管理人 海外へ行く

~オーストラリア編~

2017年11月13日~2017年11月21日

ウイリアムスタウンの街並み

第8日目(11月20日)

1.いよいよ最終日だけど

いつものように、朝7時頃に起床する。今日は天気も良く、天気予報でお馴染みの「午後から雷雨」は発表されていない。しかし、今日の夜(正確には21日の午前1時)にメルボルンを発つので、まだ今日は丸々1日遊んでいられる。この時点では、旅の終わりを感じるには早すぎると言えよう。

さて、今日は市街地に疲れたこともあり「遠征その2」と題して、隣の港町へ出かけてみようと思う。そうと決まれば即行動で、昨晩整理しておいた荷物を持って部屋を出る。都合1週間滞在した部屋ともお別れであり、少々名残惜しく感じるのはいつものことだ。「また逢う日まで」と心でつぶやき、ドアを閉める。

フロントに下りていくと、いつもの「How are you?」であるが、これも今日で最後だ。実に残念だが、チェックアウトを申し出て手続きをする。因みに、ホテルの料金は予約時にカードで引き落とされることになっており、ここでは1セントも払うことはない。しかし、前述のように今日は丸々1日遊んでいられるので、スーツケースはホテルに預けておくことにする。そして、その旨伝えると「もちろん、O.K.よ」と荷物部屋へ案内してくれる。そして「タクシーを呼ぼうか?」と提案してくれるが「Mikiカードがあるので、大丈夫だ」と丁重に断っておく。

ホテルを出て、いつものように通りを歩いていく。そうだ、朝飯がまだだったということで、昨日も利用した「TOAST KICHEN」の歩道席に着く。「やあ、おはよう。何にするか」と店員がにこやかに対応してくれる。そこで、メニューの黒板を指して「オムレツを」と言う。「ホウレンソウのオムレツね。飲み物は何にする」ということで「カプチーノを」と答える。そして、いつものように「持っていくの、食べていくの?」と聞かれる。オーストラリアでは持ち帰りも多いようなので、この種の質問をされることがしばしばだが、これにもすっかり慣れたので「食べていくよ」と答えておく。因みに、朝食用に3種類のメニューが用意されていて、他には「ステーキ」もあるようだ。朝からそんなに重たいものを食べられないよなぁ。

カフェの様子

ガイドブックを見ながら待っていると、オムレツがやってくる。おいおい、メチャクチャでかいじゃあないか。もちろん、オムレツもそうなんだけど、ついてくるパンもアホみたいにデッカイ。それはバゲットなんだけど、1本の半分ぐらいを使っているのではなかろうか。日本ならば、2人前といったところだろう。値段も16ドル(1,400円)と結構なものだが、量から考えるとそれほど高いとも言えなさそうだ。

オムレツはホウレンソウの他に、ベーコン、チーズや玉ねぎなんかも入っていて(黒板にそう書いてある)マイウーである。また、件のパンも超が付く程にカリカリで、歯ごたえ十分である。朝からガツガツを食べるが、だんだんと腹が膨れてきて30分程かかって完食した。

巨大なオムレツ(ちょっと焼きすぎ?)

 

2.出かける前に

会計を済ませてから、カフェと同じ通りにある郵便局へ行く。これも管理人が旅行でいつもすることなのだが、友人達へハガキを送るためだ。入口は大きな人形が建っており、クリスマスを祝う雰囲気である。また、建物の中では文房具等が普通に売られていて、日本の郵便局とはずいぶんと異なる雰囲気だ。今日は月曜日なので混んでいるかと思ったが、幸いにも客はまばらであり、すぐに対応してくれる。「ハガキを4枚日本に送りたいのだが」と言うと、切手を出してくれて「2.3ドルが4枚で10.2ドルよ。あちらで貼って、ポストに入れてね」と。

郵便局の入口

お金を払い、作業台で切手を貼って表のポストに投函する。ポストも日本のものとはかなり異なり、背が低い箱が並べてある。もっとも、これならば正確に日本まで届けてくれそうだと思わせる、ちゃんとしたものなので安心できる。いつかのダカールの郵便局にあった「青い箱」のように、そのまま捨てられてしまうのではと心配になることはない。

無事に日本まで届くことでしょう

3.いざ、出発

郵便物を投函した後、乗り慣れたトラム57系統を捕まえて出発だ。いつもならば終点まで行くのだが、今日は「ヴィクトリア・ストリート」で一旦下車する。今思うとそのまま「メルボルン・セントラル駅」まで行けばよかったのだが、ここで55系統に乗り換えて「フラッグスタッフ駅」を目指す。しかし、メルボルンの路面電車は誠に便利である。主要な通りを網羅しており、乗り換えれば大抵の所へ難なく行くことができるのだ。

「フラッグスタッフ駅」でメトロ鉄道に乗り換えて、メルボルン鉄道網の中心駅である「サザンクロス駅」へ到着だ。今日はここで乗り換えて、上記隣の港町である「ウイリアムスタウン」へ行くのだ。それにして、サザンクロス駅はとても大きい。いったい、目当ての街へ行く電車はどこからでるのだろうか。20本近いホームがあるので、一つづつ探していては時間の無駄になるので、ここは駅員にたずねてみることにする。

管理人「すいません、ウイリアムス・・・」

駅員「ウイリアムス・ストリートかい??」

管理人「ウイリアムス・タウンへ行きたいのだが」

駅員「14番ホームから出るよ」

管理人「ありがとう」

と言う感じで改めて案内モニターを見てみると、しっかりと14番ホームには「Williamstown」と表示がある。これならば、聞かなくても何とかなったかもしれないね。そう思いながら電車を待っていると、3分程で黄色と水色の電車がやってくる。今日は9時54分発に乗って、いざ、出発進行である。

電車でGO!

駅を出てしばらくは工場のような所が続くが、だんだんと郊外の住宅地の中を走るようになる。そんな感じでボーっと車窓から景色を眺めていたら、終点の「Williams Town」に到着した。ここはとても静かな駅で、乗降客がいなくなると当方が一人だけ取り残されてしまう。さて、どうしようかなと思っていると、改札口にある駅員室のガラス戸に「観光地図があります」と貼り紙が出ている。しかし、駅員がいるのかどうか・・・。

その戸を軽く叩いてしばらく待ってみると、太っちょのオバサンの駅員が出てきた。「この観光地図を下さい」と言うと、にこやかに出してくれる。そして「おすすめはネルソン通りと桟橋よ」とその地図に記しまでつけてくれる。「どうもありがとう」とお礼を言って、小さいながら綺麗な駅舎を出る。

いかにも終点という趣の駅

4.港町を歩く(その1)

今日も日差しが強いのだが、日本で言えば5月の末に当たるのだから当然であろう。緑が豊かな、大きな家が並ぶ住宅街を通り、教えられた桟橋へ向かう。この桟橋周辺は古風な建物が並んでおり、歴史を感じる。冒頭の写真がその通りである。

緑豊かな住宅街

そのまま桟橋へ向かうと、案内板がある。それによれば「海軍の軍港として開設されたウイリアムス・タウンは、19世紀の中頃には自然の地形を活かして、造船業が盛んであったようだ。また、当時の軍艦で最大のものが「Nelson」であった(管理人訳)」ということだ。また、「Gem」という名の桟橋があり、これについても説明板がある。それによると「1839年に桟橋が建設されて、その名はメルボルンとここを結ぶフェリーの名前に由来する(管理人訳」)ということだ。

「GEM」桟橋の様子

少し歴史を学んだ後、桟橋の先へ行ってみる。日差しは強いが、風が心地よく吹いてくる。対岸にはメルボルンのビル群が見えているのだが、実は船でもここに来ることができるようだ。また「CASTLEMAINE」という船が停泊しており、この船は第二次大戦で活躍した軍艦であり、現存する数少ないもののようだ。

軍艦「CASTLEMAINE」

桟橋周辺を楽しんだ後、街の中を散策することにする。観光地ではあるが、ここも普通に人が暮らしている。そういった、日常を見ることも旅の楽しみだろう。それにしても、この街は建物がレトロであり、見ているだけでも十分に楽しい。まさしく、知らない街を歩いてみたい♪という趣だ。当方のような一見さんの観光客にとって、嬉しい限りである。メルボルンは州都ということもあり大都会だが、当方はこういう田舎町の方が好みである。

「ネルソン・プレイス」の様子

右手に「コモンウエルス保護区」という緑地を見つつ、海沿いの「ネルソン・プレイス」という通りを歩いていく。今日も晴れて初夏の日差しがふりそそぐが、湿度は少なくカラリとしていて気持ちが良い。今さらながらに思うが、メルボルンの大都会ではなく、こちらに宿泊していた方が落ち着いて旅を楽しむことができたかも。それ程までに、この田舎の港町は静かで落ち着いた、過ごしやすい場所だと思う。

古新しい「英国国教会」を横目にしばらく歩くと、ラウンドアバウトに出る。ここには第一次大戦の慰霊碑が建っており「先の第一次大戦で自由の獲得のために闘い、死んでいった英雄の名声をたたえ、ウイリアムスタウンの市民によって建てられました(管理人訳)」と説明書きがある。この国は戦争の記憶をしっかりと残しておく、という考えを持っているのだろうか。それはつまり、もう戦争はしないよという誓いを立てているということだろうか。近年の日本は戦争に向かっているのだから、こういう草の根運動を見習うべきなのではなかろうか。

古新しい、英国国教会

交差点の中央に建つ慰霊碑

ここから海岸に出てみると、前述のように気持ちの良い風が吹いてくる。一帯は芝が植えられていて、木陰で本を読む人、緑地をジョギングする人、散歩する老夫婦などが見られる。すぐ対岸にはメルボルンのビル群が見えるが、ここは通常の家屋が並ぶ静かな趣だ。ほんの少し電車で移動しただけで、豊かな時間が流れるメルボルン近郊。住みやすい街と言われる所以だろう。

交差点から見た緑地(遠景はメルボルン市街地)

5.港町を歩く(その2)

この後、商店街のある「ファーガソン・ストリート」を歩いていく。おしゃれなカフェ、品数豊富な肉屋に交じって「YAMABUKI」という屋号の日本料理店がある。メルボルン近郊には「SUSHI」などの日本料理を出す店が多く存在しているので、親日的な人が多いのかもしれない。

ファーガソン・ストリートの様子

カフェに寄って行きたいが、今日は時間が限られているのでそのまま通りの終わりまで行き、南に向きを変えて「エレクトラ・ストリート」を行く。この通りは高級(この国では普通?」住宅街だ。芝が植えられた広い庭、白く塗られた木の囲い、おしゃれで大きな平屋の家。おそらく、日本の2倍ぐらいの敷地があるのではないか。そう言えば、5日目に「フィリップ島」に行った際、バスの運転手が「年収の2~3倍で家を買った」と説明していた。こんな家が1,000~1,500万ぐらいで購入できるのならば、それはとても安いと言えるだろう。

おしゃれな平屋の家が続く

おや、右手には変わった建物があるな。近づいて看板を確認すると博物館のようだ。しかし、日曜日にしか開いていないと書かれている。残念だが、このまま先へ進む。すると、賑やかな子供達の声が聞こえてくる。どうやら小学校のようで、制服を着た育ちの良さそうな子達が元気に遊んでいる。そして傑作なのは、そのフェンスに出ている看板だ。空手教室の案内らしいのだが「Little Ninja Class」と書かれている。忍者と空手って関係があるのか?忍者は忍法を使うのであり、空手は使わないと思うのだが。日本に関心があるのはうれしいことだが、ちょっと歪曲されて認知されるのはいささか気持ち悪いね。

忍者と空手って関係あるのか?

その先へ歩いていくと、ウイリアムズタウン植物園がある。ここまで結構な距離を歩いているので、ちょっと一休みしよう。何より、入場は無料なのが嬉しい。また、入口の案内板を読んでみると、結婚式や集まり等のイベントにも使えるそうだ。事実、昨日は結婚式が執り行われていたようで、その案内状も掲示してある。その他詳しい説明が書いてあるのだが、日焼けして読めない。ただ一つ、1902年に選出された国会議員の像が奥の方にあるということはわかった。

立派な門をくぐって中に入ると、ここには巨大なソテツがたくさん栽培されていて、いかにも南国という趣である。また、池などもあり多様な植物が見られるようだ。そう思ってブラブラしていると、バアサンが何やら声をかけてくる。年配の人の言葉は特に聞き取りにくいのだが、どうやら池か植物かを背景に写真を撮ってほしいということのようだ。「シャッターはどこを押せばいいのか」とたずねると「ここ押してくれ」と言っている。そして、全体の背景を考慮しつつ写真を撮り、その映像を見てもらって「これでいいのか」と聞いてみる。すると「いいじゃないのよ」とえらく喜んでいる。どうやら大役?は果たせたようだ。

植物園の様子(いかにも南国)

その後、園内の小路を回りつつ奥の海岸に近い方へ行くと「CLERK」さんという、前述の国会議員の像がある。そして、そこを通り過ぎると海岸沿いの「エスプラネード」通りに出る。今日は平日だが、暑いので海水浴を楽しんでいる人もちらほら見られる。年齢も幅が広く、けっこうな年配の人もいれば、小さいビキニの若い女性もいる。絶景かな。

喉が渇いたので、売店で冷たいコーラでも買おう。「缶入りのコーラを1つ」と言うと「2ドルです」って、おいおい、メチャクチャ高いじゃあないか。大きさは日本の350mlで、180円ぐらいだから、1.5倍ってところかな。スーパーで買えば100円もしないから、2倍ってところだろう。オーストラリアは物価が高いのはわかっているが、こいつには少々驚いた。

高いコーラをちびちびと味わいながら、湿度の少ない心地よい風を感じつつ、海を眺める。水は透明であり、日本のように汚染されてはいないようだ。この国には酷い公害はないのだろう。それもそのはずで、メルボルン近郊は大都会だけど工場のようなものは見かけなかったからなぁ。

ウイリアムスタウンビーチの様子

砂浜を散歩していると、海の水がとても綺麗なことに改めて気がつく。よほど海パンを買って泳ごうかとも思ったが、時刻は13時になろうとしている。当方の計算では14時頃には荷物を取りにホテルに戻って、15時頃には空港行のバスに乗り、夕方には空港に入りたい。残念だが、そろそろ引き返すとしよう。

6.そろそろ帰還かな

住宅街を歩いて、一番近い「ウイリアムタウンズ・ビーチ」駅に到着する。ここは先ほど降りた終点の一つ前の、小さな無人駅である。例の「MiKi」カードを入口でかざして入場するのだが、こちらの駅はとても簡素な管理しかしていない。こんなので良いのだろうかと思うが、当方の鉄道ではないので、心配無用だ。そう思いつつ、ホームの日陰に入ると、とても涼しく感じて心地よい。前述のように、暑いけど湿度がとても低いのだろう。

10分程で電車がやって来て、20分ぐらいで「フリンダー・ストリート」駅に到着する。うゎあー、メルボルンは大都会で人が多いなぁ。今さらだけど、ウイリアムズタウンで宿をとって、過ごしていた方が良かったなあ。ちょっと後悔しつつ、駅から北側にある「センターウエイ・アーケード」や「ブロック・アーケード」を歩いていく。何の事はない、日本風に言えば「おしゃれな商店街」ってところなのだが、クリスマスシーズンなのでどこも賑わっている。売っているものも実に豊富であり、時計や宝石などから日用品まで何でも手に入りそうだ。また、突き当りには大きなデパートがあるのだが、そこには「ユニクロ」が入っており、日本人の商魂のたくましさを感じる。

賑わう商店街の様子

「せっかくだから何か買っていこうかな」と消費欲を刺激されるが、特に今必要なものは無いし、あったとしても日本で買った方が安いだろう。ということで、無駄遣いはしないで商店街を抜けていく。しかし、こういう活気があると「何か買おうかな」という気持ちになるのは事実であり、日本で消費が伸びないのはこの辺りに原因があるのだろうと思われる。

結局何も買わずに、ホテルへ荷物を取りに行く。しかし、今思うと「オーストラリアで買い物をするのも悪くなかったな」と。いつものように、乗り慣れたトラム57系統をつかまえる。この車窓からの風景も今日で最後かと思うと、何かもの悲しい。

今のところ時間に余裕があるので、手前の停留所で降りて「クイーンヴィクトリア・マーケット」の中を歩いていく。しかし、市場は月曜の定休日なので、閑散としている。どうせならば、昨日にでも来ればよかった。というか、こんな近くにメルボルン最大の市場があるとは、知らなかったのだ。再び、後悔先に立たずである。

クイーンヴィクトリアマーケットの入口にて

市場を通り抜けて「ヴィクトリア・ストリート」を歩いていく。左手にはカトリック教会が見えて、そこには古いタイプの「ホンダ・インテグラ」が止まっている。色は赤なのだが、すっかり色あせてしまっていて、年式以上に古く見えてしまう。いつもトラムで通過する通りだが、歩いてみるとまた別の景色に見えてしまうのはなぜだろうか。

「イーロル・ストリート」と「ホーカーズ・ストリート」行けば、ホテルに到着だ。中に入ると、朝に荷物を預けた女性がフロントに座っている。そして、当方を見ると「ああ、荷物を取りに来たのね」と言って、物置部屋を開けてくれる。

ホテルには7泊したが、これで本当にさようならだ。ちょっと長く滞在したものだから、情が移るというか、愛着がわくというか、人間とは不思議なものだ。「どうもありがとう」と言って、外へ出た。ホテルの人から見れば「タダの日本人の客」なのだろうが、当方からすると「1週間過ごした家」という認識だ。旅の終わりとはかくも残酷であり、苦しいものであるが、それは日常ではなく「一瞬のきらめき」であるのだから仕方なかろう。

7.ちょっと寄り道

トラムの通りまで戻り、停留所で待つ。前述のように、今日も初夏の日差しがまぶしい暑い日だ。時刻表によれば、この14時の時間帯は8分毎に運行されているようなので、ちょっと待てば良いだろう。そう考えて、炎天下の停留所に立っていると、初老のオバサンがやって来て「何分待っているの?」とたずねてくる。「そうだね、3、4分待っているから、あと5分以内には来ると思うよ」と答える。すると「日陰で待っている」と言うので「来たら呼んであげるよ」と言っておいた。

それから数分で、時刻表通りにトラムがやって来るのが見える。「来たよ来たよ」とオバサンに言うと「ありがとね」と言ってこちらに来る。こういうどうでもよい会話が成立するだけでも嬉しいのは、やはり当方が日本人であり、どこか人を求めているからなのだろう。

電車に乗って、これが見納めかと窓から北メルボルンの風景を眺める。いや、今や「ストリート・ビュー」があるので、見納めではないのかもね。そう考えていると、中央ビジネス街に入り、終点の「フリンダー・ストリート」に到着だ。時刻はまだ15時過ぎなので、十分な余裕がある。もちろん、このまま空港へ行っても良いのだが、名残惜しいので「ディグラベス・ストリート」でコーヒーを飲んでいくことにしよう。

適当な店を見つけて「アイスコーヒーを」と注文してみる。すると「アイスクリームのコーヒー(コーヒーフロートのことだろう)は無いけど、角氷の入ったコーヒーならできるわ」と言われる。そうだよ「アイスコーヒー」なんて日本語だよな。「冷たいコーヒー」と言うべきだった。まったくもって、日本人丸出しである。「もちろん、それで」と返答して、コーヒーを受け取る。値段は5ドル程(450円ぐらい)なので、割とお買い得な店だ。

通りに面した椅子に座って、都会の空気と一緒にコーヒーを楽しむ。半ば思いつきのように、メルボルンを旅の目的地とし、あっという間にオーストラリアにやって来てしまった。いつもこうした気まぐれで行動しているが、特に問題はない。通常、海外旅行と言えば何か月も前から予定を立てて、ツアーに申し込むなり、入念に下調べをするなりして臨むものなのだろうか、それではちょっと堅苦しい。こうして、フラフラとやって来る方が何か自由を満喫しているようで、私の生き方に合っているのだろう。

そう考えつつ、行きかう人々の中でコーヒーを飲んでいると、改めて「自分が日本を出て、オーストラリアにいるのだ」と認識する。しかし、それも今日で終わりなのかと、残念な気持ちも混ざって複雑だ。

氷入りのコーヒー

8.空港へ

1時間程のんびりした後、グラスを店員に渡して店を出る。そして、駅からメトロに乗って「サザンクロス駅」へ向かう。ここで空港行の「スカイバス」の切符を19ドルで購入し、15時30分頃に出発となる。往路も同じバスに乗ったのだが、やはり連接バスはデカい。もっとも、ここメルボルンは道路幅も広いので、このぐらいの大きさでも問題は無い。

街中はちょっと流れが悪いが、高速に入ると快調に飛ばし始める。今まで過ごしてきた大都会のビル群が遠ざかっていき、草原地帯が広がる。おや、対向車線の道路上では警察による取り締まりが行われている。これだけ広い道路だと飛ばしたくなるのは当たり前だが、そういうところで取り締まりをする「イヤラシサ」は、国籍を問わないようだ。

どこの国でも警察は・・・

1時間程度で空港に到着し、国際線の案内に従って歩いていく。途中で中国人から何か言われるが「俺は日本人だよ」と言うと「なんだ」という顔をして行ってしまう。そう言えば、ヨーロッパやアフリカでは日本人とすぐにわかってくれたが、ここでは中国人と間違われることが多かったな。実際、中国人が山ほどいたのだから、この国の人にとってはアジア人と言えば中国人なのかもしれない。

ここはもちろん左へ

まだチェック・インも始まっていないので、特にすることもない。そこで、各航空会社のカウンターが並ぶエリアをブラブラ歩いて過ごす。やはり、この国ではフラッグキャリアの「クァンタス」や「ヴァージン・オーストラリア」が相当な幅を利かせている。それにしても、この空港はちょっと残念だ。というのも、日本のような飛行機を見ることができる展望台が無いからだ。いや、それどころか、建物には窓もあまりなく、飛行機を楽しむことはほぼできない。これは海外のどの空港でも言えるのだが、そういうことができるのは日本だけのようだ。それは、テロ行為などが極めて少ないからなのだろうか?

国際線出発エリアの様子

さて、17時過ぎになって、搭乗する「キャセイパシフィック航空178便 香港行き」のゲートが「G」と表示される。ただ、出発は翌日の0時50分なので、8時間近く先のことである。まあ、チェック・インの手続きが始まるのはもっと前になるので、このくらいでちょうど良いと言えよう。それはそうと、やることもなくなってきたので、大きな窓から駐機場が見えるカフェに入り、食事をすることにする。ここではハンバーガーと果物で15ドルだ。味はなかなかのもので、特に肉は「さすがオーストラリア」と言えよう。

なかなかイケルね

それにしても、この空港はすることがない。まあ、土産物でも見てみるか。そう思って入った店で、店員の若い兄ちゃんが「妹が日本に留学したことがあり、自分も行ってみたい」と言う、日本好きである。また「今回は休暇で(オーストラリアに)来たのか」とたずねられるが、ここは正直に「失業しちゃって、暇だから」と答えておく。すると「また良い仕事が見つかるよ。俺だって、この仕事を始めたばかりさ」と励ましてくれ、とても嬉しく、勇気がわいてくる。「ああ、頑張るよ」と言い残して、店を出る。

フラフラと同じところを歩いていたせいか、また腹が減ってきた。そこで軽くサンドイッチとスムージーを充填してみる。これで10ドル超えとは、ちょっと高いなぁ。まあ、そんなことを言っていられるのも、あと数時間のことだ。そう思い、おいしくいただく。

再び食事を

その後、豪ドルを米ドルに戻したり、本を読んだり、うたた寝をして時間を潰す。すると、21時頃にキャセイのカウンターが開く。もちろん、帰りもエコノミー席なので、長~い列に並ぶ。因みに、帰りはボーイング777-300ERに乗る予定なので、300人ぐらいの人が待っているということになる。こうして30分ぐらい待った後、自分の番となる。職員の女性は手際良く航空券を出してくれて、預けたスーツケースにタグをつけてくれる。「名古屋までね。荷物も名古屋で受け取ってくださいね」と事務的な話し方で案内してくれた。

長~い列に並ぶ

その足で出国手続きのブースへ向かうのだが、手続きが簡素化されている。というのは、行きと同じ申告カードを提出するものと思っていたのだが、半年ぐらい前から廃止になったという表示が出ているのだ。というわけで、パスポートを見せて顔を確認して、あっという間に終了した。ただ、その先の保安検査が激混みであり、チェックインの時よりも酷い混雑ぶりだ。また、そいういう時に限って、前の人が「誤って、バナナを持ってきてしまった」と言って、職員と長話しをしている。本来は生ものは原則持ち込みも持ち出しもダメなのだろうが、持ち出しであり、本数も1、2本ということで、そのまま通ってヨシということになったようだ。

やっとの思いで保安検査を通過して、免税エリアに入る。おーーー、何じゃこの巨大な免税エリアは。そうだなぁ、ダカールの10倍ぐらいはデカいし、品ぞろえなんて100倍ぐらいあるのかもしれない。ただ、その大半は香水やら化粧品、ブランド物のカバンといった、当方には興味の無いものばかりだ。しかし、こういうモノが好きな女が見たら、大はしゃぎするに違いなかろう。

巨大な免税店エリア

当方の場合、実家と友人の土産に酒を少々購入する程度だ。と言っても、メチャクチャに種類(酒類?)があるので、どれにしようか迷ってしまう。また、けっこう大きな瓶が多くて、値段も数十ドルとなっている。これではお金が無くなってしまうし、持ち運びも不便だ。ということで、ワゴンに入れられた小瓶から3本を選択して、クレジットカードで支払いをしておく。だって、現金はあんまり持っていないからね。

一通り買い物も済ませたので、電光掲示板で確認した通り、機の待つゲート16へ向かう。空港名物の長~い廊下を、なぜかわからないがパンダの置物に見送られて歩いていく。

パンダの置物に見送られて

そして、ようやく廊下の終わりが見えてくる頃に、香港まで乗せてくれるB777が見えてくる。暗くて見えにくいが、登録記号はB-KQFである。この機体は2013年5月に新造されて、そのままキャセイが受領した「生え抜き」の機体である。また、777型としては1101機目に製造されたものだ。この777型は今や1,500機以上が納入されており、ジャンボ機こと747型よりも多くの数が製造されている。もともと、古くなった747の買い替え需要に対応するために開発・製造されている飛行機なのだが、その数を上回るとは、いかに航空会社が好んでいるかということの表れだろう。

そんなことを考えつつ、周囲のゲートを見て回る。おや、隣のゲートには日本航空のB787-8が留め置かれている。電光掲示によれば、成田行きのJAL774便であるようだ。もちろん、案内の放送も日本語が先にあり、その後に英語が続く。当たり前だが、日本の航空会社なんだなと思ってしまう。

旅の終わりを実感しつつ、待合所の椅子に座って出発を待つ。しかし、この空港は椅子の数も少ないなぁ。ほとんど満席であり、立っている人も少なくない。空港が古いから、設備も小さ目なのだろうか?

9.オーストラリアを離れる

日にちが変わる頃に、搭乗開始となる。今回の座席はもちろん、主翼後方の指定席50Kである。また、座席は3-3-3の横並び9席であり、前後の席間も十分に確保されている。もちろん、自分の席に行くときにビジネスクラス席を通るのだが、料金が2倍ぐらいなので広さも2倍という感じだ。

指定席に着く

席に着いて機内誌や安全情報カード、モニターの状態を確認しつつ出発を待つ。因みに、香港は7,500km程度離れていて、時刻表の飛行時間は9時間弱となっている。実際は8時間ちょっとというところだろう。また、窓から外を見ると、ジェットスターやヴァージン・オーストラリアのロゴが描かれた垂直尾翼が数多く見える。「これでオーストラリアともお別れだな。次はいつ来られるかな」と思っていると、ドアが閉められてプッシュバックが始まる。時刻は1時10分なので、ほぼ定刻だと言えよう。

機はゆっくりと移動して、R/W34に向かうようだ。夜中ではあるが頻繁に離発着があるようで、先行する数機が飛び立った後、1時30分前に離陸滑走が開始となる。何回か記載していると思うが、777機はそれほど強烈な加速はしないで、知らないうちに速度が乗って離陸するという特性を持っている。それ故にちょっと「乗っている感」が少ないのだが、長さが80m近くあり、幅も65mと超巨大な金属の機械がこれだけの速度を出すのだから、これも当たり前のことだろう。

若干主翼がたわんでフワリと地面を離れると、グイグイと急角度で高度を上げていく。空港の灯りはどんどんと遠ざかり、すぐに真っ暗な地面しか見えなくなる。モニターに目を向けて、コックピットを模した画面に切り替える。高度も速度もまさにうなぎ上りで、あっという間に30,000ftに到達して水平飛行に移る。

すると、今度は食事の時間となる。何回も記載しているが、機内食は楽しみのうちの大きな1つである。キャセイの場合は事前にメニューが配られるので、選択肢を事前に把握しておくことができる。今回は牛肉か鶏肉から選べるようだ。どっちにするかと考えていると、前方から順番にCAさんが配膳してくる。「Beef or Chiken?」「And drink?」と聞こえてくるので、頭の中で「Beef please. Apple juice」と唱えて練習する??

今回も希望通りの食事を得られたので、喜んでいただく。残念ながら景色は見えないが、それでも上空10,000mで食べる飯は格別だ。「次はどこへ行こうかな、ポルトガルやセネガルは楽しかったな」と考えていると、歩き疲れたせいだろう。すぐに眠くなってくる。それもそのはずで、時刻は既に2時を回っている。香港到着までは7時間ちょっとなので、そろそろ寝るとしよう。耳栓とアイマスクをしてお休みなさい。

今夜の機内食

第9日目 最終日(11月21日)へ続く