管理人 海外へ行く
~ボスニア・ヘルツェゴビナ編~
2018年10月23日 ~ 2018年10月31日


巨大バスとA320機
(ウィーン国際空港にて)

10月30日(火)
第7日目 その2

1.セーフ

やれやれ、何とか間に合ったよ。搭乗時刻までは少しあるので、周囲にある店を見て回る。もっとも、バックや化粧品関連ばかりであり、見るべきものはほとんどなかったと追記しておこう。

さて、次に乗る飛行機の機種はなんだろうか。オーストリア航空の場合、保有機は長距離を飛ぶ大型のものはボーイング、中・短距離はエアバス、エンブラエル、ボンバルディアを導入しているようだ。気持ちとしてはエンブラかボンバルに乗りたいが、事前情報ではエアバスA320系ということだ。

搭乗時刻となり、ゲートを通る。このF10ゲートにはタラップも飛行機もないので、例の巨大バスに乗って沖止めのものに乗るようだ。

ここで余談を。今まで利用した海外の空港で、このバスを見なかったことは一度もない。「COBUS」とでかでかと書かれているこのバスだが、調べてみると1978年に発足したドイツの「COBUS」社が製造しているようで、2700系と3000の2種類が用意されている。よくみかける3000系は幅2.4 m、長さ13.8 mと日本規格のバス(幅2.2 m、長さ12 m)よりも一回り大きい。エンジンはメルセデス製のディーゼルエンジン、ミッションはアリソン製ということだ。近年日本の路線バスもAT化が進んでいるのだが、このアリソン製のミッションを搭載している場合がかなりあるようだ。

さらに話がそれるが、このアリソン社は先に紹介したハーキュリーズ、別名C-130 輸送機のエンジンを生産した会社であり、バスのATを生産している会社とは親戚であるそうだ。しかし、現在、航空エンジンの方ははロールズ・ロイスエアロエンジン社に買収されているようだ。

閑話休題。ということで、この「COBUS 3000」に乗って、飛行機まで移動する。因みに、このバスには座席が少しだけあるだけで、ほとんどの人が立ち席だ。管理人は1回だけ座ったことがあるだけだ。

このウィーン国際空港はそれ程巨大ではなく、必要にして十分な規模と言えよう。成田やイスタンブールのように過密な運行スケジュールが組まれてはいないようで、バスも広々とした場所を走行しているので安心だ。

こうして、搭乗予定のA320 CEOの近くに到着する。この機体の登録記号は「OE-LBQ」であり、A320としては1137番目に製造されたもので、1999年にオーストリア航空に納入されたようだ。そして、注目すべきは2005年に一度「ラウダ航空」に転籍(リースかな?)されていることだ。この旅行記を読んでいる方々はご存知と思うが、この航空会社はかの有名な、元F1ドライバーの「ニキ・ラウダ」が興した航空会社だ。また、彼自身もB737の操縦資格などを、ドライバー業の傍らで取得したすごい人である。さらに、残念ながら、この前の5月20日に70歳で亡くなってしまったということだ。


OE-LBQ機に搭乗

朝の陽光を浴び澄み切った青空に映える、赤と白に塗装された機体はまさに美しいと言えよう。機内に入り、指定した座席20Fに陣取る。尚、この機体の座席は3-3の6列並びで、個人モニターは無い。ウィーンまで乗ってきた機体と同仕様である。まあ、フランクフルトまでは1時間程度なので、機窓から景色を眺めつつコーヒーを飲んでいればすぐに到着するだろう。

いつもの指定席からウィーン国際空港を見ていると、ドアが閉められて安全設備の説明が始まる。また、この機にも個別のモニターが装備されていないので、録音された音声に合わせて、鮮やかな赤い制服がまぶしいCAさんにより実演される。この中で、非常口の場所の説明の際、CAさんは腕を前に伸ばしたり、横に広げたりする。それは「通路はここで、非常口はここ」と示しているのか、といまさらながらに気がついた。ターキッシュなどで流れる映像でも同じ動作をしているが、そんなこととは思わなかったのだ。


ドア・クローズ直後の機内の様子

デモの途中からエンジンが左のエンジン、右のエンジンの順で始動し、滑走路端までの移動が始まる。今回は牽引車によるプッシュバックは無しなのだが、それだけ駐機場が広いということだ。

自力で向きを変えて滑走路端まで移動し、10時20分頃にR/W16から離陸して、右旋回で高度を上げていく。この時、空港の外観がよく見えるので、自機は磁方位270°ぐらいで飛んでいることが認識できる。フランクフルトはウィーンの西にある、ドイツの都市だから、正しい機に搭乗していると確認できる。当たり前だ。


離陸直後の機窓から
(右側奥に空港が見える)

機は順調に高度を上げていき、本日2回目の軽食サービスが始まる。飛行機の何が楽しいって、いろいろあるけど、この時間はその一つである。上空35,000 ftでコーヒーを飲んでくつろぐなんて、非日常の極みである。また、CAさんがにこやかにサービスしてくれるので、とても癒される。これも超非日常と言えよう。

因みに、今回の軽食は「Apple or chocolat ?」と聞かれたので「Apple」を選択する。そして出てきたのは・・・。りんご丸ごとだ。ええ?りんごのお菓子かチョコレートのお菓子かと思っていたが、リンゴそのものですか。機内食で素材そのものが出てきたのは初めてなので、ちょっと驚き。因みに、もう一つの方はチョコレートのお菓子でした。


リンゴがそのまま

リンゴをかじりつつ機窓を眺めていると、天気が急速に悪くなって、景色が見えなくなってくる。あらあら、残念だが、仕方ないね。そう思っていると、機は高度を下げ始める。アナウンスによれば「フランクフルトは雨で気温が2℃」ということだ。まあ、外に出ることはないので問題ないが、ヨーロッパはすっかりと冬なんだね。ああそうだ「フランクフルト」と言えば、ハイジが拉致されて行った、クララが住んでいるあの街だ。また、憎らしい執事のロッテンマイヤーってのもいたなぁ。ああ、あのフランクフルトかぁ。

2.フランクフルト到着

そんなことを考えていると、機は高度を下げ始めていき、フランクフルト国際空港のR/W 25Lに着陸する。それはそうと、なんじゃこりゃ、ここはメチャクチャでかい空港だ。滑走路は4本あるし、ターミナルもVの字状になっていて、しかも複数階からタラップが出ている。成田も結構でかなと思っているが、比ではないぞ。

予定よりも随分と早く到着したなぁ。そう思いながら最後の客として降機し、通路を歩き始める。それにしてもこの空港はでかい空港であり、看板にはゲートがいくつも表示されている。それに従って、この旅最後のレグとなるLH736便に割り当てられた、電光掲示板に示されている「Z」のゲートへ急ぐ。

だいたい20分ぐらい歩いたら、次にエレベーターに乗る。すると、パスポートコントロールのブースが現れる。ここでEU圏を離脱するので、またまたスタンプをもらう。今回はボスニアとEU圏、日本でそれぞれ、入国と出国のスタンプをもらえた。

免税店などが並ぶエリアを、そして長ーい廊下をさらに歩くこと20分、ようやくZのゲートが並ぶエリアにやって来る。ええと、52って結構向こうじゃあないか。やれやれ、結局40分以上歩いて、ようやく目的のゲートに到着だ。

時刻は12時20分なので、搭乗までにはちょっと時間がある。そこでゲートの周辺を見て回る。ちなみに、さっきウイーンからの飛行機が着いたスポットが、向かいの遠くの方に見える。あんなところから歩いてきたのかと思うと、やはり空港の規模のデカさには驚く。時々、6人乗りぐらいの電動カートが走っていたが、年寄りとか足の悪い人だったら乗り物に乗らないとたどり着けないだろう。いや、この距離だったらシャトルバスを出しても十分に需要があると思うが。


長い廊下を40分以上歩く

件の52番スポット付近にはB747-8が駐機されていて、その存在感を示している。また、当方が乗る予定のA340-300も4発機であり、初めて乗るエンジン4個の飛行機に期待が高まる。また、反対側のスポットにはユナイテッドのB777-300ERが見えるが、大きさ的にはA340と遜色ないように思える。つまり、双発でも同じ規模の機体を飛ばすことができるということであり、B777がDC-10やMD-11、A340といった多発機を駆逐していった理由がよくわかる。そういう意味では、今回4発機に乗ることができるのは大変貴重な機会というわけだ。


中部空港まで乗っていくA340機

一方、このエリアには飲食店が多く並んでいて、ひときわ目立つのはビールの店だ。皆特大の大ジョッキでビールを飲み、ソーセージなんかをつまんで楽しそう過ごしている。もちろん、当方は酒など飲めないので、見て楽しむのみだ。

搭乗開始時刻が近くなってくるので、ゲート付近の椅子に座って待つことにする。周囲は日本人がたくさんいて、名古屋弁も聞こえてくる。そりゃそうさ、中部国際空港行きなんだから、当然である。航空会社の職員にも日本人がいるので、言葉で困ることはなさそうだ。これは当方にとってもありがたいのだが、せっかく日本を出てきているので、ちょっと困って、何とか意思を伝えるぐらいの方が、旅としては面白いんだけどね。

3.ヨーロッパともお別れ

さて、12時40分頃から優先搭乗が開始となり、13時前になって一般客の搭乗となる。今回も事前に座席を指定しているので、焦ることはない。もちろん、指定席の右側翼の付け根付近35Kの席としている。仮に、セントレアの滑走路が36の場合、着陸時には知多半島や空港ターミナルが見える位置となっている。尚、今回乗っている機体は前述の通り、エアバスA340-300型であり、登録記号はD-AIFDである。この機体は2001年3月にルフトハンザに納入されており、同型機としては390機目に製造されたものだ(A340とA330は同じ製造ラインで組み立てられているので、この生産番号はA330とごちゃまぜである)。

さらに、A340型には前期型と後期型があって、-500、-600型がそれにあたる。前者は16,000㎞もの航続距離があり、シンガポール~ニューヨーク線などに使用されたのは有名な話である。また、後者は全長が75m以上もあり、B747-8の登場までは最長の胴体を誇っていた。しかし、前述の通り、B777を始めとする双発機の洋上飛行制限の緩和、身内からもA350という双発の高性能機の誕生等により、2011年に生産終了となった。また、総生産機数は377機であり、B777やA330が1,000機を越えて現在も生産中であることを考えると、あまり多いとは言えなさそうだ。

話が逸れたが、その初めての4発機に乗り込み席に着く。もちろん、乗った感じとエンジンの数は全く関係が無い。ただ、翼にエンジンが2個見えるのは、双発機とは異なる。また、座席は横並び3-3-3である。


機内の様子

いつものように、安全装置の説明カードに目を通し、非常口の位置を確認する。この時、カードを写しておくののだが、先に記載した従兄がこれを気に入っており、自身が飛行機に乗る時も撮影するようになったそうだ。それはそうと、今回の機は新しい目のモニターが装備されていて、見やすい。また、座席幅や前後の間隔も標準以上で快適な旅ができそうだ。


搭乗した記録として、安全のしおりを撮影

さて、今回搭乗しているLH736便であるが、中部空港行きである。だいたい、海外に出る時は大抵成田などを経由することになり、それは帰国時も同様だ。つまり、成田で日本に入国して、一晩泊まってから翌日の名古屋便に乗る事が多い。しかし、今回は成田から出国して名古屋で入国するという理想的な旅程が実現した。まあ、たまたまそういう航空券が手に入ったということなんだけどね。

これでヨーロッパともお別れかと思うと名残惜しいが、いつまでも遊んでいられるわけでもない。日本に帰ればバイトの日々が待っているのだが、まだ旅の途中なのでそんなことは考える必要はなかろう。

そう思っていると、13時10分過ぎにほぼ定刻でドアが閉まる。さすがはドイツのフラッグキャリアである、ルフトハンザだ。この辺りの信頼性は、日本航空や全日本空輸、スカイマークなどと遜色ない。何回も言っているが、JALしか乗らないとか言っている人が多くいるが、別にその国のフラッグキャリアならば、どの会社でも構わないと思うんだ。

安全装備説明の映像が始まるが、こちらもドイツっぽいお堅い感じのアニメーションである。おや、日本語も流れるのか。そんなに日本人に迎合しなくても良いと思うのは、当方だけだろうか。

そうこうしていると、いよいよエンジンが左から順に回りだす。4発だと騒音が大きいのかと思っていたが、特段双発機との差はないと思われる。因みに、この機体はスネクマ社のCFM-56系のエンジンを装備している。これはB737にも採用されているエンジンだから、それ程うるさくもないのだろう。因みに、最新のB747-8はB787にも採用されているGenx系のエンジンを装備しているので、在来型のB747と比べると4割程騒音が減っているということだ。そう考えると、4発が双発よりもうるさいとは、必ずしも言えないレベルまで進化しているようだ。

安全デモを観つつ、少し気になっていたエンジンの音にも納得して、機は滑走路へ向けて移動していく。窓からは多くの駐機している飛行機が見えて、フランクフルト空港の巨大さを実感する。やっぱり、アジアのハブ空港になろうと思ったら、成田はこの規模がないとダメでしょうなあ。そう考えると、ソウルの仁川空港は同規模だと言えるので、そちらがアジアのハブになっているのは、大いに理解できるところだ。

移動中に雨が強くなってきていて、窓に水滴が多くついている。残念だが、これは仕方ない。まあ、離陸滑走が始まればすぐに飛んでいくだろう。


雨がひどくなってくる

今回はR/W25Cからの離陸であり、正対した後エンジンの回転数が上がる。4発なのでさぞかし豪快な加速をすることだろうと考えていたのだが、何のことはない。ヨロヨロと加速してヒョロヒョロと離陸したというイメージだ。とある説明によると、A340は推力に余裕があるので、騒音を抑えるためにフルパワーを使わないことが多いらしい(7、8割の力しか出さないそうだ)。それ故に、こういう離陸になるということなのだ。

さようなら、フランクフルト、さようならヨーロッパ。機は右旋回して機首を東に向け、ぐんぐんと高度を上げていく。ただ、前述のようにあまり力強くはない。あくまでもヨロヨロという感じだ。


さようなら、フランクフルト

高度を上げていくと雲を抜けて、青空が広がる。このLH736便は時刻表上は11時間25分の飛行時間が予定されていて、中部空港には朝の8時45分に到着予定だ。それまでは40,000フィートの上空で、非日常を楽しむことができる。

40分程でベルリンの上空を通過する。ここが東西冷戦の最前線であり、あの壁があった所か。ポルトガルで壁の一部を見たが、あの壁がここにあったのか。前述のように、4発機は意外と機内は静かである。もちろん、理論的に双発と4発は大きな差はないようなので、それをそのまま実体験しているというわけだ。

ここでおやつが配られる。あら「つまらないものですが」みたいなことが書かれている。ドイツ人と日本人はこういう共通点があるのか、はたまた「ルフトハンザ」社が日本線には気を遣っているのか。こんな所に気がつくのはマニアであるし、英語をそこそこ勉強し続けていてよかったなと思う。


控えめに「little things」と書かれている

おやつを食べて機窓からの景色を楽しんでいると、あっという間に夕暮れがやってくる。西向きに飛ぶときはいつまでも昼だが、東向きだとあっという間に時間が過ぎていく。いつものことだが、地球の自転と飛行機の速度を感じる瞬間だ。ドイツ時間では15時30分だが、モニターを確認すると昼と夜の境界付近を飛行していることがわかる。

おやつを食べ終わってしばらくすると、メニューが配られるので内容を確認する。日本線の機内食は日本人シェフが監修しているようで、うどんもついてくる。そういえば、キャセイパシフィック航空でオーストラリアに行った時は、そばがあったっけ。メインは鶏肉のクリーム煮かビーフカレーから選択できる。んー、カレーも良いが、ここは鶏肉を選択しよう。


続いて夕飯
今回は鶏肉を選択

あと、おやつやおにぎりもあるってさ。そいつは食べない手はないので、夜中に腹が減ったらもらいに行くとしよう。そう思いながら上空の食事を楽しむ。何回も記載しているが、食事は飛行機の旅の醍醐味だ。いや、どんな乗り物に乗っていても、食事は大きな楽しみだ。

「オノミモノハイカガデスカ?」って、男性CAさんがたずねてくる。この便は日本線でも名古屋というマイナーな行先なのだが、ビジネス客が多く利用するのだろうか、かなり力を入れているのか。いずれにしても、日本人が乗っても困ることはないだろう。

飯を楽しみつつ、この休暇が終わりに近づいていることを思い出す。そうか、また仕事をしなくてはいけないのか。面倒だなぁ、しかし、それがまた次の旅に繋がるのだから、それを嫌がっていては何も始まらない。
ああ、眠くなってきたな。機内も照明が落とされるので、アイマスクをして、そろそろ寝るとしよう。

最終日へ続く

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