管理人 海外へ行く
〜セネガル編〜
2017年 3月24日〜4月3日
航空科学博物館全景
3月24日（第1日目 その2）
１．航空科学博物館へ
風が強いのでさっさと館内に入り、入場料500円を支払って展示スペースへ進む。因みに、入場券には「NOB」という有名な飛行機イラストレーターの絵が印刷されており、マニア心をくすぐる。最初に現れるのは、ダグラスDC-8「ふじ」号の前脚である。これはむか〜し、名古屋（小牧）空港に展示されていたらしく、幼稚園時代の管理人は対面したことがあるかもしれないものだ。実に、40年振りの再会だ。 DC-8ふじ号の前脚 続いて、PW社製のJT9Dエンジンのカットモデルに見入る。このエンジンも初期のB747に独占的に供給されていたものであり、航空機の発展を語る上で欠くことのできない存在だ。そしてその内部であるが、内部はコンプレッサーとタービンが対になって同軸上に配置されていて、それぞれに小さい羽根が埋め込まれている、まさしく巨大精密機械だ。こうして実物を見ると、写真とは違いまさにリアルである。また、近くにある黎明期のジェットエンジンとの比較も面白い。 P/W JT9Dエンジン その横には、BSの飛行機用タイヤが置いてある。側面にある規格の刻印を見ると、29層構造となっている。乗用車用は4層程なので、要求される強度などは桁が違うようだ。それもそのはずで、B747は最大離陸重量が400トン弱、離陸時の速度は300��/hを超えるのだから当然だろう。 BS社製 航空機用タイヤ （手前の乗用車用タイヤとの比較が面白い） その次は、YS-11とDC-8の胴体断面比較だ。前者は戦後の日本で開発された旅客機だが、2-2の4列配列とは随分と細い印象を受ける。一方、DC-8も3-3の6列配列だから、現在ならば737型やA320と同じである。しかし、B747就航以前はこれでも大きな機体とされていたのだから、いかにジャンボがでかかったかということだ。そして驚くべきは、貨物室にN360が入っているというマニアな演出がされていることだ。こんなものの実物が見られる機会は他にないので、目を皿のようにし、カメラのシャッターを押し続ける。そんな当方を見た周りのお客は「なんだこのオタクは」と思っていたに違いない。 YS-11とB747の断面比較 さらに、また、右手には操縦体験用の、ジャンボ機ことB747の巨大模型が鎮座している。そして、この模型は実際にフライトデッキを模した装置を使って、操縦体験ができるということだ。これもまた、マニア心をくすぐるではないか。
こうして1階の展示物を舐めるように眺めた後、階段の途中にあるB747の操縦席を横目にる2階に上がる。ここにも興味深い展示がたくさんある。例えば、CAの制服とそれらを身にまとったリカちゃん人形であるとか、イスパノスイザ製V型レシプロエンジン、成田空港模型などだが、これらを見ては、一人で喜ぶ。相当のマニアだが、事実なので仕方がない。 イスパノスイザV12エンジン さらに、建物の最上階へ上がる。ここは展望室となっていて、昔使われていた古い管制装置の間から窓から下を見ると、屋外展示の日本航空機製造製YS-11、三菱MU-2、富士重工FA-200、300といった往年の国産機他が並んでいる。外は天気は良いが、風が出てきたようで木々が揺れている。 窓からの風景 一方、空港滑走路南端を見ると、アエロフトートロシア航空など、国際線の旅客機が次々と離陸していく。やはり、成田は日本で有数の国際空港であり、中部セントレアとは規模が違う。そう思いながら円形の建物を回って、B滑走路側へ行ってみる。すると、子供が10名程度いて、その小さな瞳の向こうには、成田へ最終進入してくる機が見える。 「何をしているか」とたずねてみると、博物館から配布された冊子を見せてくれる。そこには航空会社のマークとその名前と、到着予定時刻表が掲載されている。「こんなにたくさん見つけたんだよ〜」と、航空会社のマーキング一覧横にある、チェックボックスの印を自慢げにみせてくれた。さらに、目下待ちかねているのは、台湾の「タイガーエア」だそうだ。なるほど、離着陸する航空機の所属を確認して、それができたら記載してくというわけか。面白いじゃあないか。 それ故にこちらも「俺はねえ、今日ねえ、さっき全日本空輸のB767で名古屋から来たんだ」と自慢してみる。すると「えええ〜お兄さん飛行機に乗ってきたのぉ？？」と大興奮だ。さらに「夜には、エチオピア航空のB787でアディスアベバまで行って、そこで乗り換えてセネガルのダカールに行くのさ」と気取ってみた。すると、近くにいた保育士のお姉さんが反応して「えええ〜、そんな遠くまで行くんですか〜？？」と驚いている。保護者から反応が来るとは予想していなかったので、恥ずかしくなってしまう。 これで子供達ともすっかり打ち解けて「かほちゃん」という女の子は、すっかりと懐いてしまった。そうさ、俺は10歳以下の女性にはモテモテなんだけど、それ以上になるとサッパリなのさ。この間にもジェットスターやスプリングエアなど、続々と飛行機が飛んでくる。子供たちは、まだ小さな点にしか見えない機をみつけては「JALだ、ANAだ」と的確に尾翼のマークを見分けていく。おじさんは、機体を見つけることにも苦労しているので、歳の差を感じてしまう。 子供に遊んでもらった後、再びA滑走路側へ回ると、店があり食事ができるようだ。ちょうど腹も減ったので、ここで昼飯としよう。日本貨物航空のスポットが目の前に見える席に座り「機内食風定食 980円」を注文した。ここで少し落ち着いて、自分の状況を客観的に把握できるようになる。俺は今、成田のA滑走路南端に来ていて、今夜ダカールに向けて日本から飛び立つのだ。昨日はバイトの後帰宅し、やり残していたダカール市街の地図の印刷をして、慌ただしく自宅アパートを出て忙しく実家に向かった。また、家でも「明日が早いから」とさっさと寝てしまったし、今日は今日で、早朝から電車で移動して、またまた慌ただしくANAの国内線に乗って、落ち着く暇がなかったからね。おっと、機内食が運ばれてきたぞ。 機内食風定食 食事を終えてコーヒーをすすりつつ、真下を見る。すると、B747の頭が見えるではないか。これは中が見られないものだろうかと思い、会計を済ませて1階へ下りていく。すると、1階の受付裏では、B747セクション41（頭の部分）のツアーを500円で案内されている。これを逃す手はないので、14時25分の部に申し込んでおく。 これは・・・ その横に、航空偉人の言葉が掲げられているのが目に入る。とても印象的なものに「どんなことにも失敗はつきものだ」どいうリリエンタールのものが印象的だった。リリエンタールと言えば、ライト兄弟の動力飛行成功に大きく影響を与えた人物だが、その人でさえ失敗に苦しんでいたということか。そう考えると、自分のような凡人が人生で失敗続きなのは、ある意味当たり前だと言えよう。 ツアーまではまだ30分程度時間があるので、屋外の展示を見ることにする。おっと、入口に鎮座しているのは、かの有名な「ライト社製R-3350」エンジンだ。もちろん、ここで実物を見られるとは全く予想していなかった。何をそんなに喜んでいるのかって？それはね、このエンジンは有名なB-29爆撃機用に開発され、戦後はダグラスDC-7、ロッキードコンステレーションにも採用されたものだからだよ。形式は星形空冷18気筒で、排気量は55L、ターボ過給で戦闘出力は2,800PSというとてつもないエンジンだ。 ライトR3350エンジン いささか興奮気味に外へ出ると、冷たい風が吹いている。もう3月も終わりだというのに、桜の開花もまだまだ先になりそうだ。そう思いつつ首をすくめて、戦後の日本で初めて製造された旅客機、YS-11型機へ向かう。この機体は飛行試験に使われた試作機のようで、実験装置のようなものが搭載されている。また、コックピットはアクリル板越しではあるが、古めかしいパネルと重そうな操縦桿が見え、時の流れを感じさせる。そして車のようなハンドルが付いているが、これは地上走行時に使用するものだ。残念なのは、パネルの部品が所々抜け落ちていることだ。 日本航空機製造 YS-11 後方へ向かうと、お椀型の圧力隔壁が良く見えるようにしてある。「JAL123便ではこれが破裂したんだよ」と言わんばかりに目につくようにしてあるのだが、政治的圧力を感じるのは当方だけではあるまい。実際、この事故は原因があやふやにされている。つまり「圧力」にかけているのか。山田君、座布団全部持っていきなさい。 YSを降りて、再び風に吹かれつつ、セスナ421、ビーチクラフトバロン、同ボナンザ、ムーニーM20とマニアが好きそうな機体を見て回る。どれも、きれいに塗装されていて、飛行機が好きな人達がこの博物館を支えていることが伺い知れる。この中でも、リアジェット25Bは別格だろう。というのも、時々「エンジン始動体験」というイベントに使用されているからだ。そう、エンジンが実働状態なのだよ、ヤマトの諸君。 リアジェット 25B 富士重工FA-300、三菱MU-2を横目に博物館内へ戻る。そして、受付横に行くと「ボランティアガイド」と自称する、いかにも航空オタクですというおじさんが待っている。参加者はラスターをもらい、この人に導かれて747のセクション41へ入る。 中へ入ると、最初はファーストクラスを模した1階席が再現されてい。ここで747の概要を聞き、続いて手動着陸装置の展開方法、ドア開閉の仕組みを学ぶ。因みに、ドアには地上モードと飛行モードがあり、モードを変えないでドアを開くと「シューター」が自動展開する仕組みになっている。これは、ドアの下部にあるピンが味噌になっていて、客室乗務員等はしつこくモードの変更について言われるそうだ。 その後、螺旋階段を上り2階席へ向かう。ここには操縦席があるのだが、圧巻は航空機関士席のパネルだ。その中にある「油圧計」についてたずねると、待ってましたとばかりにガイドのおっさんが示してくれる。どうして油圧計に反応したかと言うと、それは日本航空のジャンボ機墜落事故に関係があるからだ。当然、ガイドの人もこのことを知っているわけである。マニア同士は、同じ思考回路を持っているってことだね。 マニアな話で盛り上がった後、お決まりの機長席で写真を撮ってもらう。さらに。パイロットの脱出口である屋根のハッチも開けてもらって十分に満足し、搭乗証明書までいただいて747のツアーは終了した。 747の操縦席にて （右に航空機関士パネル） 再び館内へ戻り、見忘れていた「ロールスロイス社製マーリンエンジン」を眺める。これは、先述のB-29に随伴してくる戦闘機、P51マスタングに搭載されていたエンジンだ。水冷V型12気筒で、吸気2排気2のOHC。排気量は27Lで、スーパーチャージャー過給で戦闘出力は1160PSだ。これもR-3350同様に航空マニアにはあまりにも有名なエンジンであり、もちろん実物は初めてだ。尚、P51はもともと違うエンジンを搭載していて、その時はヘボ戦闘機だったのだが、このエンジンのおかげで名戦闘機に変身したと言われている。 再び外へ出ると、昼ごろに遊んでもらった保育園児たちが帰宅するようだ。バスの中から手を振っているので、こちらも手を挙げて応える。きょうはありがとうね。 次に、博物館から少し離れた場所にある、「成田空港 空と大地の歴史館」へ行く。ここは、成田空港建設の閣議決定から、現在に至るまでの歴史を展示した建物だ。簡単に言うと、成田闘争に関する歴史に関わるものの展示館というわけだ。 空と大地の歴史館 中に入ると職員が出てきて、スリッパとリーフレットを渡されて、歓迎される。そして展示を見て回るが、ここでは実際に使用されたと思われる、建設反対の看板、ドラム缶で作った威嚇音発生装置？などが所狭しと並んでいる。また、流れている映像でも、闘争の激しさを知ることができる。 闘争の様子 当方はよく知らないが、元々の住民達は「いきなり空港をつくるぞ」と根回しも無く国から言われたようだ。また、もともとこの辺りの農家は、荒地から開墾した土地で農業を営んでいて、それを何の前触れもなく「空港を造るからよこせ」とは、ちょっと乱暴というものだ。やり方というものがあっただろうに。これではうまくいくものもこじれてしまうだろう。それが証拠に、未だに未収用の土地があり、B滑走路34Rの手前の東峰地区はあまりにも有名だ。 そういう犠牲の上にある成田空港は成り立っており、その空港を喜んで利用して旅行に行くのだから、感謝というか、こういうことも知っておかねばならないだろう。 第1日目（3月24日 その3）へ続く 
２．屋外展示
３．747の頭へ
４．まだまだ続くよ
