本なので、その日の快適さは宿泊者数に依存する。折りしもこの日は3名と少なく、またまた運が良かった。運河の街のおかげか?とクダラナイ駄洒落を言いつつ、ライダーの宿泊スペースである屋根裏部屋へ案内された。他の人達は食事に出かけているということだったので、カメラと電話の充電をしつつ、テレビを見て明日の天気などの情報を仕入れておく。

 

渡り鳥哲也にて

 

明日は晴れだが、西から低気圧が近づいてきている。予報も明後日昼から雨だ。まあ、明後日の件はその日の朝に考えることとして、明日のプランを提出しなければ。ところで、先にも述べたように、今回は5回目の渡道であるが、まだまだ宿題を多く抱えている。その一つに積丹半島周遊がある。今回は丁度、積丹半島の付け根に近い小樽に上陸したわけだし、明日は天気も良い。これでプラン承認だ。

 

そう考えていると、ゼファー750に乗る方が戻ってきた。話をしていると、明日苫小牧から帰路に就くということであったが、今週は天気が最悪であったそうだ。そういえばすっかり忘れていた。出発日は丁度台風が通過して東北を横断、北海道の太平洋側に沿って進んだ日であった。また、それに伴い、北海道に停滞していた前線に水蒸気が供給されて、大雨となったとうわけだ。しかし、ゼファー氏は「明日は気をとりなおして走る」ということであった。

 

 それはそうと、ゼファー氏は各地へツーリングへ出かけていて、未踏の地に四国が残っているそうだ。九州は出向いたことがあるが、四国は通過してしまったということだが、東京―徳島航路や、その昔は高知航路もあったと思うが・・・、とフェリー案を提示する。すると、「おお、その手があったか」とゼファー氏。最近は高速道路を走れば1,000円であるが、タイヤ、エンジン、そして何よりもライダー自身の消耗があるので、結構辛い。特に渋滞が慢性化する傾向があるので、なんとかならないものかと思っていたようだ。また、自走にしても、東京圏からだと三ヶ日I.C.辺りで降りて、渥美半島の伊良湖から鳥羽まではフェリーがあるよと申し添えておく。すると、「名古屋の市街地を通らなくてもよいのですね」と。その通り。因みにこのルートは、別冊モーターサイクリストの耐久試乗のコーナーで、関西圏に行く場合によく用いられている。これならば、紀伊半島を楽しむことも可能だ。

 

こうしてゼファー氏とフェリーの可能性について話し合い、当方の「高速道路の料金1,000円は、安いようで案外高くつく場合がある」という持論を開陳した。もっとも、これは単なる当方の持論なので、その内容は聞き手の判断であることは言うまでもなかろう。

 

こうして、渡り鳥達との楽しい夜は過ぎていき、23時頃に就寝した。

 

第2日目へ

 

本日の走行 30km