初の4輪ユーザー車検

 

2010年12月2日

 

無事に新しい車検証を取得

 

0.管理人のユーザー車検史

 

ご存知の通り、当方は2年毎の車検が必要な機材を2台保有している。2輪のTDM900と、4輪のフィットだ。幸いにも車検満了時期は交互にやってくるのであるが、いちいち販売店に依頼していたら破算しないまでも、万年金欠状態に陥ってしまう。そもそもそう考えて、自分で整備しようと思い立ったのは貧乏学生時代であり、仕方なく自分で作業したことが発端だ。ところが、これが非常に面白く、マシンそのものの機械的・電気的構造に関する知識も増えてくるという特典も付いてくる。

 

こうして「車検も自分で受験できないか」と画策したのが1997年のことだ。当時の保有機材RF900のを念入りに整備し、自動車検査登録事務所にて検査を受け、ライトの光量が足らないというトラブルもあったが、何とか合格した。

 

ところで、人間とは不思議なもので、一度経験してみると何か自信がついてくる。自分の体験を話していたら友人やその友達も「ユーザー車検」に興味を持ち、当方の機材を含めて立て続けに3台分の車検を受験、合格に導くことができた。

 

こうなってくると益々嬉しくなってしまい、自分の2輪機材の車検は一度も店に依頼せずに現在に至っている。しかし、4輪については構造が複雑で、整備用の器具も無いことから店に頼んでいた。

 

だが、昨今の経済事情などを鑑みて、原点に戻り、やれるところだけ自分で整備し車検に合格してやろうと考えた。尚、ブレーキフルード交換は管理人の単なる気分で必要な整備で、車検合格には関係の無い。これは後日なんかのついでに販売店で依頼することとした。

 

1.車検って何だ?

 

4輪、2輪問わず、自動車の税金や維持費はばかにならない。新車ならば初回3年、その後は2年毎にやってくる「車検」は金のかかるものの代名詞と言ってもよかろう。これが負担で2輪を辞めてしまう方もいらっしゃると聞く。

 

ところで、車検とは何だろうか。元々は戦前からあった制度だそうだが、現在の形態の元は、1951年に施行された「道路車両運送法」という法に規定されているようだ。1951年というと第二次世界大戦が終結してまだ6年しか経過していない時だ。余談だが、当方の叔父や父は子供時代には、国道1号線沿いの住居に住んでおり、「車なんてたまにしか通らなかったぞ。それも自分達が走っているくらいの速度だった」と話してくれたことがある。つまりは「ガタガタのポンコツや、粗悪な車がポチポチと走っていた」ということだ。そしてその1951年頃は「ちょっと自動車が増えてきたか」、という状況だっただそうだ。しかし幹線道路である同国道は相変わらず未舗装路であったとのこと。

 

粗悪な車両が数を増して走り出し、道路整備は進んでいない。こうなると車両故障なんて当たり前に起こりうる。そこでお上は「車両が保安基準に適合しているかを定期的に検査する」という目的で、この法律を制定・施行したのだ。そう、車検は「保安基準に適合しているかを定期的に検査」するものである。ここが非常に重要だ。というのも、この題目を知っている人は案外少ない。また、「点検・整備は車両の使用者の義務」とも明示されているようである。つまりは車検を受けるのもユーザーが責任を持って行うべきことなのだ。

 

このように考えてみると、現在の状況は甚だ疑問に思うことが多い。「車検は販売店にお願いして受けてもらうもの」ということは半ば常識化しているし、それ以外の方法があることも知らない方もみえるようだ。さらには「車検に通れば次の車検までは整備しなくてもよい」という認識の方もいるようである。上記の法律の中身とはまるで違うではないか。

 

まとめると、

車検は使用者が自分の車両について、保安基準に適合しているかどうかを受ける検査

 

これだけのことだ。このことを踏まえた上で、「面倒だから店に任せよう」という選択をするのならばトラブルも少ないだろうが、そうでないと話がややこしくなることは、本ページを読まれている貴殿なら容易に理解できることであろう。

 

長々と前置きをしたが、これが車検の実態である。もっとも車検制度そのものへの疑問も多々生ずるが、今回はその議論は省くことにする。

 

1.準備

 

そういうわけで、今回は当方の4輪機材である2001年型のホンダ・フィットの4回目の車検を、当方が自ら整備・点検して、自動車検査登録事務所に持ち込み、て受験した様子をリポートしてみようと思う。

 

さて、車検を受けるに当たり、まず最初に行うことは「車検を受ける自動車登録検査事務所に電話して、予約をとる」ことだ。これは専用の回線があるのでそちらに電話し、音声案内に従って電話機を操作する。

 

それから次は車両の点検と整備だ。今回、管理人の車両は5年もののタイヤを交換した。また定番のエンジンオイル交換も行っておく。プラグとエアクリーナーは点検・清掃のみとしておいた。方法は過去に作成したリポートがあるので参照願おう。

 

さて、タイヤ交換作業は自分で行うことができないので、行きつけのタイヤ屋にお願いする。銘柄はダンロップ製ルマン(175-65R14 82H)で、工賃込みで32,000円だった。またオイル交換は近所のホームセンターで、ホンダ純正オイル(MILD 10W-30)を2,000円ちょっとで購入し、自分で作業を行った。因みにオイルフィルターはこの前交換しているので、今回は交換しなかった。

 

この次は「点検記録簿」を基に、各所を点検していく。この記録簿であるが、メンテナンスノートなどに付属のものを利用してもよいし、車検場で購入してもよい。

 

点検の中身であるが、正直なところ最近の車は電子制御が進んでいるので、点検もヘッタクレも無い。音や排ガスに異常がなければ、上記のような基本事項の点検のみでO.K.牧場だ。あと、これは当方の好みだが、下回りの錆びやすい部品を清掃後、にシャシーブラック塗料を吹いておく。これは現有機材を長く使用できるようにするための保険のようなものだ。この際、ついでに見える部分のボルトやナットの緩みがないかを点検しておこう。舵取り関係のものは割と入念に検査されるようなので、ひと通りチェックしておく。

 

それにしても、車検整備というと、とても仰々しいものを想像するが、実態はこの程度のことだ。数時間もあれば十分行うことができるだろう。

 

整備が終わったら、次は車体下回りを洗車場で、高圧の水を用いて大まかな砂などを落としておく。これは案外重要だ。4輪の検査ラインには車両下の地下室みたいな場所から点検を受ける場所があり、例のカナズチでカンカンやられるのだ。この際、砂等が落ちてくるらしく、検査官が迷惑するそうなので、もしも洗浄していないと印象が悪い。さらに正確に点検されないことも起こりうる。そうなると合格が怪しいので、忘れずに行おう。おっと、忘れずにといえば、テッチンホイールのホイールキャップは検査の邪魔なので、あらかじめ外しておく。

 

自宅近くの洗車場にて

(ホイールキャップを外している)

 

2.現地にて

 

こうして予約した当日に自動車検査登録事務所へ出向く。積車がある場合はそれに載せていけばよいが、そんなものは所有していないので当然自走である。これゆえに、上記に記した下回りの洗浄は当日の朝、できるだけ事務所に近い場所で行うことがよかろう。

 

さて、次に書類の準備を行う。必要書類はあらかじめ手に入れておくことが望ましいが、登録事務所は平日しか業務を行っていない。ひとまず自動車税の納税証明書と車検証、定期点検記録簿、そして自賠責保険証明書のみを準備しておいて、その他のものは当日検査事務所横にある、自動車会議事務所にて購入する。尚、納税証明書を紛失した場合、市役所で入手することもできるし、検査事務所でも発行してもらえるからご安心を。あとは印鑑も必ず持参しよう。

 

そして事務所入り口のテスター屋が営業している「何でも屋」みたいな所で、次回車検までの期間を満たす分の自賠責保険に加入する。この際に現有の証明書を提出すると話が早い。そして登録事務所横の「社団法人 自動車会議所」の建物の窓口で無愛想に「普通車の継続検査書類一式」と言えば、それに負けないくらいに無愛想に「45円です」と返答があり、書類と領収書が出てくる。この際に点検記録簿をあらかじめ作成しているならば、「それ以外」と付け加えておく。もちろんここで購入してから記載しても問題は無い。

 

それにしても上記社団法人であるが、国土交通省の役人の天下り先であろうと推測される。世の中そんなもんか。

 

書類を手に入れたら、次は税金を支払う為に証紙を購入するために、印紙売り場へ向かう。当方の車両は車両重量が990kgなので、1トンまでの重量税印紙(20,000円)、検査登録印紙(400円)、そして審査証紙(1,300円)を購入し、自動車重量税納付書(検査自動車)に20,000円の印紙、また審査依頼書・審査結果通知書に1300円と400円の印紙を貼り付けておく。尚、今回は窓口業務が暇なのか、書類を提出して貼り付けてもらった。

 

この後検査登録事務所へ移り、見本に従って書類に必要事項を記入する。具体的には継続審査申請書、自動車重量税納付書(検査自動車)、審査依頼書・審査結果通知書、定期点検記録簿に名前や住所、車体番号、登録番号などを書き入れ、申請書のに印鑑を押す。

 

こうして出来上がった書類を検査の受付窓口に提出する。ところで、当方は2輪の車検は10回くらいの経験があるが、それらの時は、書類をトレーに入れておき、名前が呼ばれるのを待っていた。しかし、今日は事務所そのものが空いていたので、そのまま目の前で書類を確認してもらい、受付印をもらった。

 

3.ライン(その1)

 

こうしていよいよ検査ラインへ並ぶことができるようになるのだが、管理人の出向いた事務所は4輪用のラインが3本ある。別にどこで検査を受けてもよいのだが、「初心者だと駆動方式などを機械が自動判別してくれる2番ラインが良い」、とアドバイスを受けていたので、その列に並ぶ。因みに師匠のオークラ氏は特に好みは無いそうだ。

 

さて、いよいよ検査開始だ。最初はラインの手前で待っている時に灯火類の作動やシートベルト、発炎筒の有無を確認して、その後ボンネットを開けてから車両番号などの確認をしてもらう。また、ホイールナット等の緩みも、カナズチでトンカンされることは言うまでもなかろう。

 

ここで合格印をもらい、ラインに進入する。まずは排ガス検査。50cmくらいの検査棒を排気管に突っ込んで待つ。すると電光掲示板に「○」と表示が出る。これは楽勝でしょう。マフラーは純正品だからね。審査依頼書・審査結果通知書を記録機に挿入すると「○」が打刻される。

 

 

検査ライン入り口にて

(手前は排ガス検査の機器)

 

 

2番目はサイドスリップ検査だ。前に車が詰まっていると掲示板に待機の表示が出る。必ず進入とグリーンの文字が出てから入ろう。さて、このサイドスリップだが、要するにタイヤのアラインメントが狂っていないかを検査するものだ。検査ラインにスライド部があって、そこを時速5km/h以下で通過する際にタイヤの横方向への力が必要以上にかかっていないかを点検している。もちろん、当方の車両はリアバンパー以外に修復暦はないので、「○」である。

 

3番目は前進してローラーに車両を載せてスピードメーターのテストだ。2輪の場合はローラーが勝手に回りだし、40km/hを示した時点で「フートスイッチ」を離すのだが、今回は自分でギアを入れて40kmになった時にパッシングするということだ。「あれ?ローラーが回らないなぁ」って思っていたら、「ああ、そうか自分で回さなきゃ」と思い出し、ギアを入れ、アクセルをゆっくりと踏む。そしてパッシングすると「○」の表示。余談だが、師匠のオークラ氏は「ファのシャープ」の音になったら40km/hだと聴覚でも解るらしい。さすが!

 

検査用のローラー

(メーカーはその筋では有名なバンザイ)

 

4番目はギアをニュートラルにしてサイドブレーキをかける。そしてハイビームを点けて光軸と光量の検査だ。実は2輪でも4輪でもこれが一番のフェデラル、いやナンカン(難関)である。10年以上前に2輪のRF900で車検を受けた際に、光量不足で「×」を食らったことがあるが、それ以外はいつも「○」だったので「どうってことないでしょう」とタカをくくっていた。しかし、右側が「×」になってしまった。ありゃりゃ。

 

嘆いていても仕方ない。対策は後で考えるとして、5番目のブレーキ検査へ進む。最初はサイドブレーキなんだけど、あっさり「○」に。そしてフートブレーキだ。ブレーキの検査の秘訣は「親の敵くらいの強さで」と覚えているが、いつも2輪の検査ではそんなにしなくても楽々通っているので、そこそこ強くペダルを踏んでいたら「×」になってしまった。しかし、慌てることはない。もう一回チャンスがある。今度は思いっきり床まで踏み抜いて「○」やれやれ。打刻機で結果を打ち、下回りの検査へ。

 

記録の打刻機

(これは排ガス用の機械)

 

5番目の下回りだが、これは車両の左右の車輪が通る間に、床の無い部分がある、ここには地下室があり、そこから検査官が検査するわけだ。なにやら床から「ゴンゴン」音がする。そしてマイクで「エンジンを止めて」とか、「ブレーキ踏んで」とか指示がある。なんだかハンドルもガタガタと動いている。下から舵取り装置の点検をしているのだろう。そしてその音がしなくなったら、電光掲示板に「○」が出て、「記録してくださぁーい」と指示があった。やれやれ、と記録してラインを離れる。何事もなければこれで終わりだが、今回はヘッドライトで「×」を食らっているので、そのまま隣のテスター屋へ直行する。

 

検査用の地下室

 

4.テスター屋

 

突然ですが、ここで豆知識をひとつ。「テスター屋に行く時は業者のような服装で」というものだ。これは師匠のオークラ氏直伝の技である。どういうことかと言うと、最近はユーザー車検の認知度が上がってきており、検査ラインに乗る前や当方のように不合格を食らった際に、駆け込み寺としてテスター屋にやってくる。ここの「模擬検査ライン」でなんとかしてもらおうという人が増えてきたのだ。こうなると、テスター屋も業者のみを相手にしていたのでは商売的に厳しくなる。しかし、一般ユーザーは色々と教えたりすることがあるので、手間がかる。そこで業者とユーザーで料金を分けているのだ。

 

師匠のこの助言を受けて、もちろん当日は会社に行く時の服装で出かけた。また、「ここ初めてだけどいいっすかねぇ」など業者っぽい話しかたをするとさらに効果的ということで、そのまま実践してみた。極めつけは「社長が行ってこいって言うもんだから・・・」というフレーズだ。検査中にこんな話をすると業者らしくなるのだが、アクセントには注意が必要だ。「しゃちょう」ではなく、「しゃちょう」と前にアクセントを置くほうがより業者らしく聞こえる。なるほど、納得。

 

こうして当方も業者価格でヘッドライトの光軸調整をしてもらったのだが、この調整装置がなかなかお目にかかれるものではない。検査機の画面に十字が映っていて、そこに一番光量の明るい部分が来るように調整するものだ。検査場のものではどういう風にズレているか解らないからな。

 

光軸を調整中

(右側のモニターに調整基準位置や光量が表示される)

 

5.ライン(その2)

 

さて、テスター屋の料金を支払た後、再度検査ラインに乗る。ここで余談をひとつ。昔は再検査回数に制限はなかったが、いつの間にかに2回までとなってしまった。つまり、合計3回で合格しなかった場合、再度検査手数料を払う必要があるということだ。

 

「今回で合格したいな」と思いつつ順番を待っていると、ラインの手前ではやはり車両番号が確認される。替え玉の防止だろう。その後、ライン入り口でヘッドライトのスイッチのみを押しておくと、ラインもそのように動く。

 

ここでちょっとトラブルが発生。ヘッドライトの検査はローラーの上にタイヤを乗せるところまで前進するのだが、この際にはサイドスリップ検査機も通過せねばならない。サイドスリップは1回目の検査で合格しているのだが、なぜか検査はしなくともここは「時速5km/h」で通過しないとエラーになってしまうのだ。つまり、当方の勇み足で、結構な速度(10km/h)で通過したものだから、電光掲示板には「後退してください」と表示されている。「いったい何のことだ??」と思っていたら、係員がサイドスリップテスターの件を話してくれた。

 

こうして一旦サイドスリップ検査機の手前まで戻り、ゆっくりと前進してヘッドライトの検査に入る。ちょっとドキドキだったが、ライトは左右共に「○」でスッカリ安心してしまった。

 

ここで気を抜いてしまったので、またまたトラブル発生。検査結果を打刻することをスッカリ忘れてしまい、そのまま下回りの検査位置まで前進してしまったのだ。ここでは一応「ヘッドのみ再検査ですぅ〜」と大声を出してみたが、すでにカンカンと床からカナズチの打音がしている。「???」と思っていたら係員が来て、「ヘッドライトの結果記録しましたか?」と尋ねられた。「しまった、忘れていた」と話したら、係員がそのまま打刻を代行してくれた。恐らく当方の直後の人が、ライン進入の表示が出ないで待たされていたのだろう。申し訳ないっす。

 

後方の部屋で合格印をもらう

 

6.まとめ

 

この後無事にラインを出て、総合判定所にて所定の印鑑をもらい、車検証交付窓口へ書類を提出する。これで車検証が発行されて終了だ。やれやれ、ちょっと間違いをしてしまったが、概ねうまくいった。

 

ところで、この時点で時刻は10時30分だったので、このまま仕事へ行けば11時に間に合うのだが、今日は休みにしてあるのでその必要は無い。もっと手際よくやれば、休みにしなくとも大丈夫なわけだ。

 

さて、気になる料金であるが、参考までに前回のディーラーに依頼した車検と比べてみよう。

 

前回の車検:約120,000円(法定料金+ベルト交換)

今回の車検:重量税(20,000円)、自賠責保険料(22,470円)、自動車審査証紙(1,300円)、そして自動車検査登録印紙(400円)

        =44,170円+下回りの塗料(700円)、エンジンオイル(2500円)、タイヤ(32,000円)

        =79,340円      

 

前回はファンベルトのみ交換しただけなのに、40,000円近くも高い。また、今回の車検でタイヤ交換が無ければ45,000円程度で納まった計算だ。逆にディーラーに依頼していたら、150,000円は覚悟せねばならなかっただろう。

 

車やバイクは金がかかるので、昨今の経済情勢を考えると維持が大変だ。しかし、こういう時だからこそ趣味を充実させて、苦しい時代を乗り切りたい。ユーザー車検はその一つの実践例と言えるのではなかろうか。

 

2輪と4輪を同時に所有している、当方のような貧乏人にはこういう所でも労働して、なんとか機材群を維持してゆきたいものだ。

 

これにて、初の4輪ユーザー車検記は終了。お付き合いありがとうございました。

 

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