サマータイムの終わり
(1時間のズレが生じている)
今朝は6時に起床する。ところで、2020年の東京オリンピック開催に際して話題になった「サマータイム」だが、これは日本語だ。英語では「Daytime saving time」と言うのだが、ヨーロッパでは「4月最初の日曜日~10月の最終日曜日」に時刻を1時間早め、日の出ている時間帯を有効に活用しようというものだ。
その「10月の最終日曜日」が今日に当たるので、どうなるのかと期待していた。早速、携帯電話の表示と、時計のみの機能しか持たない安物の腕時計の表示を比べてみる。おお、確かに1時間ズレている。腕時計は6時20分を指しているが、携帯の表示は5時20分になっている。1時間得しちゃった気持ちだ。因みに、日本はこれを採用していないので、時差が7時間から8時間になっただけだ。ということで、訂正。今朝は「5時」に起床したということになる。まだ起きるには早いので、もう少しゆっくり寝ることにして、1時間後に起床する(やはり6時起床ということだ)。
窓の外見ると、どんよりと曇っている。雨が降るなあとちょっと落ち込むが、こればかりは仕方ない。テレビを観て、天気を確認すると、やはり今日は雨のようだ。ちょっと時間をつぶした後、7時に朝飯を食べに下りていく。あら、ホテル内の時計はすべて1時間進んでいる。これでは、自分の時計が正しいのか、ホテルの時計が正しいのか、訳がわからなくなる。
部屋の窓から南側を見る
(右端はイスラム寺院のミナレット)
受付の女性に挨拶をするが、どうも素っ気ない、いや無愛想と言っても良いだろう。お高くとまっているというか、なんだろうか、恐怖心さえ覚えてしまう。食事はいつものメニューだが、実に美味しい。何回も言うが、パンと野菜については、日本のものは格段に落ちる。そんなことを思いながら腹いっぱい食べて、コーヒーでしめる。
時刻はまだ7時30分で、ゆっくりしてから出発してもよいが「モスタル」行きのバスが8時15分に出るので、これに乗ることにしてホテルを出る。
いつものように坂を下りて、泉前の停留所からトラムに乗車する。今日は日曜日なので、乗客もまばらである。切符は回数券があるので、問題無し。もっとも、この時間帯なら検札は無い者と思われる。昨日散策した、市場周辺を通り、スパイパー通りに出る。ここの「ホテル・ホリデイ・イン」前で降りて、駅までは500m位小走りで行く。1系統の電車ならば鉄道駅まで行くのだが、この路線は本数が少ない。まあ、このくらいは歩いてもよいだろう。
8時の鐘の音と共に駅前広場に滑り込み、中央郵便局前を足早に過ぎると、バスターミナルに到着だ。脇目もふらずに、切符売り場へ行く。そして「モスタルまで、大人1枚、往復で」と言うと「片道しかないよ。モスタルの売り場で、帰りの切符は買ってね」と。やっぱり、往復切符は存在しないようだ。「じゃあ、片道で」と言うと「17マルク(1,050円)」と言われる。あれ、21マルクじゃないのかと思うが、言われたように支払って終わりだ。
海外では、レシートがそのまま切符になることがまあまあある。今回もその典型であり、下手すると捨ててしまいそうになるが、大事に取っておく必要がある。さて、乗り場を探すが、たくさんあってよくわからない。一応「Peron:12」と切符には書いてあるので、その辺りへ行き「モスタル行きは・・・」と運転手に聞いてみる。すると「切符を見せてみろ」と言われるので、出してみる。「12だよ」と隣のバスを指して教えてくれる。「どうもありがとう」
「Peron:12」のバスで、運転手に切符を見せて乗車する。今回乗るバスは「VOLVO」製であり、なかなかカッコいい。もちろん、日本では見たことのないモデルだ。全面のガラスがやけにでかくて、とても視界が良さそうだ。適当な場所に席をとり、座ってみる。そんなに古くはないのだろうが、あまり掃除をしていないようで少々汚い。また、周りの乗客を見ると、ユダヤ系の顔つきをした人々が多く乗車している。
バス乗り場の様子
モスタル行きののバス
車内の様子
バスは定刻を少し過ぎて、ターミナルを出発する。まあ、数分のことなので、誤差の範囲内だろう。ダカールでの「6時間30分遅れ」を経験すると、数分なんて何にも気にならない。むしろ、日本人が神経質過ぎて、時に自分の首を絞めているのではと思うくらいだ。だって、新幹線で「異臭」がするにも関わらず「定時運行」という強迫に駆られて、あわや事故になる直前まで、走行していたのだから、何のための定時運行かわからなくなる。所詮、人間のやることだから、このくらいで良いのだ。
それはそうと「恒例行事とはどういうことか」と疑問を持たれたと思うが、管理人は海外に滞在中は基本的に同じ街にいる。しかし、1日はそこから少々離れた街へ日帰りで出かけるようにしているのだ。この遠征を「恒例行事」と呼んでいるのだよ、ヤマトの諸君。
バスはサラエボの街を抜けて、田舎のワインディング路へ入ってくる。朝が早かったのでウトウトしてしまうが、1時間ほど過ぎた頃にふと目が覚める。外の景色を見ると、雨が激しく降っている。また、景色が、日本の山村のような風景なので、驚いてしまう。「長野の山奥だよ」と言われたら「ああそう」と流してしまいそうなほど、よく似た雰囲気だ。しかし、建物をよく見ると、やはりモスクがあり、ここはボスニアなんだと思われてくる。
長野の山間の街と言われても・・・
わかるね
1時間が過ぎた頃に、小さな「ミマ」の街で停車する。どうやら、休憩のようだ。運転手はもちろん、女性の乗客が商店の方へ走って行く。そして、パンを買って戻って来たかと思うと、タバコを吹かし始める。こちらの女性は、喫煙率が高いのだ。
20分ぐらいして、再び街を出発する。すると、右手にはダム湖が見えてくる。本当に、日本みたいだ。おや、渋滞しているな。何だろうか。30分ぐらいノロノロ運転の後、トレーラーが道を外れて民家に突っ込んでいる所が見える。事故だったようだ。幸いにも建物には被害はなく、車も壊れていない。ちょうど、引き上げの途中だったようだ。
雨がさらに激しくなっているので、運転手もハンドルをとられたのだろうか。バスは大丈夫だろうな、ちょっと心配になるが、俺が運転するわけにもいかないね。免許はあるけど、乗ったことないし・・・。
3.モスタルに到着
2時間30分ぐらいで到着予定だったが、結局3時間程かかって11時頃にモスタルの鉄道駅に到着する。なんだ、意外とでかいターミナルじゃあないか。さて、ここでまずすべきことは「帰りの切符」を買うことだ。早速建物の中にある、売り場へ向かう。すると、中東辺りから来たと思われる旅行者が、なにやら窓口の職員とモメている。これは長引きそうだと思い、ひとまずトイレへ向かう。
入口にオバサンが立っているので、ここでは1マルクを支払う。これは、ヨーロッパでは仕方のない出費なので納得だ。いや、どうせならば、喫茶店に入ってお茶を飲みがてらトイレを借りる方が良かったね。用を足しつつ、そんなことを思う。と、その時、もう一人、アラブ系の貧乏旅行者らしき人が入ってきて、顔から頭から、冷たい水で洗い、さらに水道水をガブガブと飲んでいる。おいおい、腹を壊すなよと心配になるが、この国の水は意外と綺麗なので、問題ないのかもしれない。いや、俺は水道水は飲まないよ。
再び切符売り場へ戻ると、混乱は収束している。「サラエボまで大人1枚」と言うと「何時のバスにする?」と。「何時があるのかな」と返すと「12時、15時、18時、20時」とまくし立ててくる。「12時と15時と、何時??」と聞き返す。すると「何だよ」と言う顔をして、親切に紙に書いてくれる。こっちの人は、やはりセッカチなんだな。
「じゃあ、18時で」と言うと「21マルク」と。え、ああ、帰りは21マルクなんだ。それにしても、ヨーロッパの長距離バスは料金が安い。21マルク=1,300円ぐらいなのだ。2時間も乗っていて、この料金はまさに、破格であろう。
これで帰りの足を確保したので、安心して観光に出かけられる。ただ、この雨がとても残念だが、霧に煙る古都を散策するのも悪くなかろうと、気を取り直す。
モスタルの駅前ターミナル
モスタルの街へ出るが、ひとまず作戦を練りたいのでカリンスキ通りで「ネレトヴァ川」を渡り、適当な喫茶店を探す。すると、賭博場みたいなものがあり(多分場外馬券売り場的なものだろう)、あまりガラの良くない人たちがタムロしている。そのちょっと向こうに、カフェを発見した。これ幸いと中に入るが、客が一人いるだけで、店員がいない。「すいませーん」と声をかけるも誰も出てこない。
仕方ないので、ガイドブックの地図を確認して、案内所の「I」の文字がある場所へ向かう。「アレクセ・サンティカ」通りと思われる道を歩いていくが、これは完全な裏通りであり、ちょっとマズイかな?という雰囲気がある。しかし、この時、丁度警察の車両がゆっくりと当方を追い越していく。これは運が良い、ということでこの後をついていく。
アレクセ・サンティカ通り
ちょうどパトカー(左端)が通って行く
海外では、警察が犯罪組織とグルになっていることはよくあるのだろうが、この場合はどうなのか。そこまで考える余裕はなかったので、安心して?通りを進んでいく。途中で骨組みだけになった、焼けただれた建物の前を通る。ここでも内戦による戦闘があったようで、街は壊滅的な被害を受けたようだ。
ここでもかぁ・・・
日曜日の今日も開いている郵便局前を通過し「レイド・ビタンジ」通りにぶつかるので、ここを左折すると案内所に到着する。
ホテル兼・案内所
ここは宿泊施設である「Hotel Almila」なのだが、案内所も兼ねているようだ。早速中に入ると、受付に若い女性がいる。挨拶をしてから「6時間ぐらいの時間で、見て回るおすすめを教えてください」とたずねる。すると「そうねぇ」と地図を出して「まずはこの橋ですよ。これはモスタルの象徴的なものですね。この橋を渡った細い通りは土産物屋が軒を連ねていて、金物なんかが売られているわよ。そして、その先にはイスラム寺院があって、尖塔に上ると良い景色が見られるわね。そして、その先にはトルコの家があるわ。まあ、こんなところね」と大まかなスポットを教えてくれる。なるほど、ありがとう。礼を述べて、地図をもらって、早速散策開始である。
第5日目 その2へ続く